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『スパイダーマン:スパイダーバース』ライフスタイルとメタ。もういちど物語世界を信じるために

メタフィクションってありますよね。作品を俯瞰し、物語の構造を言い当て、「この世界はフィクションだったんだ」って言いだす手法のことです。観客が物語の世界に没入し、信じることの限界を暴いてしまう、インテリジェンスに思われているやり方ですね。

でも今、そのやり方は賢いことでもなんでもなくなりました。何故かって?メタが当たり前だから。どうして当たり前なの?物語世界をもつコンテンツが、現実の生活にカルチャーとして浸透しきったから。どういうこと?現実から見れば当然、物語の世界の限界は知れているからです。

『スパイダーマン:スパイダーバース』の主人公、マイルス・モラレスはグラフィティアートを好み、部屋にチャンス・ザ・ラッパーのポスターを張り、ナイキのスニーカーを愛好する。そして「スパイダーマン」のコミックを読む少年です。

あの世界は、スパイダーマンはフィクションだよって物語世界の限界を見せ、俯瞰しているのでしょうか?違うでしょう。スパイダーマンはコミックだよ、と言う現実がありつつ、一周回ってマイルスがヒーローになる物語を信じさせようとしているんだと思います。

【以下の内容】ライフスタイルの中のサブカルチャー ◆ライフスタイルをベースにすることで、逆にカオスな表現がまとまる。なぜか? ◆アメリカの劇場版3DCGアニメで「まずやらない」ことだけで出来ている ◆ピーター・パーカーの限界 ◆複数の画風のキャラが共存しながら「王道物語」を描く“ありえない”ことが実現している理由 ◆並外れたパワーである、スパイダーマンの再定義

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