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1968年「アースライズ(地球の出)」から始まった。人類の目覚めの始まり。

文:谷崎テトラ(アースデイ ジャパン ネットワーク共同代表)


◯アポロ8号 「EarthRise(地球の出)」

1968年12月24日クリスマスイブ。アポロ8号から送られてきた「地球の出(EarthRise )」の写真は、人類の歴史上最も有名な写真のうちに一つでしょう。国境もなく、青く美しい地球の姿。真っ暗な宇宙に中にポツンと存在する、まるでオアシスのような星。当時は25億人、現在はそこに80億人が住んでいます。

アポロ8号から送られてきた、地球の出


アポロ8号は1969年に月に着陸することになるアポロ11号の着陸地点を撮影するために月まで行った最初の宇宙船です。撮影のためいったん月の裏側に入り、月を半周してからふたたび地球に帰ってくるのですが、その時、月の地平線から登ってくる「地球の出(EarthRise )」を目撃します。

「私たちは月に行くことが目的だと思っていた。しかし月に来てみて、ここから地球を振り返ることが最も重要な出来事であることに気づいた」と、のちにアポロ宇宙飛行士は語ることになります。

人類はそれまで「地球は丸い」ということは知っていても、あるいは「地球は青かった」という宇宙飛行士ガガーリンの言葉は知っていても、実際に丸く青い地球の姿を月の距離から見たことはなかったわけです。地球の全景を見るという体験は、地球生命の歴史の中で、最も重要な事件のひとつなのではないでしょうか。

社会活動家のリン・ツイストはこう述べています。

この瞬間、私たちはシステムの一部である状態から抜け出し、シフトしたのだ。
地球の美しさ、そのかけがいのない完全さがわかるほど、過去のシステムの外に飛び出したのだ。
ここから地球に宿るすべての生命にとってまったく新しい世界が開いたのだ。
 
リン・ツイスト

若い世代の人はうまれた時から「地球」の姿を誰もが共有していると思っているけれど、人類10万年の歴史の中ではこの半世紀の間に生まれた人のみが見ることができた画像です。実際僕は1964年生まれで、僕が生まれた時には、人類の誰もがこの写真をみたことがなかったわけです。地球人が、地球全体(ホールアース)で思考するきっかけとなり、地球全体を生命圏とみる「ガイア仮説」や「宇宙船地球号」という視点が生まれたのもこの時期です。宇宙船は空気と水と食料と燃料を積んで飛んでいきます。地球もまた、ある意味「宇宙船地球号」。空気と水と食料とエネルギーを80億のクルーで分け合い生きています。アポロ宇宙船と同じように、限られた空気や水を汚さないように、枯渇しないように、循環させる必要があります。

そして人類はこの瞬間、「地球人」という新たなアイデンティティを獲得したのでしょう。国境を超えて、地球人としての共通意識が芽生えていったわけです。第二次大戦が行われた時は、国境線が描かれた平らなメルカトル図法の地図で、領土を奪い合い、同一地平線上で綱引きが行われていきました。それが「地球生命圏」に気づいてしまった。

1967年、当時はベトナム戦争が起き、国家間の対立や人種問題、環境破壊が社会問題化しはじめていた時代のこと。特に感受性の強い若者たちを中心に「反戦」「平和運動」が起きました。そして「地球の出」から15ヶ月後に、世界最初の環境運動と言われる「アースデイ(地球の日)」がはじまりました。

母の日があって、父の日があるように、地球の日をつくりたい。

1970年、アースデイは、スタンフォード 大学のデニス・ヘイズというひとりの学生の呼びかけで広がっていきました。地球や環境のことを考え、感じ、行動する日。世界最大のグローバルな環境行動の日として、現在、世界150カ国以上に広がっています。そして、このテキストを読んでいるあなたにもつながっていくのです。

 

<参考リンク>

△動画資料:アースデイと環境運動の50年

△動画資料:アースデイとは? 3分間で解説



執筆者、谷崎テトラ。

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