【試合感想文】 5/14楽天5-0西武:結果球は全てボール球。球団史上初に迫った瀧中快投を振り返る!

楽天球団史上2年9ヵ月ぶりのチャンス

自らの高鳴る鼓動をこんなにも聞いたのは、いつ以来だろう。

4月中旬、ZOOMで人生最大と言える重要面談に臨んだときも全く緊張しなかった(それがいけなかったかも?!)。

それなのに、ZONEに入ったタッキーの快投がアウト27個の終着点に近づくにつれて、僕の中の緊張は一気に沸点まで跳ね上がっていった。

9回1死までノーヒットノーラン投球だった2020年8/5ソフトバンク戦(楽天生命パーク)の涌井秀章以来、2年9ヵ月ぶりに巡ってきたチャンス。

しかし、今回も球団史上初の快記録はお預けになった。

快投を支えた生命線、力尽く

瀧中の快記録を阻止したのは、9回1死でバッターボックスに入った代打・平沼翔太、キャリア通算打率.228の1.5軍級の左打者だった。

結果球は1-1からストライクゾーン真中低めに滞留したフォークだった。

試合後のヒーローインタビューで

「キャンプから田中さんにフォークを教えてもらってずっと試してきたんですけど、今日フォークがよかったかなと思います」

と手応えを深めた《快投を支えた新たな生命線》を右前へクリーンヒットにされた。

マウンド上の瀧中が打たせた打球17本のうち、唯一芯を食った打球である。

ふつうなら、どんな好投でも良い当たりが数本はあるもの。痛打されたけど野手の正面や守備範囲に収まり、快投は続いていく。しかし、この日の技巧派右腕が許した良い当たりは、まさにこの1本だけだった。

調べてみると、この日はフォークを21球投げていた。そのうち追い込む前に13球を使用。その13球中、西武打者がストライクゾーンのフォークにバットを振ってきたケースは3球あった。

1球目は5回先頭・愛斗の投ゴだ。フォークが内角に入ってくるのは想定外だったのだろう。いかにも窮屈そうなスイングでドン詰まりの瀧中正面。

2球目は7回2死で5番・マキノンに1-1から投じたフォークだ。これまた内角に入っていくフォークとなり、愛斗同様にマキノンも止めたバットに思わず当たるファウルになったもの。

そして3球目は平沼右安の結果球である。

前2球と違うのは、左打者のため内角に入っていく球ではなかったこと。身体の近くに迫って対応が難しくなる軌道ではなく、距離がとれやすくバットの出しやすい真中低めだったことが災いしたかもしれない。

もちろん打った平沼を褒めるべきだと思うが、タッキーもキャリアで2番目に多い123球だった。疲労から球のキレも序盤中盤と比べると落ちていた可能性もありそうだ。

あの雨の仙台プロ初勝利を超える好投に

とはいえ、素晴らしいピッチングでした。

Twitterにも書いたけど、僕の中での瀧中ベストピッチといえば、プロ初勝利をあげた2020年10/11西武戦。

あの日の楽天生命パークは断続的に強い雨が降り続くあいにくの悪天候だったが、メヒアに2点二塁打を弾き返される9回2死まで完封ペースの快投を披露。全体の29.5%でカーブを大胆に使用し、真っ直ぐもスピンが効いていたようで打ち上げたイージーフライが多く、当時の三木肇監督も「言うことなし」と称えたあの好投だ。

しかし、今回あのときを上回るベストピッチを見せてくれました。9奪三振はキャリアハイだ。

舞台となったベルーナドームは過去34.1回を投げて防御率4.46と決して得意にする球場ではなかった。それだけに、この鮮やかな変身ぶりには、驚いたというのが正直な本音だ。

試合展開

楽天=1番・山﨑剛(遊)、2番・小深田(三)、3番・伊藤裕(一)、4番・浅村(二)、5番・岡島(中)、6番・フランコ(指)、7番・島内(左)、8番・小郷(右)、9番・安田(捕)、先発・瀧中(右投)

西武=1番・長谷川(中)、2番・古市(捕)、3番・外崎(二)、4番・中村(指)、5番・マキノン(一)、6番・愛斗(右)、7番・鈴木(左)、8番・呉念庭(三)、9番・児玉(遊)、先発・隅田(左投)

両軍のスタメン

結果球は全てボール球

この日は初回から技巧派右腕の面目躍如だった。

ぜひお手元のスマホで速報サイトの配球チャートを確認することをおすすめしますが、上位3人を三者凡退に退けた15球のうち、ストライクゾーンに投じた球は4球しかなかった。

そのうち、真中近辺へ甘く入った球は1番・長谷川に投じた1球目と5球目の2球だけ。その甘い2球を逃した長谷川は外角低めボールゾーンのカーブで空三振だった。

続く2番・古市尊には6球勝負中2球で外角にしっかり決めるストライク投球を使ったが、最後は外角くさい球で誘ってバットの先での投ゴ、3番・外崎修汰に至っては3球全てボール球で左飛に退けていた。

このように、この日の瀧中は初回からストライクゾーンとボールゾーンを巧みに使い分け、さらに球種を複数投げ分けながら、打者を幻惑させていた。(ぜひ配球チャートの確認を! お時間ある方はVOD観戦してみてください)

瀧中の初回といえば、キャリア通算のイニング別失点で2回に続いて失点の多い鬼門の1つ。その難関を打者3人の結果球全てボール球で切り抜けたのだから、驚きしかない。

圧巻の6者連続奪三振

次に注目したのは6回。前半と後半のグラウンド整備が入った後の攻防である。

イニングインターバルがかなり空くこと、また相手打線も3巡目以降に入ってくることが多いため、投手にとっては立ち上がりと同じく難関の1つになる。

今季の瀧中もここまで4登板中2登板で6回に失点を喫しており、6回は10打数5安打2二塁打の成績だった。この日は・・・(続く)

...続きは『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2023』でどうぞ。

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2018年9月のGM就任から始まった石井体制も5年目へ突入。今年はGM職を外れて監督業に専念する総決算・集大成の戦いに。監督も「狙うのは優勝ですね。優勝以外を掴まされてもハズレ」と不退転の決意を示す今シーズンを試合感想文やコラムなどで綴ります。あなたの野球観戦の「良き伴走者」を目指して。月10回以上を所収。ただいま新規読者さん募集中!

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