20190308NOTE表紙

【戦評】投打の軸が躍動。4番JB4打点、 岸「理想の20球」─ 3月8日○楽天7-1阪神

激震のなか手繰り寄せた快勝劇

平石楽天は今日から倉敷でオープン戦3連戦。
その初戦に阪神を迎え、昨季のセパ最下位対決を戦った。

ゲーム前、悲報が舞い込んだ。

週明け月曜日、状態不良で2軍調整中の則本昂大が右肘にメスを入れるという。
スポニチいわく「クリーニング手術」で「前半戦は絶望的」と報じられた。

選手たちも相当ショックのはず。
チームに激震が走るなか、闘志を1つにしたのは楽天だった。
ともに今季は最下位からのRESTARTを切る両軍だが、そんな矢野阪神を、投打かみ合う7-1の快勝でくだした。

これで対外戦成績は6勝4敗1分とし、オープン戦は3戦全勝だ。
オープン戦は2/23の開幕以来、ロッテとともに首位を快走。
土日は昨年のパ覇者・西武を迎えての2ゲームシリーズが予定されている。

両軍のスタメン

阪神=1番・木浪(三)、2番・近本(三)、3番・糸原(二)、4番・陽川(一)、5番・北條(遊)、6番・中谷(右)、7番・伊藤隼(左)、8番・梅野(捕)、9番・荒木(指)、先発・望月(右投)

楽天=1番・島内(左)、2番・オコエ(中)、3番・浅村(二)、4番・ブラッシュ(右)、5番・銀次(一)、6番・ウィーラー(指)、7番・内田(三)、8番・嶋(捕)、9番・藤田(遊)、先発・岸(右投)


虎のホープから7点を奪取!

2時間58分の戦況は、楽天が初回から主導権を握った。

響く快音に相手拙守、さらに意表を突いた機動力を絡めて奪取した3得点だ。

1番・島内宏明のセンター返しで始まったこの回、中軸が長短連打で躍動した。
背番号3の当たりは右前単打コースだったが、ライト中谷将大がチャージしすぎ。
捕球しきれず直前に着弾した打球を後逸、この間に悠々と1死3,2塁のかたちを作った。

お膳立て整い、JBの左安が2点先制打に。(E2-0T)
その後の1死3,1塁では鮮やかに重盗作戦が決まり、3アウトの直前に3点目が入った。

1死3,1塁、ウィーラーvs阪神先発・望月惇志の勝負はフルカウントにもつれていた。
結果球で一走・銀次がスタートを切る。

ウィーラーはあえなく空三振に倒れて2死になったものの、銀次の陽動作戦に釣られた捕手・梅野雄太郎は2塁へ送球。
それを見て1,2塁間で銀次が時間稼ぎ。
銀次がランダンアウトになって3アウトになるよりも先に、ブラッシュが3塁から労せずしてホームに帰ってきた。

翌2回も阪神先発・望月を攻めたイヌワシ打線。
四球を絡めてチャンスを広げると、島内のタイムリーなどで2得点。(E5-0T)

4回も望月から2四球を絡めて1死満塁を作ると、JB本日2本目のタイムリーが2点打に。(E7-0T)

望月といえば2/14阪神戦(●E2-5T)では打者11人で村林一輝の1安打のみに封じられた。
そんな虎の若手有望株で本戦最速153キロをマークした長身右腕にリベンジできたのは収穫と言えそうだ。

舌巻くJBの圧巻技術

圧巻だったのは、3安打4打点で実力を誇示したJBだ。

1回1死3,2塁の1打席目は、0-2からの3球勝負を制した。

初球速球で見逃し0-1。
2球目はフォークを低めに落とされ、空振り0-2。
この後、もう1球続けて投げてきたフォークを仕留めた。

直前球と比べて落差なくストライクゾーンに滞留したフォーク。
その失投を完璧なコンタクトで左前へ弾き返したのだ。

2打席目も2-2と追い込まれていたが、148キロ速球に力負けせず、押し込んだ打球が右中間を襲うツーベースに。

4回1死満塁では望月の131キロスライダーをコンパクトに応戦。
ショート右を射貫くセンター返しで走者2人をホームに呼び込んでいる。

本塁打20~30本を見込める強打者ながらも、そのスイングには粗さがない。
超弾道と高いミート力を兼備し、異なる球種を左・右・中と広角に打ち返すテクニックに、ライバル球団の007も驚きを隠せないのでは?と思う。

これで23打席になったJBの対外戦成績は18打数8安打6打点、3三振、4四球、1死球、2本塁打、打率.444。
胸熱なのは、依然として四死球が三振を上まわる点なのだ。

開幕前の風物詩

初回1死3,2塁、ウィーラー空三振時の重盗作戦からの3点目は、鮮やかだった。
目を奪われる一幕だが、一方でオープン戦仕様の“あるある”なのも事実だ。

楽天は例年、開幕前にこうしたダブルスチールを仕掛け、捕手の2塁送球時に三走が本塁を陥れる例がある。

たとえば、2017年は2/28ソフトバンク戦の5回2死3,1塁で記録している。
今は鷲戦士になった山下が2塁へ投げている間、三走・岡島がホームに生還した。

2018年は3/18広島戦の2回2死3,1塁。
三走・オコエが2塁からの本塁返球を間一髪制した。
リクエスト判定にもつれこみながらも、好走塁で点をもぎ取るシーンがあった。

しかし当該場面、シーズン中なら捕手は2塁送球しないケースが多い。
最優先で警戒すべきなのは、本塁突入をうかがう3塁走者の動静だからだ。
そのため、捕手はほぼほぼ投げないのだ。

