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どこにでも詩人はいる 日記20230226

 先週何かの用のついでで念願のdiptyque実店舗に行ったら、来月から全品値上げの予定だと店員が言った。「ここ一年でもう何度目か」と彼女が嘆息する値上げの理由には、輸送費の上昇以外にも理由がありそうで憂鬱だった。本当に欲しかったら千円以上値上げしても買うだろうと思ったが、決心が付いた時には千円では済まなくなっているかもしれない。そうなったら結局買うのを辞めるだろうなと思った。

 その日肌に載せてもらったのは、ノーマークの「オーモエリ」だったのだけれど、それは自分が今持っているサブ香水の香りに非常に似ているように思った。店頭で、ドソンとロンブルで迷っていると伝えて選んでもらったもので、私の鼻には新鮮かつ好ましく感じられたので載せてもらったのに、最初の香りはともかく、時間が経つに連れてどんどん馴染みの香りに変わっていった。私はまたも自分の好きから離れられなかったのだ。

 そのため、最初の予定通りロンブルダンローを買ったのだけれど、自宅で改めて付けてみたらどうも嗅いだことのある匂いのように思われる。事前にロンブルダンローは試し買いしているから知ってはいるけれど、そうではなく、古い記憶を呼び覚まされるような……。

 そうだ、イブサンローランのbabydollだ!

 いかにもなパッケージである。私もこういう女の子になりたかった時期があったのだ……。現在は販売終了とのことで、正確には香りが分からないのだけれど、おそらく私が似ていると感じたのは、カシスの香りのせいらしい。

 ちょっと待って。下手をすると十代の女性が付ける香水を今私がつけていいわけ?(いや世の中の多くのことには案外タブーなんてないけれど)と不安にかられて、口コミの情報を購入後に再検索する。ロンブルダンロー、案外メジャーな香りらしくて、人と被らないことを信条とする私は、香りが若すぎる疑惑に加えて、人と被る疑惑を新たに抱いたりもしたのだけれど。

 しかし、どこにでも詩人はいるものである。香りの世界の物語に没入してしまう美文である。

 これを読んで、「そっか……白鳥……」と納得したので検索して良かった。今日の記事は、ほぼこの口コミを紹介したいがためだけに書いている。これだけつぶやきに貼っても良かったんだけれど、それだと味気ないかもな、と日記仕立てにしたのである。

 しかし、つらつらとレビューを見てみると、「ずっと青い草のような香りがする」とか、「中年男性のような香りがして、どうにも合わなかった」とかいう意見も散見される。私はこの香りをひどく甘く感じて、官能的であるとすら思ったのだけれど。

 どうやら、どちらが正しいということでも、所詮素人の感想はあてにならない、ということでもなくて、私の体温とか元々の体臭との兼ね合いで、そういう風に香りが出たということらしい。私以外にも、「甘くてずっと嗅いでいたい香りで好きです」とか「甘すぎてずっと付けているのは無理でした」という人も、前者の感想の人と同じくらいいたのだ。もちろん、個人の好みは香りの感じ方に大きく関わるのは間違いないけれど。
 たとえばこの香水を夏に付けたらまた香りが変わるのだろうし、元々持っている香水も、季節や体調によって発散される香りの質が少し変わっていたのかもしれない。私も、ロンブルダンローがbabydollみたいだと思ったのは今日が初めてだったのだから。

 実店舗で買ったので、正規サンプルを二つ付けてもらった。これを買っても、元ある香水をないがしろにすることはないだろうけれど、気分と相談しながら楽しんでいけたらなと思う。


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