20191114島内表紙

【2019総括】島内宏明 ── 鷲ファンも気づかない「和製AJ化」への道

※本稿はnote全文公開、最後までお楽しみいただけます。
※楽天主要選手の2019年を『文字数1,600字』で振り返るシリーズ7回目。

球団記録を作った「うなぎのぼり」の後半戦

倉敷キャンプも最終日を迎え、プレミア12も佳境へ突入。ファン感謝祭も11/24に迫り、年に1度の謝恩行事が終わると、話題も契約更改へ。仙台にも初雪シーズンが到来する。

そのなか、今オフの査定で「絶対に1億円プレーヤーの仲間入りをしてほしい!」と僕が強く願う選手は、『うなぎのぼり』の35番。

今年はオールスター明けに打率.344/OPS.929の活躍をみせると、母校・星稜高が準Vを飾った夏の甲子園の開催期間中は54打数21安打の打率.389、結局8月は38安打を量産し『楽天の月間最多安打記録』を塗り替えた島内だ。

2017年から年俸は3,300万円→5,500万円→7,800万円。2,200~2,300万円の上げ幅でアップした。今年は復活三部作の上をいく『事実上のキャリアハイ』を残したため、十中八九で1億円突破は確実と期待したい。

組織を助けた活躍劇

1番15試合、2番53試合、3番6試合、4番47試合、5番と6番が各4試合、7番3試合。開幕4番を皮切りに様々な打順を任された今年は、『他者を活かし、組織を助ける1年』になった。

年齢的、キャリア的にも中堅の域に差し掛かるなか、指揮官の起用に良く応えた経験は野球観を広げ、今後の糧になるはずだ。

本人が「拷問」と苦笑した4番は主に5月中旬まで起用された。
4番での最大の仕事は、来日1年目のブラッシュがNPBに順応するのを手助けしたこと。

3番に浅村を固定したまま4番に島内を入れることで、JBを負担の少ない下位打線に置くことが可能に。中軸を免除されたJBはOPS1.031を残して順応を完了させると、満を持して6/9に4番へ。JBのウォーミングアップを支援したのが4番・島内だった。

最多53試合で起用された2番でも前後の打者を活かすと、9月は1番・茂木が不振に陥り、代役でリードオフマンに。8月に続き9月も打率3割・出塁率4割を維持し、チームの2年ぶり3位に貢献している。

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復活三部作の先にあった「事実上のキャリアハイ」

OPSは昨年.805から今年.779へ.026下がったが『事実上のキャリアハイ』だ。

減った原因は、作戦上制約のかかる2番と居心地の悪い4番を任された影響に尽きる。実際、OPSは2番.760、4番.748だったのに対し、それ以外は.859を記録した。

そのため、僕の中では.817というイメージ。.936を残したJBの.036ぶんはウィーラーと折半。4番の矢面に立ち、JBのNPB順応期間を確保した島内に半分の0.18を付け替えて.797、残り.020ぶんを他打者から広く徴収して.817になる。

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鷲ファンも気づかない「和製AJ化」への道

ところで、みなさん、島内が『和製AJ化の道』を突き進んでいる事実をご存じだろうか?

今年は金森理論を装備したバフ効果もあったのか、2番を任されたこともあったか、とにかく例年以上に「動かざること山のごとし」だった。

たとえば、バットを振りにいった数。今年と同程度の打席数だった2017年と比較すると991→919に減った。初球スウィング率も同年を皮切りに22.1%→20.4%→19.3%と年々減少傾向を示している。

1度もバットを振らずに選んだ四球がチーム2位の34個を記録する一方、1度もスイングせず倒れた見三振9個は同1位だった。

年間547個の見逃しストライク

きわめつけは見逃しストライクになる。

年間547個。

当方の手元にデータのある2012年以降ではアンドリュー・ジョーンズ(2013年591個、2014年560個)に続く多さだ。

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これだけ多くのストライクを見逃していたら、18.44mの対決で後手後手にまわり、リズムを作ったりアジャストするのも難しくなるのでは?と思いがち。

しかし、島内に限って言えば、見逃しストライク2個で追い込まれた後は逆に成績が良くOPS.841、打率.314だった。

7/15オリックス戦、同点で迎えた4回2死3塁、田嶋との左vs左を制した決勝打も、1度もバットを振らず2-2になり、その後のフルカウントから応戦したミートに徹した一打になっている。

投手心理では、浅村のように空振りを恐れず、初球から積極的に来るタイプも嫌だと思うが、一方で全くバットを動かさない島内みたいなタイプも、何を考えているかつかめないという意味で『ジャングルに潜むスナイパー』のように不気味だと思う。

もう少し長打が増えれば、警戒されて四球も増えるはず。出塁率.380超えも夢ではない。【終】

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