長所短所

更新:2022年4月
(申し訳ございません、ニコチンの熱分解について引用元から誤った解釈で引用していました。「脱線ゾーン」の所で正しく引用し、訂正いたします)

この記事では喫味や使い勝手における DynaVap の長所短所をまとめてみました。

※ここでは一般的なバッテリー式ヴェポライザーと比較しての DynaVap の長所短所になるかと思います。ですので、DynaVap vs 従来の喫煙方法(紙巻き、iQOS/glo等)という対比ではないこと予めご了承ください。

以下、このように分類しています。
○ = 長所
X = 短所
? = 長所でもあり短所でもある

喫味や吸い心地における長所短所

◯ 少量を濃厚に吸える

DynaVap は少量の煙草葉で濃厚な喫味を味わえる。煙草葉の種類や吸い方に依りますが、例えば手巻き用の無添加シャグタバコであれば3〜4炙りして合計6〜12ドロー(吸込)は美味しく吸えると思います(パイプタバコだともう少し長く多く吸えて、5〜6炙りして合計10〜18ドローくらいは美味しく吸えるかと)。

DynaVap のボウルサイズは 0.1g となっています。それはハーブ類をグラインドして隙間なく詰めた量で、シャグカットの煙草葉をふんわりと入れると同じくらいの量か、それ以下の量になるかと思います。勿論、パンパンに詰め込むように入れるとそれ以上になります。

因みに一般的な紙巻きたばこの煙草葉の量は 0.6 - 0.7g(アメリカンスピリット等の良心的な銘柄だと1g)、そして一般的なバッテリーヴェポライザーのボウルサイズは 0.3g 位になります。

DynaVap では更に少なく、ボウル半分くらいの量でも喫味がさほど変わらずに吸える。この量だと喫味の減衰は更に早まり2〜3炙りして合計4〜9ドローくらいで終わりますが、ドロー毎の吸いごたえはある。

ボウルサイズ 0.3g 位の一般的なコンダクションヴェポライザーに 0.1g 以下という少量の煙草葉を入れても、ドロー毎の香味がスカスカで喫煙における香味的満足感は得られないのではないかと思う。(ニコチン摂取はできると思いますが)

ワタクシ事の余談ですが、自分はニコチン耐性がそこまでありません。

ヴェポライジングはその特性上、有効成分(煙草だとニコチン)の主流煙中への移行率が高い。ニコチン耐性が低い自分には高すぎるのかもしれない。そんな私が満足感のある香味(や雑味)を求め、0.3g ものタバコをヴェポライジングすると、ニコチン過剰摂取で喫煙後しばらくは軽いニコチン酔い状態でダラケてしまう。

高温の燃焼スモーキングと違い、ヴェポライジングの温度帯はニコチンを蒸化させるのには十分であるものの、ニコチンの熱分解(による消失)が起こる程の高温ではない。しかも副流煙というものがないので全てを主流煙として吸える。したがってニコチンの主流煙中への移行率が高くなる。

(ニコチンの熱分解や移行率については当ページ下部の「脱線ゾーン」にまとめています)

自分にとって、この「香味に対してニコチン摂取量が多すぎる」というアンバランスさがヴェポライザー喫煙での悩みでした。香味的満足感を求めて煙草を多く詰めすぎるとニコチン摂取量が多すぎる。ニコチン摂取量を抑えようと少なく詰めると香味的満足感が乏しい。

「それならばセッション途中でやめればいいだろう」というご意見、ごもっともです。ただ貧乏性なのか、香味的満足感を求めて香味続く限り吸ってしまうんですよね…。その結果、ニコチン過剰摂取になる…。

一方、DynaVap は少量の煙草葉でも(ドロー回数はとても少ないですが)吸いごたえもあリますし香味的満足感もある。少量なのでニコクラも起きない。だから気軽に吸えるんですよね。1時間おきくらいに自分が吸いたい時に気兼ねなく吸える。

ただ裏を返せば、自分と違ってニコチン耐性が高い方だと1回の DynaVap 喫煙ではニコチンの充足感が乏しいと感じるかもしれない。


? ドローが重い

一般的なヴェポライザーに慣れていると、肺呼吸で肺に直接 Pull する吸い方 = DL (Direct Lung) ドローは DynaVap だと非常に重いです(ドロー抵抗が大きいです)。段々と慣れてきますが最初は DL / Pull ドローだとしんどく感じるかもしれません。

逆に、口で Puff して口腔内に溜めてから肺に入れる吸い方 = MTL (Mouth To Lung) ドローでは紙巻煙草に似たドロー抵抗があるので、MTL / Puff ドローする方にはその抵抗感が心地良いはず。


◯ 正直で香ばしい喫味

エアパスに喫味を妨げるものが何もないので正直な喫味が出る。"正直"というのは、パウチ開けたてのシャグタバコの香りを嗅いで想像したものに近い喫味が出るということ。ただ、直火式特有のローストされた香ばしさが加わるので、バッテリー機で味わえる"クリア"な喫味とは少し違うのかもしれない。


X 焦げる

煙草葉の刻みや湿度にも依りますが、無添加ものだと3炙り目くらいで焦げ味が微かに現れて(個人的にこの時点では香ばしくて好きな喫味)、4炙り目には目立ってくる。これを「香ばしい」と感じるか「焦げっぽい」と感じるかで好き嫌いが分かれる気がします。

刻みが細かく乾燥気味の煙草葉ではおそらく4炙り目くらいに部分的に combustion が発生しているのではないかと思います。「combustion は絶対に嫌だ」という健康志向の方は焦げ味が出る前に止めておいたほうがいいかもしれません。

刻みが粗く(例えばアメスピ)適度に調湿されている煙草は4炙り目でも焦げ味が控え目で、5炙り位ならいけると思います。リボンカットくらい刻みの粗い湿り気味のパイプタバコなんかは6炙りはいけるのではないでしょうか。


X 燃える

不注意などでクリックを無視して炙り続けてしまうことがある。それで時折煙草葉が燃えてしまい非常に不快な喫味になります。

煙管や手巻きで燃やした煙は美味しいですよね。ですが DynaVap 上で燃えた煙は何故かそれとは種類の違う、焦げ臭くて煙いだけの喫味になります。

しかもその臭いがチャンバーと煙道にこびりつく。こうなると無水エタノール+綿棒で掃除しないと臭いが取れない。クリーニングをするまで吸う気になれない。特に外出時に燃やしてしまうと厄介。

