【試合感想文】 6/8阪神4-6x楽天:生き返った小郷裕哉。緩急使いの辛島航

小郷裕哉の今後に注目

敗色寸前のなか、小深田大翔による個の力で今季4度目のサヨナラ勝利を飾った瞬間、小郷裕哉は泣いていた。

ダイヤモンドを一周してホームインしてくる「ストレートファイター」を出迎えるため、ワッと飛び出していく犬鷲ナイン。ひとしきり歓喜の輪が咲いた後、ベンチに引き上げていく際、涙たっぷりギョロ目の26歳を慰めていたのは、立正大学でともにクリーンアップを張った伊藤裕季也だった。

あの涙を見たとき、僕は2点リードの8回無死1塁に発生した右翼線沿いイージーフライを落球した小郷のエラーは、精一杯戦った上でのミスだったんだなと、当たり前のことかもしれないが重要なことを気づかされた。

人間だもの。いくら集中していても、どんなに闘志を燃やしていても、ときには信じられないミスは起きてしまう。

目下、背番号51にとって野球人生をかけた最大チャンスが到来中である。

神宮で2試合連続の猛打賞を決めた後、「今、めちゃくちゃチャンスなので。続けていけるように頑張ります。マインドはいい感じになっています」と報道陣に語ったオゴちゃんだ。燃えていないはずがない。

前日には西勇輝から二盗も決めた。クイックに長け、複数パターンの牽制術を持つ西勇輝からは、NPB通算197盗塁を決めたあの聖澤諒さんも盗塁企図すら1度もできなかった。そんな好敵手から二塁を盗んでみせたのだ。今季、58.2回を投げた西が許した盗塁企図・盗塁成功はわずかに2つ。そのうちの1つだった。

そして本戦では塁上に走者を残したまま降板した先発・辛島航の、火消しに入った二番手・安樂智大の窮地を救う好プレーがあった。

1点差に肉薄された7回2死満塁、近本光司の右飛だ。安樂の決め球、スプリットチェンジを狙われた打撃は右越え性の快飛球に。抜ければ走者一掃コースを、今年の年明けを華厳の滝で迎えた大卒5年目による背走半身からのジャンピングキャッチだった。

話を8回に戻す。落球エラーでピンチ拡大して無死2,1塁、4番・大山悠輔だ。現在セ界の打点ランキングのトップを独走する強打者の飛球は、右中間へ。

一見、無謀ともいえるダイビングキャッチを試み、その直前に着弾した球を弾いてしまい、2塁走者生還で3,2塁とピンチを上塗りしてしまったプレーも、下を向くことなくファイティングスピリッツに溢れていたからだと思う。

まあでも、小深田に救われるかたちになった。

上沢直之143キロ、隅田知一郎146キロ、松本航145キロ、小島和哉146キロ、澤村拓一153キロ、山下舜平太155キロ、近藤大亮145キロ、髙橋光成151キロ、伊藤大海149キロ、北山亘基148キロ、村上頌樹147キロ…

今シーズン数々の好投手のファストボールを仕留めてきた「東北の直球破壊王子」が、小郷を生き返らせた。

これで逆にオゴちゃんはギアを上げて、さらなるネクストステージに入っていくのかもしれない。

じつは小郷の1年目をまとめたnoteを2020年1月9日に書いている。

そこで僕は「もしこの新人4人が全く同じ打席数を与えられていたら、最も良い打撃成績を残したのは、じつは小郷の可能性も少なからずあったのでは?とすら思っている」と書いた。

今なおその思いは変わっていない。今後の活躍に注目だ。

試合展開

阪神=1番・近本(中)、2番・中野(二)、3番・ノイジー(左)、4番・大山(一)、5番・佐藤輝(三)、6番・渡邉(指)、7番・ミエセス(右)、8番・小幡(遊)、9番・梅野(捕)、先発・伊藤(左投)

楽天=1番・辰己(中)、2番・小深田(二)、3番・小郷(右)、4番・浅村(指)、5番・岡島(左)、6番・フランコ(三)、7番・阿部(一)、8番・山﨑剛(遊)、9番・太田(捕)、先発・辛島(左投)

両軍のスタメン

カーブが冴えた!

今季初登板・初先発の辛島は2019年9/7西武戦以来の本拠地勝利の権利を手中に収めた、みごとなピッチングになった。

早川隆久が覚醒の予感を漂わせ、藤平尚真、荘司康誠、松井友飛ら若手が台頭する先発の台所事情。そして世代交代がなかなか進まずに最下位に沈んでいる今のチーム状況を考えると、辛島も今後自分に与えられる機会はそんなに多くはないと覚悟を決めていたはずだ。

相手は飛ぶ鳥を落とす勢いの岡田阪神。指揮官による「おーん」の一声で選手が躍動しセ界に君臨するタテジマだ。そこでどんなパフォーマンスをみせてくれるのか?

先頭エラーに見舞われ・・・(続く)

...続きは『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2023』でどうぞ。

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2018年9月のGM就任から始まった石井体制も5年目へ突入。今年はGM職を外れて監督業に専念する総決算・集大成の戦いに。監督も「狙うのは優勝ですね。優勝以外を掴まされてもハズレ」と不退転の決意を示す今シーズンを試合感想文やコラムなどで綴ります。あなたの野球観戦の「良き伴走者」を目指して。月10回以上を所収。ただいま新規読者さん募集中!

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