ロッテ前指揮官・井口資仁も力量を認めた鷲の51番、小郷裕哉が採る“生存戦略”

小郷裕哉

「二軍では非凡なセンスを発揮する俊足好打の選手」と書いたSlugger名鑑の寸評。しかし大卒5年目の今シーズン、「二軍では」の注釈付きがいよいよ外れるかもしれない。

ここまで実戦13試合全てに出場。37打席で打率.367、OPS1.157を誇る。オープン戦に入ってもその勢いは衰えず、打率.375、OPS.1569だ。

とりわけ目を惹くのは、長打の多さ。ホームラン3本は現在チーム開幕前の本塁打王なのだ。

2/21○E11-5DBで見せたバックスクリーン弾は、1軍通算657回を誇る経験豊富な石田健太との左vs左を制したもの。
2/26●E9-13Sには相手バッテリーの配球を読んだ変化球狙い撃ちの右越えグランドスラムだった。
3/4●E6-9Fには新庄剛志監督の秘蔵っ子で右のサブマリン、鈴木健矢の甘く入った初球をしっかり叩いての右中本。いずれも内容が際立つ。

それらパンチ力のある打撃を見るたびに、僕は1/27楽天FMでのインタビューを思い出す。

「粘ってヒットを打つ右投左打の選手が多いので、そこと重複しないように自分なりの独自色をを出していきたい」

と抱負を語っていた。ご存じのようにイーグルスには銀次を筆頭に右投左打が多い。同じ土俵に乗るのはレッドオーシャンというワケなのだ。

おごちゃんならではの生存戦略だが、決して粘らないというわけではない。2/22○E9-6Dには11球粘った打席もあった。これは今季、楽天左打者が1打席で最も投げさせた球数だ。

アピールは打撃だけにとどまらない。守備・走塁でも必死さをみせている。

2/16○E5-1Sには一気に2塁を狙う打者走者をレフトからの2塁返球で補殺にする場面を作り、3/4には右翼ファウルゾーン塀際の右邪飛を好捕。フェンス激突しながらのアイスクリームコーンキャッチを演出した。

足では現在チーム最多3盗塁(失敗なし)。1塁走者の二盗が高い確率で成功しやすい3,1塁は含まないことを付け加えたい。

昨年までロッテを指揮した井口資仁さんは、小郷を「打てる力を持っているので、相手からすると、積極的にスタメンで使われるほうがイヤな気がします」と評価する。ポテンシャルは十分に1軍級なのだ。

外野のレギュラー争いは、島内宏明、辰己涼介の2枠は確定。残り1枠を争う構図だが、ライバルとなる岡島豪郎、西川遥輝はまだ2軍。このまま気を緩めることなく開幕まで突っ走ってもらいたい。

辰己涼介

1/11に実業家の鈴木セリーナさんとの結婚と第一子誕生を発表し、1/13にはアメブロブログを開設。頻繁に更新するブログでは環境問題も訴えるなど、新たな一面を覗かせ、人としての成長が著しい背番号8。

本業の野球でも目下26打数11安打、オープン戦に限っても14打数6安打と順調な調整が続いている。

特筆すべきは92.7%を誇るコンタクト率だ。

目下スイング41球のうち38球でコンタクトに成功し、バットに球を当てた38球のうち23球をインプレー打球にし、弾き返した23打球中11本がヒットになるという、高精度のアプローチをみせている。

ヒット11本の内訳を確認しても、球種は速球・変化球の区別なく、打球方向も左・中・右とほぼ均等。3/4には広大な札幌ドームのフェンス上段直撃のツーベースを2本放っており、他球場なら柵越えしていたのでは?という快飛球で、オフの肉体改造の成果を感じさせた。

今季は先発出場した全7試合で1番・中堅起用。石井監督は未来のトリプルスリーに今季イヌワシ打線のテーブルセッターを託す青写真を描くのだろう。

そこでだ。1番打者として重要な任務の1つに《塁上で投手に揺さぶりをかける役割》もある。その点、3/5○E5-4Fでは出塁後に複数牽制球をもらっており、投手に打者との勝負だけに集中させない状況を作ることはできていた。(その後に三振ゲッツーの二盗死が2つあったのは残念)。

いっぽう、気がかりは守備なのだ。

今年はグッズチームが「エリア無限大」タオルを製作しているらしいが、辰己の守備といえば、無駄のないルート効率で生み出された広大な守備範囲ともに、アマ時代から鳴らした強肩も魅力の1つだ。

しかし、3/4の・・・(続く)

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2018年9月のGM就任から始まった石井体制も5年目へ突入。今年はGM職を外れて監督業に専念する総決算・集大成の戦いに。監督も「狙うのは優勝ですね。優勝以外を掴まされてもハズレ」と不退転の決意を示す今シーズンを試合感想文やコラムなどで綴ります。あなたの野球観戦の「良き伴走者」を目指して。月10回以上を所収ただいま新規読者さん募集中!

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