一般的なバッテリー式の温調固定セッションヴェポライザーだと「燃える」という事態は絶対に起きないので、これは DynaVap の大きな欠点でしょうね。


◯ 変化する喫味

DynaVap は煙草葉の喫味成分を一気に抽出した濃厚な喫味となる。ですが炙り毎に主体となる喫味が微妙に変化する。

炙り方や煙草葉の種類/湿度にも依りますが、例えば無添加ものだと1炙り目は煙草葉本来の香りが残り、2炙り目は旨味が前面に現れ、3炙り目はそれが甘味に変わり、4炙り目は香ばしさ(人によっては苦味)となって消えていく、といった具合。


X ながら吸いができない

炙り加熱中は DynaVap 本体とライターで両手は塞がる。そして炙り箇所から目は離せない。ですので、読書をしながら吸う、文章をタイプしながら吸う、みたいなことはできない。勿論ですが運転中には絶対に吸えない。呑み会等で談笑しながら吸うのも気が散って楽しめないという方もいるはず。

炙り毎にしばらく放っておいて好きなタイミングで炙るという吸い方も、できるにはできる。ただ、一度冷え切ってから再加熱すると喫味は落ちてしまうし、3炙り目には焦げ味主体の喫味になる。

※トーチライターではなく IH (Induction Heater) を加熱装置として使えば、ながら吸いに近いことはできるのですが、それはまた別の話なのでここでは割愛。


? 目に見える"クラウド"が多い

私が思うヴェポライザーの長所の一つは「吐き出す煙/クラウドが少ない」なので、これは個人的には短所ですが人によっては長所なのかもしれない。大きめのボウルでじっくり蒸すのではなく、小さいボウルを高温ローストして一気に喫味を抽出するせいか、どうしても目に見える"クラウド"が多くなる。


◯ リキッドが使える

自分はリキッド(グリセリン)なしでも美味しく吸えているのでリキッドを使ったことはないです(リキッドの蒸気を吸うと頭痛がするのでそもそも吸えない)。ですが、適量のリキッドを煙草葉に染み込ませて吸う方もいらっしゃいますよね。

バッテリー機ではグリセリンの蒸気が電子部に滲み出して故障の原因となったり、チャンバーが焦げ付いたりする。DynaVap は電子部品を一切使用していないので故障の心配なくリキッドを使えるし、チャンバー内部が焦げ付いたとしても漬け置き洗いをすれば焦げ付きも剥がれます。

そして DynaCoil を Tip に装填すればリキッドのみでも吸えるそうです。つまり DynaVap を(リキッド)vape として使える。しかも中々美味しいらしいです。私は上記の理由でリキッドの蒸気を吸えず、残念ながらこの方法を試すことが出来ないのですが、「うむ美味いおじさん」が以下の YouTube 動画でレビューされておりますのでご興味お有りの方はご覧になってみてください◯


◯ シャグタバコ選びが楽

一般的なバッテリー式のヴェポライザーでは、緩やかな加熱のためか煙草葉が持つ甘味、酸味、辛味、香ばしさ、着香味、添加剤、煙草葉感などが段階的に、あるいはバラバラに強調されて出てくることもある。それが奇跡的な美味しさになることもありますが、往々にして燃やした時とは異なる喫味になる。だからヴェポライザー喫煙では手巻きタバコの喫味レビュー通りの喫煙体験とならないことが多い。

加えて、加熱方式やチャンバー形状等で傾向はあるにせよ機種毎に喫味の出方が違う。人気の機種/煙草葉であれば喫味レビューがありますが稀なものだと自ら試すしかない。喫味レビュー上では好みだと思った煙草葉も自分の手持ち機種では違う印象になることもある。そして合わない煙草葉は絶望的に不味かったりする。そうなると結局は手巻きにして燃やして吸ったり、最悪棄ててしまうなんてことも。

翻って DynaVap は直火で急速に加熱して煙草葉に含まれる喫味成分を(段階的ではなく)一気に抽出できる。そのため DynaVap の喫味は「燃やした時の喫味」マイナス「焦げ味/煙/煙たさ」となる。

それ故にウェブ上に幾つもある手巻きタバコのレビューをそのまま参考にできる。例えばこのような手巻きタバコのブログ。煙たさがないのでレビューに書いてある"味"がより前面に出てくる印象ですが、ほぼ書いてある通りの喫味と吸いごたえになる。

だから新しい銘柄に挑戦する際のハードルが低いんです。

ウェブ上にあるレビューやタバコ屋店主の"燃やす前提"のアドバイス通りの喫味と吸いごたえになるので、その時点でアタリハズレのフィルタリングができて他機種と比べると煙草葉選びが楽なんですよね。

反面、予想通りの喫味になるので、奇跡的な組み合わせを発見するという嬉しさや楽しさはないのかもしれない。

(因みに、パイプタバコの銘柄選びはシャグのように簡単にはいかない…)

以上、喫味や吸い心地についての長所短所でした。


使い勝手における長所短所

◯ 機能美

DynaVap を使い始める前は「吸い時クリックが鳴る鉄の棒」くらいの認識でしたが(ごめんなさい…)、使えば使うほど「よくもまぁ、ここまでのギミックと工夫を紙巻たばこサイズに無駄なく搭載できたなぁ」という感嘆に変わった。

まず、アナログヴェポライザーにデジタル的なゼロイチ=オンオフを、電子(エレクトリック)部品を使わず、bi-metal disk のクリックによって器械的(メカニカル)に実現したのは巧いと思う。

また、よくよく観察すると、一挙両得なデザインになっているパーツが多い。二つ以上の役割/機能を持つ部位が多い。

例えば、Cap 自体は言わずもがなですが、Cap の Digger Outer(柄の部分)という小さな部位でさえ、吸殻の掻き出しと、放熱フィンにあてることによる Cap フィットの調整、という二つの役割を担っている。

