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プラスチック問題を考える~原材料シフトで脱炭素社会を目指す②

文:萩谷 衞厚(アースデイジャパンネットワーク共同代表)

化石燃料由来のプラスチックをどう変え、脱炭素社会を目指すのか?
今回はプラスチックをサステナブルな素材へのシフトするための手段や最近のトピックスからプラスチック問題を考えます。

環境負荷軽減のためのバイオプラスチックとは?

環境に悪影響を及ぼす化石燃料由来のプラスチックの代替素材として注目されるのが「バイオプラスチック」です。
植物などの再生可能な有機資源を原料とする「バイオマスプラスチック」と微生物などの働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解する「生分解性プラスチック」の2つに分けられますが、それらはまとめて「バイオプラスチック」と呼ばれています。

バイオマスプラスチック?、バイオプラスチック?、似たキーワードが登場しましたが、これらは明確に区別し使用されています。詳細はこちらの環境省のサイトをご覧ください。

環境省「資源循環プラスチック」より

現在、一般的なキーワードとして耳にすることも増えた「脱プラ」。「脱プラ」とは、上図の右側「その他のプラスチック代替素材」へ原材料を変えていくこと、つまり従来のプラスチック製ストローを紙ストローへ転換することはここに位置付けられます。海外の化粧品メーカーはプラスチック製のチューブ容器を紙製に変更する動きもあります。
また、プラスチックの原材料にリサイクル材を利用する(マテリアルリサイクル)動きも目にするようになりました。

ここでは、脱プラやマテリアルリサイクルって本当に環境にいいの?こうした問いに答えていきましょう。

紙ストローは環境に悪影響を及ぼす!?

その商品やサービス、製品って地球環境に本当にいいの?ストローに限らず、生活する上で、私たちの身の回りの環境配慮商品を手にした時に疑問に感じたことはありませんか?

ちなみに、従来のプラスチック製ストローと紙製ストローをLCA(ライフサイクルアセスメント)全体の視点から比較した以下の記事があります。

記事の主題は、紙ストローの方が環境に悪影響を及ぼすということ。そのポイントは以下の通りとなります。

・全量埋め立て廃棄の場合、地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量は、紙ストローがプラストローの4.6倍
・プラストローの悪影響が目につくのは化石燃料の消費で、これは紙ストローの2.2倍
・地球環境に対するこれら8項目の影響を合算した「相対的環境影響指数」をみると、紙ストローの悪影響度はプラストローの2.1倍
・総合的にみて、紙ストローはプラストローよりかなり環境に悪い

文春オンライン:温室効果ガス排出量は実は“プラストロー”の4.6倍…!? 専門家が明かす「紙ストロー問題」の“リアルな実情”より

マテリアルリサイクルではGHG排出量が減らなかった

地球環境への影響が本当に軽減されるのか?原材料の転換やリサイクルを進める上では、上記の通り、LCA視点での検証が重要である、と言えるでしょう。

誰もが知る「レゴブロック」。それを販売するデンマークのおもちゃメーカー「LEGO」。皆さんも子どもの頃、あのプラスチック製のブロックで遊んだことでしょう。
そのLEGOの2021年7月のWIREDの記事がこちら。

使用済みペットボトルを再生してレゴブロックの生産にLEGO社が成功したというのがその内容となります。これまでリサイクル材では困難だったブロックに求められる高い強度と剛性をリサイクルPETで実現したということです。

そして、つい最近、LEGO社のこうしたニュースが流れてきました。

レゴは2023年までに持続可能な素材のみを使用するとの公約を掲げており、2年前には再生PETを素材とするブロックの試作品を発表していた。
だがその後、再生素材でブロックを製造するには新設備への投資や工程の追加が必要になり、最終的には現状よりも多くの温暖化汚染物質を排出することが分かったという。

CNN:レゴ、再生ペットボトルによるブロックの製造を断念

リサイクルPETを原材料としてレゴブロックは、その生産過程で温室効果ガスの排出量が減らないことが判明、リサイクルPETを使用したレゴブロックの製造を断念したということです。サステナブルな取り組みを積極的に進めるLEGO社の名誉のために付け加えておくと、化石燃料由来のレゴブロックを製造する取り組みを放棄するわけではなく、2032ねまでにサステナブルな素材でブロックを作る方針に変わりはないそうです。

LCA全体での環境負荷の把握と削減が求められる

ESG経営を志向する企業と世界的な環境保全の潮流により、化石燃料由来のプラスチック生産量は減少することでしょう。しかし、安易な、紙製品へのシフト・リサイクル率を高めた原材料の利用などを進めることで、良かれと思った環境対策が、グリーンウォッシュに加担していた、そうした轍を踏まないための配慮がより一層求められます。

EVはガソリン車と比べて、本当に環境に良いのか?という問いが以前から投げかけられています。走行時にはGHGを排出しないEVは、どうやって製造され、何由来の電気を充電したのか?を検証することが重要です。
脱炭素社会を目指すうえでは、そうした俯瞰的なつまり、「LCA視点」が求められています。カーボンニュートタルを目指す上で、社会はそうしたフェーズへと着実に移行しているといって良いでしょう。


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