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【試合感想文】 7/5オリックス1-6楽天:荘司康誠チームを救うプロ初白星。フランコ苦手球を技ありの先制二塁打

投打かみあった雨の3時間13分

東京ドームで田中マー君大炎上から一夜明けた翌日、戦いの場を仙台に移したオリックス12回戦は、未来のエース誕生を目撃する3時間13分になった。

12球団最多得点を誇る強力打線を相手に、6回までゼロを並べ続けてプロ初勝利を鷲掴んだ先発・荘司康誠の好投に、打線が応えて先制、中押し、ダメ押しの理想的な加点で援護。

守備ではカメラマン席のひさしに激突しながら三邪飛をもぎ取った村林の好捕もあるなど、ファンの溜飲を下げる好ゲームをみせてくれた。

楽天打線は3試合連続の二桁安打。これは今季初の3連勝を飾った4/29西武戦(10安打)、4/30西武戦(12安打)、5/2ロッテ戦(10安打)に続く今シーズン2度目だ。

ドラ1右腕がある程度の好投することはわかっていた。

というのは、ここまで先発8試合でHQS1度、QS2度、それ以外の5試合でも5回2失点が2度、6回途中3失点が1度などゲームは作っていた。早期降板を余儀なくされたのは、東京六大学で慣れ親しんだ神宮で制球難に陥った6/4●E2-5Sだけ。現にプロ初白星の権利を3度も手中に収めていたのだ。

もっとも6回無失点は僕の想像をはるかに上回る出来だったのだが、そういうわけで、この日は打線が援護できるか?リリーフ陣が逃げ切れるか?に戦前は注目していた。

橋頭堡を作った岡島豪郎の四球と激走生還

やはり、2回の3点先制劇がモノを言ったかなと思う。

立ち上がり、荘司が自己最速タイ153キロを計測し、思いきり腕を振って全力で飛ばしている感があったのに対し、相手先発の宮城大弥は制球安定、腹八分、リズム良しで楽天打線は打たされゴロ3本を計上していた。

しかし、2回だった。宮城に異変が生じる。試合開始直後から落ち始めた降雨が雨脚を徐々に強くしたこのとき、球界を代表する若き左腕の手元が狂った。

1死走者なしから橋頭堡を築いたのは、5番・岡島豪郎。
フルカウント7球勝負、高め際どいスライダーを看破して四球をもぎ取ったのだ。

今季ここまで宮城の与四球率は1.61。左打者112人と対戦して四球4個にとどめる精緻ぶりをみせていた。いっぽう、岡島は直近31打席でフォアボールはゼロ。この間の出塁率.129と苦しんでいた。

しかし、ここはよく看破したと思う!

結果球に手上がらず四球になったときのマウンド上の21歳左腕が口を真一文字に結ぶポーカーフェイスを装いながらも、微妙に悔しさが入り混じっていたのを目撃したのは、僕だけではなかったはずだ。

足がかりを作った切れ長の目の持ち主は、直後フランコのツーベースで一気に生還!

じつは今季も楽天のベースランニング成績は、ふるわない。

たとえば、外野単打時の2塁→本塁はパリーグ最低の50.8%。
外野単打時の1塁→3塁は22.6%しかなく、これは前年の31.3%を大きく下回っている。
ちなみに近年走塁巧者として鳴らすロッテは37.3%を記録している。
外野フライ時の3塁→タッチアップ本塁も68.4%とものたりない。

ところが、外野二塁打時の1塁→本塁は47.8%を記録するのだ。
ちなみにロッテは39.1%、ソフトバンクは27.6%だから、この局面に限って言えば、楽天の値がいかに良いかわかると思う。

Whiff%で42.6%を記録した苦手球だった

この試合、二塁打が今季最多タイ4本も飛び出したところが収穫だった。

2021年以降、楽天の二塁打は3年連続でリーグ最少。2018年もリーグ最下位だった。中距離打者の素質を持つ選手や、パンチ力と脚力を備える選手は多いものの、二塁打という結果にはなかなか結び付いてこない現実があった。

楽天が中日の要請に応じて涌井秀章との交換で阿部寿樹を新戦力に迎え入れたのも、前年に31二塁打を記録したその打力を評価してのものだった。しかし問題は解決されず、今季も二塁打最少なのだ。

そのなか、フランコ、辰己涼介、伊藤裕季也で計4本を量産。

なかでも来日初のお立ち台に登ったフランコの先制ツーベースだ。
0-2と早々に追い込まれたなかでの外角低めチェンジアップを片手1本でひろう技ありで左中間を切り裂いた。

じつは、ミドルネームをアントニオという新助っ人は、左腕のチェンジアップを苦手にしていた。

ここまで当該成績は、21打数4安打、1本塁打、6三振、1四球、打率.190。スイング47球で空振り20球を喫するほど「合わない球種」。あの打席でも初球に投じられて空振りしていただけに、よくぞ身体が残って対応したと思う。

スタメン33試合中25試合は相手先発左投手のとき。左投手対策で起用された伊藤裕は・・・(続く)

...続きは『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2023』でどうぞ。

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2018年9月のGM就任から始まった石井体制も5年目へ突入。今年はGM職を外れて監督業に専念する総決算・集大成の戦いに。監督も「狙うのは優勝ですね。優勝以外を掴まされてもハズレ」と不退転の決意を示す今シーズンを試合感想文やコラムなどで綴ります。あなたの野球観戦の「良き伴走者」を目指して。月10回以上を所収。ただいま新規読者さん募集中!

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