機能を追加しようとすると本体サイズが大きくなるのが常ですが、DynaVap はコンパクトなサイズに無駄なく搭載している。

加えて、パーツ自体がその他パーツの着脱ツールとなっており、組立/分解時に別途工具類を揃える必要がない。例えば、Cap の Digger Outer で O-ring を外せたり Condenser を押し出しせる。その外した Condenser を使って Tip 内の CCD(スクリーン)の着脱ができる等、本体だけで組立と分解が完結する。それ故にクリーニングとメンテナンスが比較的楽。バッテリー機は言わずもがな、アナログヴェポライザーでも工具なしに完全分解/組立できるものは稀ではないでしょうか。

↓ 分解からクリーニングの流れ
(字幕を出して自動翻訳を選択すれば粗方は理解できると思います)

余談ですが、以前、パイプスモーカー仲間からこう言われたことがあります。
「これ(DynaVap)って延べ煙管の現代版ってこと?」と。
一理あるなと思います。

延べ煙管が使い手の"心地"を考えて手仕事で作り出された簡素で飾らない"用の美"だとしたら、DynaVap は使い心地もさることながら、パーツや部位ひとつひとつにまで"意味と役割"を担わせるように設計、機械生産した無駄のない"機能美"といった感じ。


◯ 携帯性に優れている

コンパクトなサイズも勿論ですが、粉塵や破損の心配をせずに気兼ねなく携帯できるのが嬉しい。例えば底に粉ゴミが溜まってそうなバッグやポケットにも放り込んでおけるし、鍵などの金属と一緒にポケットに入れておける。それこそシャグパウチに煙草葉と一緒にしまっておける。吸い殻を入れっぱなしでも問題ない。

バッテリー機は電子部品がある内部への粉シャグや粉塵の侵入は心配ですし、ガラス製マウスピースの機種だと収納にはやはり気を使いますしね。

そして DynaVap は燃やして吸う煙管やパイプとは違い本体内に異臭があまり残らないので、バッグの中で他のものから隔離する必要もない。 


◯ 熱源が豊富

トーチライターのガスが切れたらコンビニで買える。充填は5秒位で終わるのですぐ吸える。ガスが売っていなかったとしても100円ターボライターでも炙れる。最悪BiCライターでも炙れる(かなりの時間はかかりますけどね…)。キャンドル、キャンプファイヤー、ガスコンロ等、火さえあればとりあえず吸える。IH(電磁誘導)でも加熱できる。

虫眼鏡で太陽光を集めての加熱もできる・・・かも?(↓のように実際に試している方もいるので時間をかければできるはず)

画像6
エネルギー危機が訪れても吸える!?!?


X ライターガスの充填回数が多い

これはトリプルフレームなどの火力が強いライターに顕著で、ライターガスの充填が多いことに驚いてしまうかも。2時間に1度くらいの喫煙ペースであれば、トーチライター1個で終日ギリギリ持つかもしれません。

ですが、例えば喫茶店に本を読みに行くような喫煙回数が増える外出だとガスタンクを満タンにしても一日もたない。トーチライターの種類によっては複数個携帯したり、ガス缶を持ち歩くことになるかも。

ところで、充填回数が多いので燃費がかなりかかっているように感じますが、そこまでではないはず。ヴェポライザー専用の情報交換掲示板 VVVVAPOR! で直火式ヴェポライザーの燃費についての投稿があるのでご参考までに。


X ガス充填式ライターの航空機内への持込は原則できない

これは航空会社や空港のセキュリティーのさじ加減にも依るそうですが、原則ガス充填式のトーチライターは機内持込禁止と考えていたほうがよいかと。通過できると思ってセキュリティーゲートで止められたらトーチライターを廃棄する羽目になりますしね。

ですのでライターは現地調達になる。

と、諦めていたところ100円ライターをミニバーナーにできるこのようなアイテムを持ち込む方法もあるみたいですが、ここは自己判断/自己責任でお願いいたします・・。

あるいはバッテリー駆動のポータブル IH (Induction Heater) を携帯するしかないですね。


◯ 煙草葉の出し入れが楽

Cap 自体が煙草葉の押し込み/掻き出しツールとなっていて、Cap を外す動作の流れで掻き出せる。

画像1

これは機能的で良いデザインだと思いますね。まぁ、掻き出さなくとも吹いてしまえばポンと出ますけど・・。


X うるさい

DynaVap 喫煙は結構音が出る。トーチライターの点火スイッチのカチカチやゴーという出火音、Cap の「カチッ!」というクリック音。静かなバー等では耳ざわりに感じてしまう方もいると思います。実際カウンターで隣に座った方に迷惑そうな表情を向けられたことがあります・・。


X リラックスできない

ホッと一息があってこそが喫煙、という方も多いと思います。DynaVap はそういう喫煙体験ではない気がします。

常に喫煙に向き合う感じでぼーっとすることはできない。炙り加熱に気を使い、冷めないうちにドローを始め、ドローの強弱調整をしながら喫味を出す。喫煙ペースはクリックに急かされる/待たされる。

慣れてしまえばなんてことない作業です。ペースも小気味好ささえ感じるようになる。

ですが紙巻きやバッテリー式ヴェポライザーでのホッと一息をつく喫煙とはやっぱり違う。旨い十数ドローのために上記の過程を楽しめる人でないと面倒くさいだけなのだと思う。

自分もぼーっと考え事をしながら喫煙したい時にはバッテリー駆動のコンダクションセッション機やパイプを使っています。DynaVap は大好きな喫煙具ですが、これが私の唯一の喫煙方法になるということはないと思います。

(余談ですが、DynaVap を使っていると PAX3 のように楽に吸える機種のありがたみを感じます)


X アウトドアに意外と向いていない

完全アナログの DynaVap はバッテリー切れや破損がないので、何となくキャンプや釣りなどのアウトドア活動での使用に向いているイメージがありませんか?フジロックで活躍しそうだなとか思いませんか?

