別れた男の話


私に嘘をついてまで一緒にいたい人や関係を保ちたい人がいて、浮わついた気持ちを影で長らく持ち続けていたあなたにとって私はそこまで大事な存在ではなかったのかな。つらい思いばかりさせてごめん、好きな気持ちは全部嘘じゃない、なんて、こんなことしといてよく言えたね。「彼は君のこと大好きだよ」って、あなたの友人は私に言ってくれたけど、本当にそうならこんなことになってないよ。楽しいことも嬉しいこともたくさんあったのに、私のなかでは全部騙されてて全部嘘だったみたいになってしまった。

と思っていたけど、楽しかったのも嬉しかったのも本当だし忘れることもないと思う。ひとの行動や感情、価値観を自分の尺度だけで推し測ってはいけないことと、誰かを信用することの危うさを痛感した日々だった。私はこの先、自分の大切な人には絶対にこんな思いはさせないように生きていこうと思った。


みんなの前ではいつも照れくさくて、冷たいことばかり言っては気持ちを隠してしまったけど、私の方がずっとあなたのこと好きだったと思う。一緒に兼六園の桜見たかったな!叶わなかったな。

どうか身体と家族だけは大事にこれからも元気に過ごしてね。たくさんの思い出ととびきりの大学生活をありがとう、応援しています。
 

元彼と別れるときに送った手紙の抜粋です。

別れて会わなくなってからも些細な用事で月に1回あるかないかくらいでちらちら連絡してて、ちょうど別れて半年くらいなんだけどちょっとエモーショナルなやり取りしてしまって色々思い出しちゃって泣けてきて、でもそんな感情引きずりたくないから文字におこして整理した。

あいつは誰と付き合ってもどうせ浮気すんだよ、ってこないだ友達が言ってたな、わたしもそうだと思う、あれは病気だもん。でもわたしだって所詮は浮気される程度の彼女だったんだよな、悲しくなるよな。

異性関係狂ってることもどうせ私が痛い目見せられることも、実は最初から全部わかってた、けどそれでも好きだったんだ、私のことをなにより大好きでいてくれてると思ってたから、そこがいちばん好きだった。

「信用してた」のが「何一つ信じられなくなった」のと同時に「好き」が「嫌い」に裏返ればよかったんだけど、そこのねじれが綺麗になおりきらないから、きっとこうして時間が経ってもすっきりしないんだろうな、たまーにだけどこうやってぶり返す。
 

わたしを慰めるための言葉だってことは十分わかってて受け取ってるけど、君ほどのいい子とはあいつはもう付き合えないよ、っていつか誰かが言ってくれたのを私は都合よく信じてるし、ちゃんと大人になってスッパリどうでもよくなるまではそう思わせてくれ、って思ってる。おれは両方の話聞いてるけど100:0であいつが悪いよ、とも言われたけど、わたしも最初はそう思ってたけど、彼には彼の言い分があったはずだし私にも良くないところはいくつもあったよ。言われてないから知らないけどね、言ってくれないとわかんないのにね。

とかあれやこれや言っても人間関係は不可逆だし時間も戻らないから全部「今更」でしかない、どうにもならないしどうにかしようとも思わない。

その子とお幸せにね、って別れる頃に耳元で囁いた「その子」の噂は驚くほどに酷い話しか聞こえてこなくて、そんなんで…いやそんなのが良かったのかよ…って思ってしまったよ。まぁ好みも価値観も人それぞれだからね、変わらず楽しく過ごしているようだしさ。

 

最後に、会いたい人には迷わず素直に会いに行く私が、またいつか、なんて、曖昧な別れの言葉を送ったのは、もうそこにいないならしばらくは会えないんだろうなと思ったからだよ。会おうとしても会えなかったしなんか結局そういうことなんだろうなと思う。

では、またいつか。

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