【試合感想文】 10/10ロッテ5-0楽天:“持っていない”悲運のエースの限界を垣間見た
笛吹けども踊らず
それにしても今シーズンのペナントレースは最後まで波瀾万丈だった。
10.9決戦が雨で流れて順延になった10.10ラストマッチも、降雨で試合開始遅延。結局3時間15分の攻防は30分遅れで18時30分に始まった。
雨降りの悪天候にもかかわらず、場内は満員御礼の2万5630人。火曜日の本拠地でいえば東北開幕戦4/4●L0-4Eの2万4365人を上回る動員となり、平日火曜日に本拠地2万5000人超えは、コロナ禍前で2万7326人を記録した2019年9/24ソフトバンク戦以来4年ぶりの大入りになった。
結果はM5-0E。多くの楽天ファンが7月から始まった奇跡の逆転Aクラス入り物語のハッピーエンドを祈っていたが、今季14度目の零敗を喫して4位が確定。最後の最後で「笛吹けども踊らず」になったイメージだ。
一夜明けて石井一久監督退任報道、茂木英五郎国内FA行使検討報道、塩見貴洋と西川遥輝の戦力外報道が一気にネット上を騒がせている。ぼくが風の便りでGMに出戻るらしいと聞いていた石井監督退任の件は、GMに戻ることなくそのまま退団とも一部報道は伝えている。後任は今江敏晃1軍打撃コーチが有力とも報じられている。
これらの件に関してはまた別途言及することとして、本稿ではラストマッチの試合感想文を書いていきたい。
“持っていない”悲運のエース
それにしても、エースの則本昂大は“持っていない”。
先制点の口火を切られた2回1死走者なし、5番・山口航輝のツーベース。サードを守る小深田大翔が正面に入りながらも捕りきれずに足元脇を鋭く突破されたもの。記録上はHのランプがついたが、守る人によっては三ゴになっていたかもしれず、拙守に足をひっぱられた。
1死2塁になって、6番・岡大海の初球。インハイを真っ直ぐで攻めて詰まらせたが、ふらふらっとしたフライが1塁後方の右翼線、背走する一塁手、二塁手を越えて前進してくる右翼手の前に着弾したポテンヒットの中間飛球だった。これが先制打になってしまう。
2失点目も不運に見舞われた。4回2死走者なし、7番・安田尚憲の当たりは合わせただけに見えたが、その打球が伸びていき、まさかの左翼ポール直撃弾に...
これらの一部始終を目撃して「持っていないなあ...」と感じてしまったのは僕だけではないはずだ。
失点57、自責点45。その差は12失点
今季のノリは失点57に対して自責点は45。その差12もあった。
これはパリーグ規定投球回到達の投手9人の中で最大。ノリのキャリアでも失点87、自責点63で24点差ついた2016年に続くワースト2位になっている。
こう書くと「今年のノリは守備に足をひっぱられたね」という印象になるのだが、じつは真相は少々違う。今季の楽天守備陣は1268.2回を守って82失策、9イニング当たり0.58個のエラーを記録していた。いっぽう則本登板時のエラーは10個だった。
この9イニング当たりの発生頻度をもとに則本の155回で発生しても不思議ではないエラーの数を計算してみると、じつはちょうど10個になるのだ。
だから、ノリが投げているときエラーが異様に多いわけではない。
これだけ投げていればエラーもこれだけあるよねという適性数だったのに、味方のミスをカバーすべく則本が要所で踏ん張りきれなかったというのが実態だと思うのだ。
大人の投球に脱皮も、最大武器を手放すことに
「則本は力ませれば勝機がある」。楽天を不本意に退団してソフトバンクのコーチ職を務めていたころの平石洋介が、かつて則本攻略法についてそんなことを言っていた。
今シーズンの則本はその余計な力みがとれ、腹八分目の大人の投球に脱皮。一時期は4試合に1度の高い頻度で1試合5失点以上と派手に燃えていたが、今年は24先発で2炎上。鬼門の夏場も開幕からの首脳陣の起用法と自身の暑さ対策が奏功し乗り越え、チームが最終戦までAクラス争いできたのも、エースがいくつかの課題を解決して好投を続けたからだ。
その意味で僕の則本評は近年まれにみるほど好評価だが、いっぽうで本当に良いときにみせていた場内を圧倒するあのマウンド支配力は消え失せてしまった。かつてのドクターKも奪三振率6.45はキャリアワースト。
味方のエラーをカバーできず要所で失点を重ねたのも、かつての最大武器=奪三振能力に陰りが生じたことの影響だと思うし、本戦で岡を詰まらせながらも中間飛球まで飛ばされてしまったのも、安田のホームランが切れずにギリギリ残ってしまったのも、全盛期と比べて球威が落ちたことによる影響なのかもしれない。
・・・と考えたとき本戦の(続く)
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