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【戦評】鷲のランディ・ジョンソンがクリアしたプロ初完封への「4つの関門」~7/30○楽天2-0日本ハム

懲罰ショックを救ったニューカマー

先週の日曜日、敵地マリンで交戦中の鷲軍に激震が襲った。
8月の優勝戦線が間近に迫るなか、『主将』と『次世代正捕手候補』がゲーム序盤に不可解な交代。

SNSを中心に波紋を巻き起こした平石監督による懲罰交代は、就任以来「選手ファースト」の環境を作ることに腐心してきた青年監督と全く同じ人物か?!という疑問符つく采配になった。

試合結果も3-4のサヨナラ負け。

ロッテの5安打に対し、楽天は倍以上の12安打を記録。
にもかかわらず、ロッテのマクレに飲み込まれるかたちになった。

後半戦最初の山場になる9連戦は、ともすればチームが瓦解しかねない不穏な雰囲気を抱えたまま迎えることになったわけだ。

その初戦の本戦スタメン、案の定、島内とブラッシュの名前がない。
島内は7/26ロッテ戦(○E6-3M)の走塁時に右手首を負傷。
JBも日曜日の走塁時にハムストリングスを痛めていた。

外野布陣は、レフト和田、センター下水流、ライト渡辺佳。
他球場よりも二三塁打が出やすい札幌ドームでは外野守備に不安を残すラインアップになった。

相手先発は吉川だ。

楽天打線の打率が右投手に.262を残すのに左投手は.222しか打てない弱点を狙い、6月下旬にトレードで3年ぶりに古巣に戻った左腕をぶつけてきた。

第2戦目もサウスポーの加藤と栗山監督らしい采配。
今年の加藤は楽天戦に強い。
5試合13イニングを投げて防御率0.00、被打率も.182に抑えている。

楽天の先発は則本だが、もし初戦を落とすようなことになると4連敗もありえる展開も想像できた。

そんな平石楽天の苦境を救ったのが、ニューカマーの活躍だ。

プロ初登板の4/4日本ハム戦(○E11-2F)、勝利投手の権利まであとアウト2個に迫りながら、勝敗つかずの5回途中1失点で悔しさを味わった弓削。

4ヵ月ぶりの1軍舞台に「まずは5回投げきること」と口にした弓削が、それ以上の、お釣りがくるほどの快投で117日ぶりのリベンジに成功。

結果は9回2安打無失点、4回以降はヒットを許さず、与四球も1個のみ。

球宴明けの後半戦、パリーグ1位のチーム打率.272で9勝2敗と躍進するファイターズを今季最少の1試合2安打に抑え、プロ初完封勝利の大仕事で念願のプロ初勝利をあげてみせた。

2-0の決勝点はシーズン途中加入のトレード組がもたらした。
2回、吉川の失投ストレートを和田が右越二、下水流が右翼ポール際へ運ぶ移籍後初のホームラン。

9連戦の初戦を素晴らしいかたちで飾り、同日敗れた1位・ソフトバンクとのゲーム差も再び4.5へ肉薄。
翌日のエースへ最高のバトンを渡すことができた。

両軍のスタメン

楽天=1番・茂木(遊)、2番・山崎(三)、3番・浅村(二)、4番・ウィーラー(指)、5番・銀次(一)、6番・和田(左)、7番・渡辺佳(右)、8番・下水流(中)、9番・太田(捕)、先発・弓削(左投)

日本ハム=1番・西川(中)、2番・大田(右)、3番・近藤(指)、4番・中田(一)、5番・渡邉(二)、6番・石井(三)、7番・杉谷(左)、8番・宇佐見(捕)、9番・中島卓(遊)、先発・吉川(左投)

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客観的にみれば、勝てる気がしない試合ですよ

零封勝利は5/1ソフトバンク戦(○E9-0H)、7/20ソフトバンク戦(○E1-0H)に続く今シーズン3度目の快挙になった。

それにしても、改めて思うと「よく勝ったなあ!」という2時間44分の好ゲームである。

下記を音読してほしい。

JBと島内の主戦級を2名欠く布陣だった。
前述どおり外野は守備に不安を残す面々。

全試合出場の浅村も3回打席に右足首へ自打球を受け、6回守備からベンチに退く苦しい展開。

4番に入ったウィーラーは4タコ。
3戦連続マルチ安打と好調の茂木もキャリア通算4度目の4三振とタイミング合わず。
終わってみれば、吉川、公文の敵軍左腕に対し、18打数3安打の打率.167に終わった楽天打線。

こう書くと、とても勝ちゲームには思えないはずだ。

そのなか、鷲のランディ・ジョンソンが躍動した。

ここから先は弓削の快投について振り返ってみたい。

9回、打者29人、球数101、被安打2、被本塁打0、奪三振4、与四球1、与死球0、失点0、自責点0。

ゲーム前の懸案を払拭した新人コンビ

試合前、ぼくには一抹の不安があった。

本戦コンビは太田と組む新人バッテリー。
試合後のヒーローインタビューで「ファームでよく組んでいたので、落ち着いて投げられた」と女房役をねぎらった弓削だが、実際の数字上はかんばしくなかった。

◎弓削隼人 2軍 投手成績

2軍で3勝0敗、防御率2.93の好成績を刻み、直近3戦7回自責ゼロの弓削。
その成績を詳しくみると、上記表のとおり、ここ最近の快投は石原、嶋、岡島と組んだもの。

太田と組んだ4試合は防御率5.82、被OPS.949、被打率.328と打ち込まれていたのだ。

その苦い戦績は太田のほうが強く記憶に残っていたようで、試合後、取材陣に「ファームの時も含めて、今日が一番うまくいきました」と口にしている。

太田による先発投手を完封勝利に導いたリードは、2軍イースタンでもなかったので、本戦がキャリア初になった。

 逆球と高めの削減に成功した圧巻の制球力!

4/4日本ハム戦の投球と比べると、制球力が格段に素晴らしかった。

与四球も前回は4.1回で3個に対し、本戦は9回投げ切ってわずか1個のみ。
193cmの長身で手足が長いと、どうしても制球面で課題が出てくる。
実際、ファームでは9イニング当たり平均5.85個の四球を与えていたが、この日は5回1死、杉谷に与えた1個にとどめた。

逆球も少なかった。
捕手のミットとは全くの正反対に到達した球を逆球とすると、逆球率は前回、、、

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