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【戦評】藤平を死地に追い込む「メガネの太田」のインコース特攻~8/5●楽天1-8ロッテ


※本稿はnote全文公開中。最後までお楽しみいただけます。

藤平2656回転は驚異の最高値!

1勝1敗1分で迎えたロッテ4連戦のゆくえは、5位・ロッテに軍配が上がっている。

楽天は4回に拙守と不運に見舞われたのが、痛恨だった。

先発は約4ヵ月ぶりにチャンスを与えられた藤平。

ゲーム後、平石監督が評価したように、春先の不調から脱っして本来の姿を取り戻しつつある過程を確認できる内容だった。

とにかく春先は投球フォームが固まらなかった。
そのため、自慢の速球も走らず、ぼくらファンも悶々。

当該の平均球速は3/31ロッテ戦(○E9-4M)139.1キロ、4/7オリックス戦(△E5-5B)137.8キロといずれも140キロ未満だったが、本戦は141.5キロと復調気配をみせた。

トラックマンデータも圧巻だった。
たとえば、1回3番・鈴木を外角ズバッと見三振に取った本戦最速147キロのストレート。
このとき、驚異の2656回転を計測。

この3年間、中継で紹介される楽天投手のトラックマンデータを、できる限り集計してきた。
そのなかで2656回転は最高値に躍り出たのだ!

好投藤平のリズムを崩した不運の連続

大器の片鱗を垣間見せた藤平は序盤3回まで1失点と好投したが、翌4回に「拙守」と「不運」から崩れてしまった。

鬼門になった4回は、ちょうど薄暮だった。

現役時代は好守でチームに貢献した解説・阿部俊人さんもそのことを指摘。
「高いフライは見づらいでしょうね」と懸念を表明した矢先、その恐れていたハプニングが発生した。

先頭の2番・マーティンは打ち取った当たりだった。

しかし、右翼前方に打ち上がったイージーフライを、ライト渡辺佳が打球を完全に見失う。
この日1軍再登録された田中がセンターから長駆、必死に追いかけたものの及ばずにポテン。
これが二塁打になった。
(平凡飛球をポテンさせ失点につなげた守備ミスは9回に浅村も犯した)

切り替えていきたいところ、不運が藤平に追い打ちをかけてくる。

続く3番・鈴木は遊撃定位置へのボテボテ。
これも詰まらせて仕留めたゴロアウトコース。

しかし、走者2塁のため、茂木が2塁寄りの守備位置をとっていたこともツキがなかった。

2塁牽制時にベースカバーに入ったり、2塁走者の本塁生還率が最も高まる中前ゴロ安打を阻止する意味合いもあり、当該状況でショートは2塁ベース寄りにポジショニングをとる。

そのため、通常なら遊撃定位置付近の打球も、茂木からみれば、かなり左の打球になる。
茂木もいっぱいいっぱい処理して1塁送球したが、タイミングは間一髪。
1塁塁審の判定はアウトだったが、敵軍リクエストで判定が覆る内野安打になり、無死2,1塁。

このダブル不運に藤平のリズムも乱れ、4番・レアードには死球。
ノーアウト満塁になり、そこから2失点を喫した。

続く5回には9番・三木に2号ソロを被弾。
なおも死四球で塁上をにぎわせると、回途中で降板。
マウンドを二番手・小野に譲ったが、その小野も火消しに失敗。

ズルズル失点を重ねて、結局、1-8で敗れ去った。

後半戦の得点力、楽天はパ最下位

ロッテは新外国人マーティンが戦列に加わった後半戦、強打の西武にひけをとらない得点力をみせている。

後半戦の1試合平均得点は下記のとおり。
前半戦3.51だったロッテは5点台。
一方、楽天は主戦級が疲労でパフォーマンスを落とす影響もあり、3.22とリーグワーストと打線がふるわない。


西武5.29
ロッテ5.13
日本ハム4.47
オリックス3.94
ソフトバンク3.67
楽天3.22


これで4位に後退、5位・ロッテにゲーム差1.0に肉薄される事態になった。

チーム成績は100試合49勝48敗3分とし、ロッテ戦は3カード負け越しの6勝10敗1分へ。
1位・若鷹軍団とのゲーム差は5.5に広がっている。

両軍のスタメン

ロッテ=1番・荻野(中)、2番・マーティン(右)、3番・鈴木(二)、4番・レアード(三)、5番・角中(左)、6番・清田(指)、7番・井上(一)、8番・田村(捕)、9番・三木(遊)、先発・西野(右投)

楽天=1番・茂木(遊)、2番・渡辺佳(右)、3番・浅村(二)、4番・島内(左)、5番・ブラッシュ(指)、6番・銀次(一)、7番・ウィーラー(三)、8番・太田(捕)、9番・田中(中)、先発・藤平(右投)

