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【戦評】初戦の布石がじわっと効いた、楽天勝利の「隠れた要因」~7/8○楽天12-8ソフトバンク

藤田の決定的すぎる仕事!

楽天がヒット13本、ソフトバンクも12本。両軍合計25安打20得点が入り乱れた乱打戦で勝利をワシつかんだのは、イーグルスだった。

打線はプロ初先発の左腕・笠谷から序盤2回までに7得点。

2回には4番・浅村がまたまた3ランを轟かせた(今季5本目)。はやくも9号となる一発は「球団タイ記録」となる4試合連続ホームラン。

主砲の効果的な一閃で7-1と6点差に広げた楽天だったが、この日は先発・涌井が5回6失点と誤算だった。3回には一挙4点を失っている。柳田の5号2ラン、打率1割~2割前半に低迷する下位打線に2本のタイムリーを許した。

ゲームの前半戦が終わったとき、時計の針は20時26分。前日は2時間51分で決着がついたのに、翌日は2時間26分を費やしながら5回を終えたばかり。涌井の球数も124球に達し、スコアも8-6と2点差まで肉薄される事態に陥っていた。

常勝軍団の執念をみせるソフトバンクの激しい追撃。その猛攻を振りきる貴重な3点が6回イーグルスに入った。

もらったチャンスを足掛かりに決めたダメ押し劇で、特に光ったのは藤田の活躍劇である。

1点入れて9-6とし、なおも2死2,1塁。打席が9番・辰己にまわったところで、三木監督が動いた。

2年目に代えて送り出されたのは16年目のベテラン。

前年の浅村に続き、今年は鈴木の加入でめっきり出番が減り、今や2013年V戦士に与えられた持ち場は、終盤の三塁守備固めと代打稼業だ。

そんな限られた難しい役どころで、ゲームの趨勢を決定づける一打を放ったところは、さすが藤田だ。3年前のパリーグ最優秀中継ぎ投手の2球目を捉え、左中間深部を襲う鮮やかな2点二塁打の大仕事になった。

結果球はスピードボール撃ち。7/2●E5-8Mでは代打で元楽天ハーマンの148キロを中前に弾き返した業師は、本戦では岩崎の150キロを攻略した。

僕が想像するに、敵軍投手の状態をつぶさに観察した「経験の賜物」が生んだ一打だったのではないか。

今季は久々に勝利の方程式の一角を任されてスタートした岩崎も、6/26・6/27西武戦で相次ぐ救援失敗と不安定な内容が続いている。本戦もその流れを汲み、四死球でピンチ拡大。

背番号6はそういう岩崎の現状を分析し、死球リスクを内包し安心して投げ切ることのできない内角はないと読んだのだろう。そして外角の速球に張っていた。僕はそう思っている。

一方、代打を送られた辰己は現状、スピードボールに弱い。

昨年は150キロ超えに対し、20打数5単打、12三振、3四球。当該53球でバットを振りにいくも、その41.5%に当たる22球で空振りを喫していた。今年も150キロ超えを弾き返すことができていない。

三木監督の代打起用には、そういう背景もあったかもしれない。これで今季チームの代打作戦は12打数4安打2打点、1二塁打2三振、1四球になった。

柳田に2発、売り出し中の栗原にもソロをかっ飛ばされたということもあったが、ともあれ逃げ切った楽天は首位固めに着々。涌井は打線の大量援護に助けられて2016年以来の開幕3連勝。

チーム成績は17試合12勝5敗の1位、貯金を今季最多タイの7に戻すと、2位・ロッテとのゲーム差は2.0へ。3位・西武とは3.5、4位で並ぶソフトバンク、日本ハムとは4.5、6位・オリックスとは6.5になっている。

◎両軍のスタメン

楽天=1番・小深田(遊)、2番・鈴木(三)、3番・ブラッシュ(指)、4番・浅村(二)、5番・島内(左)、6番・ロメロ(右)、7番・銀次(一)、8番・太田(捕)、9番・辰己(中)、先発・涌井(右投)

ソフトバンク=1番・栗原(左)、2番・今宮(遊)、3番・柳田(中)、4番・バレンティン(指)、5番・明石(一)、6番・松田(三)、7番・上林(右)、8番・甲斐(捕)、9番・牧原(二)、先発・笠谷(左投)

◎試合展開

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初戦に打った2戦目勝利への布石

敵地6連戦のアタマを落とした楽天は、じつは初戦で「2戦目勝利への布石」を打っていた。

千賀にエースの仕事をさせなかったこと。
5回94球でお役御免に追いやった点なのだ。

1イニング平均15球を目安とすると、5回は75球ペース。戦前に千賀の起用について100球が目途と発言していた工藤監督の談話から察すれば、順調な投球を許していたら・・・(続く)

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