実際はそうでももない。

確かにバッテリー切れや破損の心配はないですが、明るくて風が強いアウトドア(海辺川辺とか)での炙りがとにかく難儀。トリプルフレームのトーチライターでも明るさで炎が見にくく(というか陽炎しか見えない)、風で炎が煽られる(BICライター等はもってのほか)。そういう環境下で美味しく吸うには熟達した炙り技術が求められるかと。。

また、気温にも影響を受ける。真夏昼間の炎天下と真冬早朝の極寒下では喫味が結構変わってしまう。

このような環境に限らず、屋外使用では少し慣れが必要。屋内では美味しかった炙り方が屋外だとイマイチということがある。

(やはりこういう時には PAX3 を。。。)


◯ 隅々までクリーニングが可能

電子部品を一切使用しておらず、各パーツの分解もできるので、無水エタノールに浸した綿棒などで Cap 内の Snap Disk 以外は隅々までクリーニングできる。Cap 以外は漬け置き洗いもできて、焦げやこびりついた汚れも落とせるので新品同様の状態に戻せる。臭いも残らない。

ですので、カモミールやラベンダー、珈琲豆などの香りや油分が強そうなものも汚れや臭い残りを気にせず吸える。ただし、違法でないものや安全なものに限ってください。


◯ 壊れない

余程のことがない限り壊れない。下の動画のようにトラクターに轢かれても(笑)壊れないようなので通常使用の範囲内で壊れることはないでしょう。

だたしクリックを無視して Cap を長時間炙り続けたり、Cap 内の Snap Disk を腐食性の強いアルコール類や薬剤を使って洗浄/浸け置きすると、Snap Disk へのダメージとなり寿命を早める。(Snap Disk は繊細な金属で消耗品です。通常使用をしていれば数年単位でもつとは思いますが、クリック耐用回数があるので、通常使用をしていても、いずれはクリックしなくなる)

因みに DynaVap 自体は壊れないんですが、ライターは壊れます…(ライターの耐久性については「アクセサリ」ページにまとめています)

逆に言うと、DynaVap 喫煙において壊れたり消耗したりするものは、Cap(の中の Snap Disk)、O-ring、ライターだけです。いずれも安価ですし、O-ring とライターは汎用品が使える。それらを買い替えれば末永く使える。

翻って、バッテリー式の一体型機種では電子部品のどこかが壊れると使えなくなってしまうことが多い。タバコは喫煙頻度が高いこともあるのか、1万円未満の機種だと半年〜1年位で壊れたという報告もしばしば耳にする。ハイエンド機でもメイン機として常用すると2年持つか持たないかくらいではないでしょうか。

使用頻度が高くても壊れない、あるいは壊れたパーツを交換すれば使い続けることができるというのはタバコユーザーにとってはメリットだと思います。


X 火傷する

DynaVap 喫煙中は火を扱う時間や本体が熱々な時間が長い。それ故に火傷しやすい。

Cap は薄っぺらいので外してしまえばすぐに冷めますが、Tip は喫煙後しばらくは熱々のままです。自分は不注意でそれを指でベッタリと掴んでしまい軽い火傷をしたことがあります。

Tip は触れてすぐに離せば大した事にはならないですが、ライターの炎は熱さに気づく頃には時既に遅しなので気をつけたい。

トーチライターによってはスイッチをオフにしても少しの間炎が出続けるものがある。屋内であれば気づきますが、騒がしくて明るい屋外だと炎が見えなかったり噴出音が聞こえなくて気付かないことがある。自分はその炎を指先に当ててしまったことがあり、水膨れになる火傷をしたことがあります。(これは DynaVap というよりライターのクオリティーの問題なんですけどね・・)

指先に気を使わなくてはいけない方やお子様がいる方などは細心の注意を払う必要がある。


X 手が茶色くなる

DynaVap はチャンバーから吸口までが一直線なので、煙道の掃除をしばらく怠ると茶色のジュース(汁)が吸口から垂れてくる。炙る時には吸口を下にするのでそのジュースが手に付く。すぐに拭き取れば問題ないですが、気づかずにしばらくそのままにしてしまうと肌に茶色く沈着する。そうなると石鹸で手を洗っても落ちない。


X 騒がしい環境で吸うのが難しい

クラブ、ライブハウス、カラオケで DynaVap 喫煙を試みたことがありますが、クリックがまったく聞こえず無理でしたね。騒がしい居酒屋でも炙りに集中しないとクリックをミスる。

また、カナル型(密閉型)イヤホンで耳が塞がっているとクリックを聞き逃します。

DynaVap 喫煙では本体とライターで両手が塞がる。それだとスマホ等がいじれないので、せめて音楽やラジオでも聞きながら吸いたいと思う方もいるはず。自室等でスピーカーから音を出しているくらいであれば問題ありません。ですが耳が塞がっている時、つまりカナル型イヤホンの場合は難しい。そもそも遮音性が高いので着けているだけでクリックが聞こえづらい。音を出すとクリックの音はほぼ聞こえないですね。

イヤホンを着けているのは外出時が多いかと思いますが、外出時の使用では注意が必要。というのは、炙り過ぎで燃やしてしまうと酷い喫味になり、無水エタノール綿棒でクリーニングするまでその臭いが内部に残る。外出時にこの事態は避けたい。カナル型イヤホンを外出時に常用している方は外したほうが無難かと思います。

まぁ、DynaVap 喫煙は3分位と短いですし、喫煙中の作業も多いので、ながら喫煙ができなかったとしてもそこまでの手持ち無沙汰感はないと思います。が、喫煙しかできないことにストレスを感じる方もいるかもしれない。

どうしても音楽やラジオを聞きたい方は AirPods などの開放型イヤホンを買うしかないですね・・・。無音や低音量であれば着けたままでもクリックが聞こえます。


◯ 手早く吸える

DynaVap は煙草葉の出し入れ含めて3分位で吸える。紙巻きを吸う方々と喫煙している時にこの短さは助かるんです。

一般的なヴェポライザーだとこちらのセッションが終わるまで紙巻きスモーカーを待たせてしまう。あるいはこちらがセッション途中で切り上げるか。煙草葉が入れにくい機種だと下手するとこちらはまだヒートアップ最中なのに紙巻きスモーカーの喫煙が終わってしまうなんてこともありますしね。


◯ 紙巻も吸える

Tip 内径が紙巻とほぼ同じなのでピタリと収まる。しかも綺麗にカットしていなくとも手で適当に千切って押し込める。

勿論、煙草葉直入れと比べると喫味は劣ります。ですがアメスピ等の無添加モノは結構美味しく吸える。だだ巻紙に香料や薬品などが添加されてるいる紙巻たばこは1炙り目にその味を味わうことになります…


? 自由 or 面倒

一般的な電子ヴェポライザーであれば電源をオンにすれば温度は一定になり、喫味に影響与える変数って煙草葉の量や湿度くらいであとは安定した喫煙になると思います。言い換えると、喫味の幅はある程度固定されてしまう。