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藤平を死地に追い込む、メガネの太田の誤った配球

拙守や不運に足を引っ張られても、もちろん投手が粘るべき。
なんとか藤平には踏ん場って欲しいと祈っていた。

しかし、あの状況は、あまりにも気の毒すぎ。

「後半戦も中盤に入ってきて、チャンスは少ない」
「自分の中で、今シーズン一番大事なチャンスだと思っている」

戦前、強い抱負を口にした藤平にとっては、まさかの結果。
情状酌量の余地大のため、セカンドチャンスを与えてほしいと願う。

拙守と不運で無死2,1塁とした直後、さらに追い打ちをかけたのは、またしても味方だった。

今度の実行犯は、メガネの太田。

本来なら女房役として投手を盛り立てるべき存在が、この日は投手を窮地に追い詰める役どころを担ってしまった。

鈴木のボテボテによる敵軍リクエストは、かなり時間のかかるリプレー検証になった。

井口監督がベンチを出て四角いジェスチャーでリクエスト要求し、ビデオルームから審判団が出てきて責任審判・西本がセーフのジャッジを示すまで、ちょうど5分。
当該ルールの最大時間を費やす検証になった。

やきもきと待たされる身の投手にとっては、まさに心宙ぶらりんの『魔の5分』。
その直後、再開された初球のことだった。
メガネの太田の構えたミットは内角にあったのだ。

確かに強打者の4番・レアードを抑えるためには、内角は必要。
心地よいスイングをさせないインコース厳しいところを攻めることは、間違いではない。

しかし、状況がマズい。

打ち取ったはずの2本の打球がセーフ。
2アウトのはずが、よもやの無死2,1塁ピンチに。
投手にとっては動揺隠せない状況下、『魔の5分』直後の初球である。

落ち着きを取り戻すため安全に入りたい場面で、失投リスクの高いインコースにいきなり要求とは・・・
投手心理を全く考えていない配球と厳しく指摘せざるを得ないのだ。

心の揺れが収まらないなか、死球リスクと長打リスクと表裏一体のインコースに、精度良く投げ込むことは、かなりのハイレベル。
1軍主戦級投手でも難作業なのに、ましてや藤平は1軍と2軍を往来する立場である。
結局、ぶつけてしまっての無死満塁は、配球がアレだから仕方ない部分も多い。

このように、この日の太田は、投手にとっては不利な状況での内角要求が多かったのだ。(下記表参照)

◎太田が藤平、小野に要求した右打者内角配球

当該14球の内角要求、その直前カウントを確認してほしい。
57.1%に当たる8球が、打者有利のボール先行カウントからの内角要求になっていた。
投手にはタフな局面でのインコース使いが多かったのだ。

話を戻すと、その後、5番・角中に左犠飛を許して1死3,1塁へ。

打席には6番・清田。
フルカウント9球勝負は最後、外角を狙った速球が力んで完全に外れ、再び満塁にしてしまう四球になっが、この9球勝負でも太田による内角要求が合計3球もあった。

初球、2球と立て続けに内角要求。

レアード死球直後のため、ぶつけてはいけない。
これ以上の失点は許されない場面のため、外野に打球を運ばれたくないため甘くもできない。
当然、ボールになる確率は高まってしまう。

案の定、2球連続でボールになり2-0に。
3球目は2度首を振って外でストライクを稼いだが、2-1からの4球目は再び内角要求。

これがひっかかったのか。
太田のサインを嫌って外にいったのか。
ともあれ、外角低めへの逆球になってボール。

内角要求3球がことごとくはずれ、カウントを3-1にしてしまった時点で、もはや四球だろう。

再び塁上埋まり1死満塁。
6番・井上への初球も、またまた呆れてしまう内角要求。

ここまでくると、もはやぼくのお口はあんぐりである。

ただでさえ前述したように、不遇のピンチ。
そこへ1打席目に一発放った打者が打席に入って、初球に内角要求。

動揺の上に動揺を上塗りするような不可思議サインで、威風堂々と冷静沈着に内角に投げ切れるわけがない。
満塁のため、ストライク先行でいきたくなるもの。
どうしても中へ中へと入ってしまう局面だ。

案の定、太田の内角ミットよりストライクゾーン真中寄りに入った制球不如意に。
これを簡単に打ち返されての中犠飛にされた。

この日も仙台は最高気温30.7度を計測。
夜になっても日中の蒸し暑さが居座るなか、藤平の顔は大粒の汗だらけ。
過酷な気象条件も藤平のパフォーマンスを下げる一要因になったと思う。

難条件がいくつも重なるマウンドだったのに、女房役のサインまでも難解なものになってしまった。
結局、太田の内角要求は、マウンド上が藤平から小野に代わっても変わらず。

火消しに入った小野の立ち上がり、5回1死2,1塁、レアードに出した四球も、太田の内角要求2球がいずれも外れるかたちになった。

結局、太田が出した内角要求14球中、ボールや死球、被弾や2ストライク以降の粘られファウルなど投手不利の結果になったのは、じつに11球にも及んでしまったのである。

本戦、拙い守備も多々あるなか、ぼくが一番拙いと思ったのは、以上のとおり、メガネの太田の配球だった。【終】

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