見出し画像

情報レシオ:情報係数とベット回数のトレードオフ

 情報係数0.02のスキルをもつ投資家Aと情報係数0.10のスキルをもつ投資家Bを比較する。

 投資家Aのスキルは投資家Bに比べれば小さい。しかし、アクティブ運用の世界では十分に通用するレベルのスキルである。この投資家Aは、四半期当たり200銘柄の株式をフォローし、事実上、1年あたり800回のベットを行うとする。基本法則に基づくと、情報レシオは0.57であり、上位25%以内の投資家であることがわかる。

$$
情報レシオIR = 情報係数IC\cdot\sqrt{ブレスBR}\\ \\

IR_A = 0.02\cdot\sqrt{800} = 0.57
$$

運用成績と評価の目安となる情報レシオの水準
投資家の情報レシオの分布

 一方で、投資家Bのスキル(情報係数)は0.10と、非常に高いレベルのスキルを有する。しかし、この投資家は、広範なマクロ経済の動向を検証することによって1つの銘柄について市場のタイミングを計り、四半期ごとに独立した賭けを行うだけであるとしよう。つまり、1年あたり4回のベットを行うとする。この場合、情報レシオは0.20にしかならず、1回の賭け当たりのスキルが高くても、情報レシオは必ずしも高くならない。

$$
IR_B = 0.10\cdot\sqrt{4} = 0.20
$$

投資家Aと投資家Bの比較

 スキル(情報係数)の向上はむずかしいが、ブレスを高めるのは比較的容易である。また、スキルを高めるために新たにリサーチャーを雇う費用もかからない。よって、基本法則に基づけば、投資家Aの戦略のほうが、投資家Bの戦略よりも成功する可能性が高いといえる。これらの例から、より高い情報レシオを得るために、下記のことが重要であると考えられる。

  • ある程度のスキルをもって、できる限り頻繁に、かつ、より多くの銘柄にベットする。

  • 投資家は、国、通貨、個別株式のそれぞれにベットすることでブレスを増加させる。

  • ブレスは資産だけでなくシグナルにも適用されるため、複数のシグナルを組み合わせる。

以上の方策以外にも情報レシオを効率的に上げる方法が存在する。たとえば投資家Aの戦略と投資家Bの戦略を組み合わせる方法である。両戦略のアルファが独立であれば、2つの戦略の合成後の情報レシオは以下の式のように2乗の形で合計することができる。この場合、合成後の情報レシオは0.60に上昇する。

$$
IR_{AB} = \sqrt{IC_A^2+IC_B^2}=\sqrt{0.57^2+0.20^2}=0.60
$$

情報係数と的中確率の関係:

$$
IC=2p-1\\
(0\le p\le1, -1\le IC\le 1)
$$


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?