DynaVap は更に熱源の種類と強弱、炙り時間、Cap の炙り位置、炙り毎の間隔、ドローの間隔、エアー取り込み量など、自分のさじ加減で調整できてしまう変数が良くも悪くも多い。そしてこれらを微妙に変えただけでも喫味と吸いごたえが変わってしまう/変えることができる。それ故に抽出できる喫味の幅は広い。

良く言えば、使い方次第で自分好みの喫味にできる自由さがある。悪く言えば、その喫味を出すのに少々手間がかかり面倒。

DynaVap はある程度自分好みの喫味にできるので、喫味自体が好き嫌いの争点になることってあまりないと思うんです。ですが、この手間を自由/楽しさと捉えるか、億劫と捉えるかで好き嫌いが分かれる気がします。

ただ、「クリック」というひとつの目安というか指標があるので大失敗するということはあまりないし、加熱が特段難しいということもない。コツさえ掴めば安定して好みの喫味を出せるようになる。(と、言えるのは、自分がチマチマした作業が好きな質だからでしょうかね…)


X 周りの方に距離を置かれる

火で炙るという所作もあり、怪しいものを吸っていると思われるのか、公衆の喫煙所などで周りの方に距離を置かれることがある。(私達タバコユーザーは違法なものを吸っているわけではないので臆する必要はないと自分は思いますが)

公衆の視線を気にしてしまう方は居心地の悪さを感じてしまうかもしれません。自分も巡回中の警察官の前でこれ見よがしに炙るということはさすがにしません。街中で何かを炙っている輩はおそらく優先的に職務質問をされるでしょうし。無用なトラブルは避けたいですしね。

また、加熱式タバコのみ可の喫煙室でも白い目で見られる。

DynaVap も原理的には加熱式タバコなので喫煙は可能なはずです。スタッフの方に加熱の仕組みを説明した際にも断られることは私の場合は一度もなかった。ですが、事前説明のない周りの喫煙者の方々には、当然、火を使う=燃やしていると映るので、怪訝な顔を向けられることがよくある。大体の方は一瞥して見て見ぬ振りですが、迷惑そうな表情で凝視されたこともある。そういう方でもしばらくすると仕組みをなんとなくは理解していただけるのか、面と向かって文句を言われたことはないですが、しばらくは居心地の悪さを感じるかもしれない。

そしてバーでは高確率で隣の方に「それ何ですか??」と話しかけられますね…


X 吸口を手で触ることが多い

タバコの出し入れ時や炙り加熱中にどうしても指先や掌が吸口に触れてしまう。手に菌やウィルスが付いていた場合はそれを口の中に運んでしまうことになる。これはヴェポライザー全般に言えることかもしれませんが、特に DynaVap は吸口に触れる機会が多い。昨今の状況だと外出時には使い難いかもしれませんね。


◯ カスタムパーツやアクセサリが豊富

公式でも↓のように色々な材質/形状の Midsection や Mouthpiece が販売されていますが、サードパーティー製やユーザー自作の販売も含めると本当に多種多様な選択肢がある。

その中から気に入ったデザインのステムを複数本ストックし、気分や服装に合わせて着せ替える、というような楽しみ方もできる。自分自身で金属部分に熱を加えて好みのカラーにしている方もいる。また、装飾的な物だけでなく、蒸気を冷やす内部構造を持つ機能的なステムもある。

本体パーツだけでなく↓のようにケースや専用 IH ヒーター等の周辺アクセサリも豊富。


以上、使い勝手における長所短所でした。


その他の長所短所

◯ 中古市場で売りやすい

DynaVap は Cap 以外は壊れることがほぼない(Cap も通常使用であれば数年間は壊れることはない)。そして Cap 以外は全パーツを丸ごと浸け置き洗いして新品の状態に戻せる。電子部品やバッテリーを搭載していないので故障や劣化もない。

ですので中古市場でほぼ値崩れなしに売れる。試しに買ってみて自分に合わなかったら売る、ということがバッテリー機種よりやりやすいかなと思います。

逆に言うと中古市場で買いやすいということでもある。中古でも不良品にあたることはほぼないと思います。(購入時は Cap の Snap Disk が正常に機能しているか否かだけは確認したほうがいいかも)

ただし偽物やクローン品にはお気をつけくださいね。AliExpress では偽物が堂々と DynaVap として販売されていますし、その偽物が中古市場で本物のように出品されている。しかもたいして安くない。クローン品はクリックの精度、細部の仕上げ、金属素材、O-Ringの品質が低いので安物買いの銭失いになると思いますよ。


? ヴェポライザー的な良さが少ない?

巷で言われているヴェポライザーのメリットってこの5つなのかなと思います。

・副流煙が出ない
・たばこ代の節約
・煙や臭いが少ない
・火を使わないので安心
・有害物質が少ない

DynaVap ではこれらが当てはまるのか否か。

・副流煙が出ない
他のヴェポライザー同様、DynaVap でも副流煙は出ない。

・たばこ代の節約
DynaVap は煙草葉グラムあたりの満足感は高いほうなので、一般的なヴェポライザーよりも更に節約になる可能性もあり、これは当てはまる。

・煙や臭いが少ない
DynaVap は結構モクモクします。しかしそれは燃焼による煙ではなく"蒸気"なので燃焼煙草の臭いに比べればだいぶマシです。ただ、一般的なヴェポライザーと比べると、臭い、というか、香りが残りますし、密室だとモクモクが周辺に充満します。

・火を使わないので安心
言わずもがなですよね…。火や熱の心配をしなくていいバッテリー式ヴェポライザーだと「ソファで横たわりながら吸う」「吸っていない時はそこらへんに置いておく」みたいなことができますが、DynaVap でこういう吸い方はできない。ただ、紙巻きタバコでよくある「吸殻の不始末による火事」は一般的なヴェポライザー同様 DynaVap でも起こらないのでそこは安心ですね。

・有害物質が少ない
これについては懐疑的です。無論、紙巻きたばこ燃焼よりは有害物質は少ないとは思います。ですが combustion を確実に回避できる200℃以下に設定できるバッテリー式ヴェポライザーと比べると直火加熱の DynaVap は抽出温度がアバウトです。それに温度云々よりも喫味の旨さを求めて(クリックを超えて)加熱具合を調整し、結果的に高温で抽出しがち。

