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私のアースデイ活動の原点〜里山、都市、そして世界へ

文:坊理可(アースデイジャパンネットワーク共同代表)

前回の話はこちら

里山の生活を思い返すと、畑仕事の合間に、山を眺めながら茅葺きの家で寝そべって煙管をふかしている祖母の姿、雨降りの時は日がな一日蛇味線を搔き鳴らして唄っているモンペ姿が目に浮かびます。

一年中驚くほど真っ黒に日焼けして、そばかすだらけの笑顔に深い碁盤の目のような皺がある女系の先祖たちは、時には百才に届くほど皆長生きでした。 その暮らしぶりと一生を思うと、人が生きるのに必要な殆どのものを身近な自然が与えてくれていたこと、幸福に過ごしていたことが分かります。

都市での生活

私は十代半ばに東京で働き始めてから都市生活にどっぷりと浸りましたが、違った文化を持つ他民族の方々との交流や、自分を見つめ直す機会があり、自分や周りの人たちの苦悩の多くが世界全体の問題と繋がっていることを感じ始めました。

シンプルな田舎生活に比べ都市での生活は、プラスチックや過剰包装、化学物質による汚染、人工的な刺激に溢れており、よほど意識しない限り、これらが一体どこから来て、どこまで本当に必要なのか分からないまま欲望で麻痺した生活を送ります。

近年では、大量消費型社会への急速な変化や経済格差と人口の増加に伴って、生物と文化の多様性、持続可能な社会の維持、地球環境の存続自体が危ぶまれています。

そんな中、新しくて懐かしい生活様式である「循環型社会」、生態系に配慮した「アグロエコロジカルな社会」への転向が問われています。

「循環型社会」とは

「大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から脱却して、生産、流通、消費、廃棄に至るまで、物質の効率的な利用やリサイクルを進めることで、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷が低減される社会」が「循環型社会」と言われています。 「循環型社会」を進めてゆくには三つのRの実践が必要だと言われています。

三つのRとは、
①Reduce(リデュース)買うもの、捨てるものを少なくすること
②Reuse (リユース)繰り返し使用すること
③Recycle(リサイクル)廃棄物を原材料やエネルギー源として再利用すること

地域の自然環境や伝統を大切にし、地場の生産物を流通させることで、顔が見える安心できるやりとりや安定した地域経済、人間性や良い人間関係を育てることができます。

アースデイの子供たち

アースデイでも子供たちが環境活動に率先して取り組み始めています。 子供には自然の理を悟り、自然の美や恵みを喜ぶ感覚が生来備わっていると思います。

その力を信じて、環境教育と実践を広げ、子供たちと一緒に現在の経済構造を変えるほどの影響力を生み出すことができれば、人の暮らしや健康、人間関係、地球環境が再生すると信じています。

分かち合い助け合うコミュニティ

祖母の葬儀の時、地域の方々がお手伝いに来られ、使用した食器を家の傍らの川で黙々と皆で洗ってくださった光景を思い出します。香典は戴かず、お手伝いへのお返しも二百円位のロールケーキ一本と決まっており、お互い負担をかけずに助け合うコミュニティがありました。

日本は、終戦直後の物資のない時代には、ご近所で醤油やお米など貸し借りし、足りない物を分かち合う精神性が最も豊かだったと聞きます。 現在は、資源の濫用と環境破壊を抑えるため脱炭素、脱プラスチックなど世界的な取り組みが始まっています。 公正さについての議論もあります。世界の緊張を緩和して公正で平和な世界を実現するのには、戦争や大規模な汚染の原因となる資源の独占や過剰消費に取り組むだけでなく、競争ではない世界規模での資源の分かち合いや相互扶助の姿勢を培っていくことがこれから必須の課題になるのではないかと思います。

アースデイネットワークへの思い

幸いアースデイには、環境への思いがある人、多様な領域や地域で様々な取り組みをしている経験や技術のある人が沢山いて、国境や地域を超えて情報交換したり、世界で同時にプロジェクトを進めてゆくこともできます。

私がこのアースデイジャパンネットワークに関わったのは、このコミュニティを通して、地域環境や人間の問題の解決を加速できるかもしれないと思ったからです。知らない者同士が信頼関係を作るには少しの時間が必要かもしれませんが、こうやって自分の体験をお話しさせて頂くのも、お互いの思いや行動を分かち合い、より良い活動を共に作ったり進めていければという思いがあるからです。  

各地域で自分なりのアースデイアクションをしている方が、アースデイジャパンネットワークに積極的に繋がって、ネットワークや個人のアクションをより創造的で実りのあるものにしてくださることを心から願っています。

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