[2月第2週] Weekly DAO Report Vol.55| dYdXが掲げる「トレーダーの未来を築くビルダー達」 と集結に必要な「反直感力」
先週、dYdX FoundationがdYdXのトレジャリーから3000万ドル相当のDYDXトークンを受け取った。前回のブログでお伝えした通り、dYdX Foundationは向こう3年間の予算として3000万ドルを提案し、コミュニティの圧倒的多数の賛成で支持されていた。本稿では、DAO参加者が分散化を進める上で反直感的なことが良しとされることもあることについて解説する。
分散化と直感的に良くないこと
dYdX Foundationのチャールズ・ドーシーは、「トレーダーのためのビルダー」を目指そうという掛け声の下、以下の全ての人々に対してdYdXチェーンへの参加を呼びかけた。
全てのステークホルダーがトレーダーのためのエコシステム作りに参加して、民主的なプロセスを経て意思決定をしていく。理想的で分散型の鏡のような姿勢に写るかもしれない。それは間違っていないが、現実的には、分散化を進めることで効率性を失うという問題がある。分散化は進めるが、各分野におけるリーダーは必要だという理由で、dYdXエコシステムには、以下の4つのエンティティが存在する(今後増減する可能性はあり)。
dYdX Trading(開発企業)
dYdX Foundation(ガバナンスサポート)
dYdX Operations SubDAO (フロントエンド運営)
dYdX Grant SubDAO(グラントの差配)
dYdX分散化の肝は、チャールズが上げたようなプレイヤーの一人一人が、4つの「中心的な」エンティティによる努力の結果ではなく、多くの人々による組織化されていない動きの結果としてトークン価値が決まると合理的に期待できることだ (Howey testの4番目の条件を満たさないことが必要)。
dYdXは1日に10億ドルの取引量を上げる一大事業だ。大きな事業には多くの人が関わるものであり、個人商店の話ではないことを認識すべきだ。昨年10月のローンチ前まで、dYdX Trading社が実質的に取引所を管理し手数料を受け取っていた。今は、上記に挙げた4つのエンティティ(今後さらに増える可能性がある)が、どれも代表的なエンティティになることなく、権限を分散して持っている。
ここから、分散化を進めるにあたって何が必要になるのだろうか?誤解を恐れずに言えば、良い意味で4つのエンティティが密に連携しないことだ。同じエコシステム内でdYdXの成功という同じ目的を共有しているのに、密に連携しないとはどういうことか?その意見は直感的には正しい。しかし、元dYdX Trading社のCLOであるMark Boironによると、その直感は分散化の精神からはNOだ。
4つのエンティティは、基本的には、情報を積極的に公開することが推奨される。4つのエンティティに属さないプレイヤーが知らない情報は極力減らすべきだ。しかし、エンティティの中には秘密の情報を扱い、公開できない時もあるかもしれない。その時は、最低限、エンティティ間で情報を共有しないことだ。あるエンティティは、他のエンティティが持つ情報を持っていないことによって、プレイヤーの利益を損なうような行動をすることを牽制される。これが、4つのエンティティが独立して存在するべきであり、良い意味で「密に連携しない」理由だ。
分散化の世界は、半直感的なことが是とされることが多い。例えばTrustlessもそうだろう。分散化の世界で生きたい人々は、今の世の中の常識を疑うことから始めても良いかもしれない。
著者:大木 悠 (Hisashi Oki)Head of Asia, dYdX Foundation
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2018年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月よりdYdX FoundationのJapan Lead。2024年1月より現職。
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