まぁ、DynaVap 公式が推奨する通りファーストクリックまでの加熱にとどめておけば200℃弱でも吸えますが、DynaVap でそれをするタバコユーザーは少ない気がします。美味しいと感じる加熱タイミングはファーストクリックではなくセカンドクリック、あるいはセカンドクリックの数秒後という方が多いのではないでしょうか(それに金属疲労と汚れの堆積などでクリックは徐々に遅くなる)。故にその時点での抽出温度は200℃を超え、所々 combustion は発生し、それに伴い有害物質の量も増えているはずです。

そうは言っても DynaVap はヴェポライザーです。クリックを超える加熱によってバッテリー式ヴェポライザーよりも高温だとしても、赤熱するほど燃やしているわけではない。ですので白い灰になるまで燃やしている紙巻たばこに比べれば、有害物質の発生はだいぶ抑えられているとは思います。ですが一般的なヴェポライザー並の低減レベルには及ばない気がします。

というわけで、DynaVap には巷で言われているヴェポライザーのメリットは「副流煙が出ない」「タバコ代の節約」以外はあまり当てはまらないような気がします。

すみません。ここから少し脱線しますね。興味ない方は飛ばしてください。

--- 脱線ゾーン ---

このゾーンでは有害物質やタール等の話をしていますが、私はこの分野の専門家ではありません。研究論文などを一通り読んではみたものの、誤読や誤解も多々あるかと思います。ここの内容の基になったデータや文献は末尾にまとめておきますので、できればソースをご確認ください。

紙巻きタバコ燃焼、iQOS、ヴェポライザー、その他なんであれ、葉を熱して気化されたものではタールが発生します。タールとは、煙あるいは蒸気中の水とニコチン以外の残留物群です。因みにタバコ研究や論文の中ではタールを NFDPM: Nicotine-Free Dry Particulate Matter という名称で記す事が多いそうです。※1 ※2 ※9

そして物質群であるタールは何千種類もの化学物質で構成されている。米国FDAの基準に拠ると、煙草の煙の中にはベンゼンやアセトアルデヒド等の人体に害を及ぼす(あるいは可能性のある)約90の物質があり、その他は特に害のない成分や、そして勿論のことながら"味"の成分もある。※2 ※3

ですので「タールの量が多い=有害」とならないこともある。個々の有害物質が煙あるいは蒸気の中にどのくらい含まれているかで有害性が変わる。どの程度有害かは個々の有害物質量を測定してみないことには分からない。だからタールの総量が多くても煙あるいは蒸気中に有害物質がほとんどなければ有害性が低くなる場合もあるし、タール総量が少なくとも含まれる有害物質の量が膨大なら有害性が高くなる場合もある。※2

もし、有害物質がほぼ含まれていない煙/蒸気/タールがあるとしたら、ドロー(吸込)毎の煙/蒸気/タールの量は多ければ多いほうがいい、とも言えるかもしれない。なぜならその煙/蒸気/タールは喫味が濃厚で吸いごたえがありつつ有害物質の量は少ない。

これを実現しているのが「美味しい」と評価されているヴェポライザー機種なのではないでしょうか。200℃近辺のヴェポライジングにより有効成分や香味を最大限抽出しつつ、有害物質の発生を極力抑え、濃厚で"美味しい"蒸気を口腔内に届けられる機種(例えば Arizer の Solo2 とか)。

煙草葉の種類や薬品添加の有無で有害物質の発生量は変わりますが、同じ種類の煙草葉であれば有害物質の発生量は抽出温度と相関があり、700℃以上の高温(燃焼)抽出のスモーキングでは有害物質が多く発生し、200℃前後のヴェポライジングでは(物質によって低減幅は変わりますが)スモーキングと比較すると1/10〜1/1000レベルで低減されている。(煙草葉の有効成分であるニコチンは150℃くらいから蒸化が始まり200℃近辺だと多くの量が主流煙へ移行する)※4 ※5 ※6

計測データ上のタール値(NFDPM値)だけを見ると、ヴェポライジングでもスモーキングと遜色ないくらいのタール量が出ている。ただし、スモーキングとヴェポライジングではタールの中身(有害物質の量)が違う。

iQOS や glo の企業側メッセージでも煙草葉を使用している商品については「既知の有害物質が低減されている」とは宣伝していますが「タールが出ない/少ない」とは謳っていないはずです。

「ヴェポライザーはタールが出ない/少ない」と謳っているところは「燃焼時のようなタールは出ない/少ない」ということをおそらく意図しているのでしょうが、これだと誤解を招くのでここは"タール"を使わずにシンプルに「ヴェポライザーでは既知の有害物質が低減されている」としておいたほうがいいのかもしれませんね。

偏狭な嫌煙家に加熱式タバコのタール測定値を提示されながら「低温のヴェポライジングでも十分なタール量が出るじゃないか!!!」なんて詰め寄られたら面倒そうですし。

ところで。

ヴェポライザーの煙道内に溜まったジュース(汁)の色味/粘度/臭いが強いと「燃焼煙草と同じくらい有害に違いない」と思われる方も多いかもしれません。ですが有害物質の量と、色味粘度臭いの強さとの相関関係を示すデータやエビデンスは見たことがないです。また、ジュースの色味粘度臭いが強い=抽出温度が高い、という相関を示す実験データも見つけることができなかった。(ジュースの量や粘度は煙草葉の種類や煙道の構造に因るところのほうが大きいんじゃないですかね)

自分が調べた限り、同じ種類の煙草葉使用なら有害物質の発生量と相関を示すファクターは"抽出温度"だけです。

自分は、個人の主観による"色味粘度臭い"ではなく、研究機関で計測されたデータによって相関が示されている"抽出温度"の方を今のところは信用しますね。

つまり、ヴェポライザーで200℃近辺で抽出されたジュースの色味粘度臭いと、700℃以上の燃焼喫煙によって抽出されたそれらが、見た感じや嗅いだ感じで全く同じということが仮にあったとしても、それぞれの有害物質の量は違うはずである、というのが自分のポジションです。

