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プラスチック問題を考える~原材料シフトで脱炭素社会を目指す①

文:萩谷 衞厚(アースデイジャパンネットワーク共同代表)

コスタリカで保護された鼻にストローが刺さったウミガメ、鎌倉市で打ち上げられたクジラの体内から発見された大量のプラスチックゴミ。そして、日本でも2020年7月からスタートしたレジ袋の有料化。こうしたニュースや法規制により私たちのプラスチックに対する意識やライフスタイルも変化しました。
こうした流れにより、飲食店でのプラスチックストローの紙製化や、スーパーやコンビニで提供されるカテラリーの木製化など、日本でも脱プラスチックが進行しています。

EARTHDAY.ORGが定めた2024年のアースデイのグローバルでのテーマ「Planet vs. Plastics」。今回のコラムでは、環境問題の一つとして取り上げられることが増えたプラスチックを皆さんと一緒に考えましょう。

改めてプラスチックとは?

プラスチックの語源は、ギリシャ語の形容詞「plastikos」というのが定説になっているようです。意味は「可塑性のある」、つまり、「固体に力を加えて変形させ、力を取り去っても元に戻らない性質」ということです。そして、プラスチック業界ではプラスチックを「主に石油に由来する高分子物質(主に合成樹脂)を主原料とした可塑性の物質」と定義しているようです。

私たちの身の回りを見渡せば、プラスチックに目にしない、手にしない生活は成立しないほど、生活必需品として広く浸透しています。
では、改めて、プラスチックのメリットを整理してみましょう。一般社団法人プラスチック循環利用協会によれば、以下の7点がメリットしてあげられています。

  • 軽くて丈夫:金属や陶磁器に比べて軽く、しかも丈夫

  • サビや腐食に強い:ほとんどのプラスチックは酸やアルカリ、油に強く、サビたり腐食することがない

  • 電気的性質に優れている:絶縁性、寸法安定性が抜群であるため、電気製品や電子部品に適する

  • 断熱性が高い:熱を伝えにくい性質があり、特に発泡体は断熱材として優れた性能を発揮

  • 衛生的でガス遮断性が高い:酸素や水分を通しにくいため、微生物の汚染から食品を守る

  • 透明性があり着色が自由:透明性に優れ、着色も容易、明るく美しい製品を作ることが可能

  • 成形しやすく大量生産が可能:複雑な形でも効率的に大量生産できコストダウンが図れる

プラスチックの歴史と現在地

広く私たちの暮らしに根付いているプラスチック、ここでは、その歴史を振り返ってみましょう。プラスチックが一般に広く普及したのは1950年代以降、つまり、人類との共存の歴史はわずか70年程度なのです。
ところで、人類初のプラスチックは何か?、実は1860年頃に、従来の象牙からセルロイドを原料に作られたビリヤードの玉が人類初の製品と言われています。

その後、プラスチックは戦後、爆発的に利用が拡大し、1950年〜2015年までの65年間で、世界で製造されたプラスチックは83億トンと言われています。現在も世界で年間3億トンが製造され、今後20年間で倍増し、2050年までには年間11億トン以上が製造されると予測されています。

プラスチックと環境問題

こうした利用拡大により、プラスチック問題の重要なテーマの一つである海洋プラスチックゴミ問題は誰もが知る社会課題となりました。現在、なんと世界では毎分トラック1台分のプラスチックゴミが海に流れ出し、その94%が海底に体積、残りが海面を漂い海辺に漂着し、自然環境にも多大な影響を及ぼしています。
環境省が調査した海辺の漂着ゴミの調査でも実に半分近くをプラスチックゴミが占めています。2050年には海のプラスチックの量が魚を上回ると警告した2016年のダボス会議での報告も記憶に新しいトピックスと言えるでしょう。

また、プラスチックの製造には石油由来の原料がその主な役割を果たしており、その生産過程は温室効果ガスの排出源として知られています。さらに、プラスチック廃棄物の処理はエネルギー消費と二次汚染物質の排出を伴い、環境への負担を増加させています。

プラスチックと日本

ちなみに日本は、包装用プラスチックゴミの排出量はアメリカに次いで世界2位、日本の年間プラスチックゴミの量は、約1,000万トンにまで達しています。でも日本は地方自治体でのゴミの分別も進み、プラスチックゴミを有効されている しかし、環境先進国でリサイクル大国日本はもはや幻想であると言わざるを得ません。

日本国内ではプラスチックゴミ全体の86%がリサイクルされ有効利用されているとされていますが、うち約6割を占めるのがサーマルリサイクルなのです。サーマルリサイクルとは、プラスチックなどの廃棄物を焼却したときの熱エネルギーを再利用するリサイクル手法のこと。暖房や給湯利用するケースが多く、発生する熱を蒸気にして機器の動力源やビニールハウスの温水プールで利用されています。

しかし、欧州では、欧米基準ではサーマルリサイクルはリサイクルに含めないのが現状です。プラスチックごみをそのままプラスチック製品へとリサイクルする「マテリアルリサイクル」、化学分解してリサイクルする「ケミカルリサイクル」この二つがリサイクルとされ、「サーマルリサイクル」は、「熱回収」、「エネルギー回収」とされリサイクルには分類されません。

では、こうした状況の中、従来の化石燃料由来のプラスチックをどう減らして地球環境を守り将来の脱炭素社会を実現するのか?
次回は産業界の動きを中心にその解決策を紹介しましょう。

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