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[2月第3週] Weekly DAO Report Vol.57| Uniswapの手数料スイッチ提案 DEXの新たなナラティブに

Uniswap Foundationが、Uniswapのプロトコルをアップグレードして、UNIトークン保有者に手数料を分配する提案をした。今後のDeFiとDEXの新たなナラティブとして、手数料へのユーザー上の分配が意識されるようになるかもしれない。

提案の背景にあるのは、Uniswapのガバナンスにおけるデリゲーション活動の低迷だ。デリゲーションとは、トークン保有者がガバナンス活動を代わりに行ってくれるデリゲートに自分のトークン(=投票権)を委任することだ。現在Uniswapのトレジャリー額は45億ドルで全体の3位。トレジャリーの使い道や手数料のレートの決定など、ガバナンスの役割は重要だ。

Uniswap Foundationは、持続的なガバナンスの実施のためにデリゲートは重要だが、現在、投票率はUNIの総供給量の10%未満。2024年2月1日現在、トップ30のデリゲートのうち14のデリゲートが、最近の10の提案に投票せず、これまでに提案をしたことがあるデリゲートは7に留まった。

今回、手数料配布の対象になる人は、UNIのデリゲートとステーキングをした人。Uniswap Foundationが資金を出して作った2つのスマートコントラクト(V3FactoryOwner.sol 62 とUniStaker.sol 72)を使って手数料の徴収と分配が行われる。

今後、オフチェーンの投票であるスナップショットが3月1日、オンチェーン投票が3月8日に行われる予定だ。

手数料のユーザーへの分配が新たなナラティブに

実は、手数料のユーザーに分配についてはdYdXが先んじている。2023年10月にdYdXチェーンがローンチして以降、DYDXトークンのバリデーターとステーカーには、dYdX取引所に支払われる100%の手数料が還元されてきた。2024年2月24日時点で、700万USDC以上が1万4000人以上のステーカーに対して分配された

UNI価格の上昇につられる形で、DYDX価格も上昇。手数料分配関連の銘柄という意識がされたのかもしれない。

次は、ユーザーに還元される手数料の割合をめぐって競争が起きるかもしれない。新たなスマートコントラクトによると、UNIの保有者には1/10 - 1/4の手数料が分配されることになっている。

加えて、昨年Uniswap LabsがUniswapの一部取引でインターフェース使用料を徴収を決定した。Uniswap Labsは、Uniswap Foundationとは異なり、開発会社であり独自でフロントエンドを持っている(多くの人が「メイン」のフロントエンドと認識していると思われる)。

プロトコルレベルとフロントレベルで二重で手数料を取ることは持続的なのだろうか?今後、DEXのスペースで行われると思われる激しい競争に勝てるのだろうか?dYdX創業者のアントニオ・ジュリアーノは疑問を呈しており、早くも火花を散らしている。

著者:大木 悠 (Hisashi Oki)Asia BD Lead, dYdX Foundation
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2018年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月よりdYdX FoundationのJapan Lead。2024年1月より現職。

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