たとえば、昨年の楽天戦、当該状況で両軍捕手が2塁送球したのは31回中わずか4回である。
2塁へ向けて送球したとしても、投手が途中でカットするサインプレーの場合も多い。
そのため、送球が2塁まで到達したケースはさらに少なくなる。

本戦のように3塁走者のケアをせず、むやみやたらに2塁へ投げてしまうのは、この時期ならでは。
シーズンに向けて色々試すことができる場で、レギュラーの確約がなく、1軍当落線上の選手が功名にはやりミスを犯す「開幕前ならではの風物詩」なのだ。

1軍当落線上の選手が功名に云々は、6点リードの6回2死1塁、一走・近本を指すべく山下が繰り出した1塁牽制が悪送球になり、一転、2死3,1塁になったシーンでも言える。

大量点差の2死だ。
打者を打ち取れば済む話である。

送球の精度に不安を抱える捕手ならシーズン中ならまず投げず、打者との勝負に専念する場面だと思う。
にもかからず投げたのは、サバイバルを繰り広げるオープン戦だからだ。

同様に、3回無死1塁、伊藤隼による二盗も同じパターンだ。
昨年高い精度を誇った嶋の2塁送球が1塁側へ大きく逸れて、ベースカバーの遊撃・藤田は捕球だけで精一杯というシーンだった。

これもシーズン中にはまず仕掛けてこない。
この時点で阪神は6点を追う大量ビハインドの状況だった。
リスクの高い盗塁を大負けの展開で採用するケースは滅多になく、その意味でもこの時期ならではなのだ。

島内、得意技の吉兆2安打

ブラッシュの3安打に続く快音を飛ばしたのは、島内。
この日、午前中の練習で誤って内田のユニフォームを着用して臨んでいた。

洗濯に出して戻ってきた自分のユニの中に内田靖人のものが紛れており、誤って着用したという。
周囲に指摘されるまで気づかなかったというところが、天然タイプのこの人らしい。

そんな島内が持ち味を発揮し、鋭い当たりを2本飛ばした。

1本目は望月の147キロ速球を痛烈ピッチャー返しで中前へ。
2本目は未見の初球120キロのカーブを右翼線へ運ぶツーベースをみせた。

例年145キロ以上のスピードボールとカーブに強いのが、この人の特徴だ。
昨年も145キロ以上で打率.301、遅球で打率.429のアベレージを残している。

1軍本隊が台湾遠征しているとき、島内は宮崎で11打席ヒット1本と快音から遠ざかっていた。
それだけに、この2安打を起点に調子を上げ、3週間後の開幕に合わせて欲しいと思う。

内田を悩ませる「前年の亡霊」

一方、キャンプ疲れが顕在化しているのかな?と思われるのが、内田だ。

2打席連続ホームランを放った2/25広島戦までは26打数8安打6打点、5三振、2二塁打、2本塁打と好調だった。

ところが、台湾遠征の2/28ラミゴ戦以降は9打数0安打、5三振。
本戦も、空三振、空三振、空三振、三ゴの4タコ。
これで直近13打席ノーヒットになった。

振るべき球と我慢すべき球の選別が上手くいっていないと思う。
本戦では10球スイングし、5球で空振り。
スイングをかけなかった11球中、見逃しストライクを奪われたのは5球と、どちらのアプローチでも不利だった。

内田の場合、「前年の亡霊」との勝負にもなる。

ご存じのように昨年は打率.386でオープン戦の首位打者に輝いた。
同51打席で4本のホームランも放つ充実のスプリングトレーニングを送った。

昨年の自分自身と比較し、それで落ち込んだりナーバスになったりして、ますます調子を落としてしまう。
そういったことがないよう、調整を進めていってもらいたい。

岸がみせた圧巻の理想ストライク20球

非常事態のただなか、初の開幕投手に任命された王子・岸は、本戦も危なげなしの67球だった。

前日報道陣に宣言していたとおり、持てる球種全てを駆使しての調整登板になった。

ストレート23球(34.3%)
スライダー11球
チェンジアップ17球
カーブ16球

それにしても、5回2安打3三振1失点は、正直、岸にとって「良き調整の場」になったかどうか・・・
つまり、相手が弱すぎたのでは?と心配するほどなのだ。

阪神はここまでのオープン戦4試合でチーム打率.200と打線が低迷。
得点も1試合平均1.75にとどまり、御多分に漏れず本戦も31打数4安打で1得点だった。

という相手事情はあったものの、素晴らしいピッチングだったと思う。

秀逸は73.1%の高いストライク率もさることながら、67球の29.9%に当たる20球で記録した見逃しストライクの圧倒的な多さだ。

打者にバットを振らせずにストライクを取る投球こそ、最も安全で理想と言える。
岸はこの技術に長けている。

たとえば、昨年の見逃しストライク数、岸496球、則本502球だった。
ほぼ同数だが、投球回は岸159.1回、則本180回。

岸のほうが約20イニングぶん少ないのに、見逃しストライク数は則本とほぼ同数なのだ。
それだけ制球が良く、打者の狙いを欺く術にも長けていると言える。

本戦で奪った2個の見三振(2回陽川と4回北條)もいずれも打者に1度もバットを振らせず、3つのストライクを全て見逃しで奪った見三振と、持ち味を発揮してくれた。

これで岸の対外戦成績は、8回、打者28人、球数111、被安打4、被本塁打0、奪三振7、与四死球0、失点1、自責点1になっている。【終】

・・・というような試合評を今シーズンもnoteマガジン『楽天ファンShibakawaの犬鷲観戦記【2019前半戦】』に50本以上綴っていく予定です。単売1本150円ですが、定期購読がオススメ! ご登録は下記からどうぞ!


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