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スマホ紛失物語

月曜、今月最後の島バイトに行ったら、帰りの船でスマホを忘れてしまった。
普段は船の中ではスマホでドラマを見ることが多いため、ずっとスマホを手に持っていたけど、この日はなぜか本をずっと読んでいたため、私の脳の中でスマホという物体の存在感がこれまでにないほど薄れていた結果の出来事だ。
デジタルデトックスがすぎた。

船から降りて50メートル歩いたくらいのところでカバンの中にスマホがないと気づいたので、ダッシュで船に戻り、入り口のおじちゃんに忘れ物したと伝えたら「あと2分で戻ってきてよ!」と言われたので慌てて自分が座っていた席周辺まで走り、確認したけどなぜか見当たらず。。
船の出発の時間が迫ってしまい、その日は断念。

とりあえず、係の人に落とし物用の電話番号を聞いて、十数年ぶりに駅の公衆電話で電話をした。
携帯の特徴と乗っていた便などを伝えたけど、清掃の人がすでに帰宅していたので明日になりますとのこと。

会話時間を気にしないために、公衆電話に100円を入れたのだが、電話を切った後にお釣りが落ちてくる音がせず、電話本体をながめていたら、しっかり「100円はお釣りが返ってきません」書いてあって軽く白目。

私は一人暮らしで家電も持っていないため、パソコンのLINEで東京にいる兄に連絡し、その後の船の人とのやりとりを託した。電話を持たない不便さを久々に実感した。

よくよく考えると、一度戻って席を確認したのに無かったということは、どこにあるんだ、、?と冷静に考えてみると、船を降りる際に私はゴミ箱にゴミを捨てた記憶がある。もしゴミとスマホを同時に持っていたなら無意識にスマホをゴミ箱に捨てた可能性もあるのでは、、!?と思い始め、とりあえず手掛かりは全て伝えておかないとと思い、その情報を兄に伝え、それを東京から電話で伝えてもらうという、なんとも遠回りなコミュニケーションを繰り返した。

その夜は寝られはしたが、朝早く猫に起こされてからは、まともに寝られなかった。目を閉じたまままずっと、スマホをどこで無くしたかを推理したり、万が一見つからなかった場合、去年新調したばかりのiPhoneをまた買いに行って、また設定し直さなければならない、かもしれないことに、絶望感を感じていた。

朝7時くらいに、兄が船の人に連絡を入れてくれたけど、まだその時点では見つかっていないとの連絡が届く。船の人も一生懸命探してくれているらしかったので、心底申し訳ない思いつつも、「頼む!見つかるまで探してくれ!」と願った。

自分は今できることをしようと、「iPhoneを探す」という機能で自分のスマホの位置を調べてみたら、朝の5時半、島の港の船が停車するまさにその場所に存在していたことが記録されていた。これで船にあることは間違いなさそうだ。
動きつづける船に乗りに行って探し続けるわけにもいさず、今はとにかく吉報を待つしか無かった。

1時間後、兄からLINEがきた。
スマホが見つかったとのことだった。
肩の力が抜けた。

今回、なぜ自分がこんなにハラハラしたかを考えてみた。スマホ自体がなくなることは過去も経験しているので、まぁ仕方ないと思えはするけど、今のiPhoneの値段と使用期間と設定の面倒くささが、無くすことに比べて割が合わなすぎることがいちばんの理由だなと思った。
過去2回無くしたiPhoneは、どちらも2年以上は使用していたし、今ほど高価な値段ではなかったので、諦めもついた。
あと過去に無くしたのが海外だったので、諦めざるを得なかったというのもある。今回は日本の自分の生活圏内で無くして、しかも無くした場所がほぼ特定されているのにも関わらず、それでも無くすというのはやっぱ割に合わない。

今回の反省を活かして、スマホストラップを買うことを決意。でも全然かわいいのがないんだよなー


お昼頃にスマホを受け取りに行ったら、ちょうどお昼ご飯中の係の人が出てきて、スマホを渡してくれた。
その人は口いっぱいに食べ物を入れていて、ほっぺたが膨れ上がっていたため、具体的にどこにあったのかというようなことは一切聞き出せなかった。私はとにかくできる限りの謝罪とお礼を言って、スマホを受け取った。

帰宅して、改めて「iPhoneを探す」でスマホの履歴を確認したら、私の気持ちそっちのけでものすごい大航海を人知れずしていたことが分かった。わたしも今年は海へ出よう。


その後に銀行へ寄って、去年未払いし続けた健康保険料を一括で支払った。とんでもない金額になっていて、世知辛さを一人噛み締める。税金払うときは、いつも社会に対して札束を思いっきり投げつけるようなイメージで払っているんだけど、みんなそうだよね。
スマホ無くした次の日にえげつない金額の税金払える自分は本当に強くなったなと思う。


この日はろくに働いてもないのに、午前中でドッと疲れてしまった。
帰り道で美味しそうな定食屋さんに入ったら、BGMがどこでも聴いたことない、アイドルみたいなボカロみたいなアニメ音楽みたいな、それでいてどれでもないような、本当になんとも言えない若すぎる少年たちの歌が流れていた。

美味しいご飯で最後だけはいい気分で締めくくりたかったけど、人生そううまくはいかないなと思わせてくれる曲だった。

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