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羽ばたく瞬間を見守ること。

「今年も冒険キャンプをやってもらえませんか」

去年はじめて自分でやってみた子ども対象キャンプに参加した親御さんからメッセージが届いた。そっか、もうそんな時期になったのか。忙しくてバタバタしている時期ではあったけれど、「来年はもっと難しいやつお願いね!」と去年のキャンプを終えたあとに、言って帰っていった子どもたちの顔が浮かんで受けることにした。さて、何をしようか。

去年と同じことはおもしろくない。去年のメインはとんがり山登頂にダンボールハウスづくりだった。それなら今年は・・・そうだ、海に行こうか。僕が住んでいる田舎には大津茂川という川があって、それを辿った先にはもちろん海がある。川が流れて、だんだんといろんなものを取り込みながら大きくなり最後には海に流れ着くまでを子どもたちと冒険してみよう。

GW3日の朝には、懐かしい顔ぶりが揃った。そして新しいメンバーも。総勢11名の子どもたちと、大人は西川家からおかん、そして大学生の甥っ子。このメンバーで2日間のキャンプをこなす。

村を見渡せる大岩の上で、ごはんを作って食べよう!

こんな素敵な1日目のお昼。フタを開いてみたら、子どもたち落ち着きがない。なにを担当するかで揉める。輪から外れて崖を覗きに行ってしまう。そして、下の方にひっかかった木の枝をどうしても欲しいと叫ぶ。10名を越えるとすげー。いかに学校行事やキャンププログラムがこういうことを前提にして、組み立てられているかということがよくわかった。

アクティビティを重ねる(楽しいごはん作りと、ちょっと危ない大岩)みたいなことをすれば、子どもたちのテンションはあがって、その気持ちのまま動きたい状態でごはんづくりをしようものなら、わやくちゃになるということを学んだ。なるほど、だから大勢のキャンプって退屈にもなるし、逆から見ると管理しやすいわけなのね。

それでも2日間通して、いくつもやってよかったーと思える瞬間があった。僕が考えたアクティビティや道筋にたいして、ときどき彼らは想像以上の先を飛びはじめる。自分でルールを変えてみたり、新しいものをそこに入れ始めたり。そうして自分の手を離れて飛んでいく彼らを見るのが好きだ。

昔から人が営んできた暮らし、世代のつなぎのなかに、こんな瞬間っていくつもあったんじゃないかって思う。そして、それを少し寂しいような、けどこれで安心して羽ばたいていけるなって親やまわりのオトナたちが、子どもたちを見守りながらじんわりと思う瞬間ってあったんじゃないか。

それは、ときには手を出すのをやめられないほど不安定で、そしていつ来るか分からないからついつい道筋をつけておこうとしてしまう。けどそのラインをぐっとこらえて、子どもたちのほうに寄せてあげて、そうして彼らが羽ばたいていく瞬間を見守ること。

僕はそれこそが世代をつなぐ役割として自分が持てる宝物のような瞬間なんじゃないかって思う。たった一瞬の。ときにまばたきをしているあいだに終わってしまっているようなはかないもの。


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