色味粘度臭いの強さに寄与しているのは寧ろ有害物質以外の化合物かもしれませんしね・・・。

ただまぁ、「有害物質の量と色味粘度臭いの強さは関係ない」というエビデンスもまた同様に見たことがないので、自分のスタンスは「それについては関係があるかもしれないし、ないかもしれないし、分からないけど、確度は低そうだな」という感じです。

確実なデータとエビデンスで示されているのは、
「抽出温度が高くなる=有害物質の量が多くなる」
ということだけですね。

「溜まったジュースの色味粘度臭いが強いんだから有害に違いない、抽出温度が高いに違いない」という論法については、自分も"感覚的には"そう思ってしまうのですが、データやエビデンスが見つけられないので何とも言えないし、どちかというと懐疑的です。まぁ、嗅いだら不快でしょうし舐めたら不味いのは間違いないでしょうけど…。

さて、ここに来てそもそも論になりますが、煙草葉の場合は有効成分がニコチンという人体に害のある中毒性物質であるわけで、他の有害物質が低減されるヴェポライジングであっても「健康的」という言葉はそもそも当てはまらないと思います。

しかもヴェポライジングでは抽出温度や吸い方によってはニコチンの摂取量が燃焼スモーキングより多くなることがあるかもしれない。

フィルターなしの紙巻きタバコを国際的に定められた条件(ISO法*)に近い形で燃焼喫煙すると煙草葉中のニコチンの20%弱が主流煙中に移行するようです。

*ISO法:シガレットで35ml/puff, 2sec./puff, 1puff/min.で吸い殻の長さが30mmで喫煙終了(大体 7 puffs くらいだそうです)

nicotine は実験的に単品のまま加熱すると400℃以上で熱分解が始まる。600℃では全体の約3分の2が〔中略〕分解され、700℃でほとんどが〔中略〕分解され、800〜900℃では〔中略〕完全に分解される。しかし、喫煙時、葉たばこ中に存在する nicotine は、燃焼部の最高温度が900℃以上を示すのにも拘らず、熱分解を受けずに主流煙として17%、副流煙として24%、合計41%が nicotine のままでたばこ煙中に移行〔する〕。(括弧内筆者)

受動喫煙の物理化学

※熱分解=その物質が加熱によって2つ以上の他の物質に分解、変化すること

また、ISO法ではなく、もう少し現実に近い吸い方での、別の研究の実験によると、

両切たばこを吸煙量40ml/2秒、吸煙間隔28秒で50mm喫煙した場合、ニコチンは主流煙中に18〜20%、副流煙中に17〜20%、吸殻中に6〜8%の割合で移行し、ニコチンの50%以上は分解する。

たばこアルカロイドの熱分解に関する研究

とのことです。

一般的な煙草葉にはグラムあたり 15-20mg 位のニコチンが含まれているそうです。そしてシガレット1本あたりの煙草葉は 0.6g くらい。例えば、グラムあたり 20mg ニコチン含有の煙草葉 0.6g を使用しているシガレットをフィルターなしで吸ったとしたら、主流煙から摂取できるニコチン量は
20mg x 0.6 x ニコチン移行率:0.2 = 2.4mg
となる。両切りピースのパッケージ記載値はたしかこのくらい。

ただ、多くの方は両切りではなくフィルター付紙巻きタバコを吸っている。フィルターの種類やフィルターの空気孔の有無で主流煙へのニコチン移行率は変わりますが、無孔フィルター(あるいは空気孔を塞ぐ)だと移行率は10%くらいになるみたいです。※5

上の計算式に当てはめると、1.2mg のニコチン摂取となる。この辺がセブンスターやハイライト、アメスピターコイズといった、無孔あるいは空気孔の少ないフィルターの"強い"紙巻きタバコのニコチン値レンジですよね。実際のところ、紙巻き燃焼喫煙でこれ以上の値の銘柄を吸っている方は稀なのでは。

一方、ヴェポライジングによるニコチン摂取量はというと、結構多めになるのではないかと思います。

ある実験データによると、シガレットの煙草葉 0.6g (ニコチン含有量 17mg) を200℃で加熱して、1分毎にパフで合計7パフしたところ、1.5mg くらいのニコチンが主流煙中に移行した(移行率9%)。しかし、0.6g で7パフだけというのはヴェポライザー喫煙の実態に即していない。煙草葉が燃え尽きたら喫煙終了の燃焼スモーキングと違い、加熱ヴェポライジングでは有効成分と香味成分が煙草葉から発生するかぎりは吸える。この温度帯では煙草葉が燃え尽きることはないし、ニコチンの熱分解も起こらない。実際、この実験では50パフしても煙草葉内のニコチンの半分はまだ葉内に残るということが示されている。逆に言うと、50パフすれば煙草葉内のニコチンの半分は主流煙として吸えてしまうということでもある(それが美味しいかはさておき)。※4

一般的なヴェポライザー(バッテリー式セッション機、コンダクション、チャンバー容量 0.3g)に煙草葉 0.3gを詰めて200℃で喫煙すると、20秒間隔のパフで合計20パフは美味しく吸えるとする(個人差あると思いますが、自分の吸い方だとそのくらい)。上の実験データから7パフでニコチン移行率が9%なので、20パフでの移行率は、すごいざっくりとした単純計算をすると、約3倍の27%弱になる可能性がある(パフ間隔も違いますし、実際にはあるところまではパフ毎にニコチン濃度が漸増して、それを超えると漸減すると思うので、移行率はそれ以上かもしれないし、それ以下かもしれない…)。仮に上の実験データの煙草葉を使用したとすると、0.3g ではニコチン含有量は 8.5mg になるので、移行率27%とすると、
8.5mg x 0.27 ≒ 2.3mg
となる。この値は両切りピースのニコチン値とほぼ同じ。結構多い。

実験環境とヴェポ喫煙では器具も違いますし、煙草葉の種類や湿度なども違うので、この通りにはならないと思いますが、目安としてはこの辺なのかなと。少なめのパフ数で吸ったとしても1回のヴェポ喫煙でニコチン 1.5mg 位は摂取しているような気がする(自分のニコクラ具合からの実感予想です。測定しているわけではないので確証は全くないです…)。

しかも、途中で温度を上げたり、長めの DL/Pull ドローに切り替えたりして、喫味成分を搾り取るように10分以上吸い続けたとしたら、それこそ煙草葉中に含まれるニコチンの半分くらいは摂取できてしまうこともあるのかもしれない…。(自分はヴェポ喫煙を始めたての頃にこのような吸い方をしてしまったことがある。どのくらいのニコチンを摂取したのかは定かではないですが、喫煙後に気持ち悪くなり、しばらくベッドに横たわっていた事があります…)

両切りピースやセブンスター、ハイライトなどの高ニコチン値銘柄を常喫していた方はともかく、多くの燃焼スモーカーにとっては加熱ヴェポライジングの方がニコチン摂取量は増えるような気がするのですが…どうなんでしょうね…。まぁ、設定温度やパフ数など、吸い方によっても変わると思うのでここは人それぞれなんでしょうね。

ニコチン以外の有害物質についてもヴェポライジングではスモーキングより1/100レベルで低減されているとはいえ、それらの健康リスクがそのレベルで著減するという単純な話ではないのでしょう。

また、うまおじさんのこの記事にあるように、エアパスが完全独立していない低品質の機種では、煙草葉由来以外の有害物質を吸引する可能性も否定できない。それに、誤ったチャンバー掃除方法(メラミンスポンジ使用とか)のせいで有毒ガスを一緒に吸引してしまうなんてこともあるかもしれない。

かく言う私は、自分で吸う分には有害性やタバコ代云々ではなく「旨けりゃいい」と思っているところがあって、蒸気の方が旨い銘柄はヴェポライジングしますし、煙の方が旨い銘柄はスモーキングします。

しかしながら、他人(特に家族や友人)に DynaVap やヴェポライザーを勧める際には、有害性についてはなるべく正しい情報を伝えたかったので、こんな感じで自分自身で調べてみました。

ただ、当ゾーン冒頭でも申し上げましたが、誤読や誤解の可能性があることもご留意ください。できればソースに当たってくださいね。

以下、この脱線ゾーンの基になった参考文献/論文です。

※1 What is tar?
※2 “Tar” – An outdated concept that can mislead consumers
※3 Harmful and Potentially Harmful Constituents in Tobacco Products and Tobacco Smoke: Established List
※4 An experimental method to study emissions from heated tobacco between 100-200°C
※5 Comparison of Chemicals in Mainstream Smoke in Heat-not-burn Tobacco and Combustion Cigarettes
※6 Platform 1's mainstream aerosol compared to reference cigarette smoke
※7 受動喫煙の物理化学
※8 煙草アルカイドの熱分解に関する研究
※9 「たばこ煙の有害化学物質について」〜国産たばこ銘柄を中心として〜

--- 脱線ゾーンの終わり ---


? 製品の更新サイクルが早い

DynaVap は常により良いプロダクトを作ろうと製品を更新し続けている。例えば M については毎年刷新している。それはすごいことだと思う。

ですが、新モデルリリースに伴い、廃番になる旧モデルやパーツも多い。

使い慣れたアイテムを、壊れたり紛失した時には全く同じもので買い替え、それを長年使い続けたいタイプの人(私はこのタイプ)は、予備をストックしておかないと不安になるかも。

下のような旧モデル/パーツも控えめなデザインで自分は結構好きなんですが、今では廃番になっており手に入れるのが難しい。


? 本家購入時の CS(顧客対応/満足)が絶妙 or 微妙 ?

QC(品質管理)が甘いのか、稀に切削精度や品質のバラつきが見られる。想定通り機能して美味しく吸えている分にはロットによる"個性"として済ませられますが、初期不良で機能せず返品となるケースも偶に見かける(自分の周りでも「Omni Condenser が伸縮しない」みたいなケースがあった)。そして注文したアイテムと違うものが DynaVap 社から郵送されてきたというケースもしばしば聞く。

会社規模の割に製品サイクルが早く、SKU と出荷台数が多すぎるのか、出荷時の QC が追いついていないのかもしれない。特に新製品発表時やセール時に頻発している。

また、同じような理由で問い合わせも捌ききれていないのか、内容によっては返信さえこないらしい。特に「発送メール来てないんだけど発送した?」という類の「早く発送して」旨の問い合わせメールへはほぼ返信がないようなので諦めて座して待つかしないですね…。

ただし RMA(返品保証)にはとても寛容。不良品の写真を送付すれば、すぐに新品正常品を郵送してくれる。しかも、お詫びとしてなのか"おまけアイテム"が同封される確率が高く、むしろラッキーだったりするのかも…。まぁユーザーとしては届いたらすぐに使いたいわけで、再度郵送を待たなくてはならないのはちょっとがっかりなんでしょうけど(特に初めての DynaVap の場合は)。

QC は今後改善されることを願いたい。(2020年になってからはこういう話はあまり聞かなくなったのでだいぶ改善されたのかな?)

こんな感じだと「本家購入じゃなくて信頼できる正規販売店で買ったほうがいいんじゃない?」と思われる方も多いかもしれない。その通りだと思います。

しかし本家購入はこういう残念なサプライズもありますが、嬉しいサプライズもある。近年では新製品をプレオーダーしたカスタマーには必ず何かしらのオマケが付きますし、それ以外でも偶に何の前触れもなしに大盤振る舞いなサプライズギフトが同封されていることがある。

ただ、「サプライズは残念なのも嬉しいのもいらない。確実に、迅速に、注文したアイテムが欲しい」という方は、対応がしっかりした正規代理店で購入したほうが無難でしょうね。

DynaVap 本家の顧客対応は大雑把というか、寛容というか、微妙でもあり絶妙でもありますね。心を鷲掴みにされ DynaVap のことが大好きになってしまう方もいる一方、イライラして大嫌いになる方もいそう。


◯ 会社への信頼感

YouTube上の公式チャンネルに会社代表のジョージ氏や社員の方々が頻繁に登場する。ユーザー参加型の YouTube Live も定期的に行っており、ユーザーとの距離が近い。自社の製品に自信や信頼がないとここまでパブリックに姿を現せないでしょうね。下手なプロダクトをリリースしたら批判の矢面に立つ可能性もあるわけですし。


以上、DynaVap の長所と短所を自分なりにまとめてみました。
ユーザーによるレビュー」ページでは他の方々の感想もまとめていますのでご覧になってみてください。

短所をご理解してもなお「DynaVap を使ってみたい」とお考えの方は、以降のページもお時間あれば覗いてみてください。

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