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居場所と役割が人を輝かせる。

「まだもうしばらくここにいますか?」
いるよ。待ってるね。そう伝えると、ちょっと内気そうなそのあんちゃんは目の前の建物に入っていった。まぁ、あとで帰ってきてくれるだろう。こなくても何かを感じてくれたならそれでいい。



ついに函館までやってきた。長くいさせてもらった北海道の終着点。
星型をした五稜郭のすぐちかく、若者が行き交うシエスタハコダテという建物の前の交差点で、ぼくはdailylife bicycle coffeeをはじめた。

いつでもこうして知らないまちでコーヒーを淹れはじめるときはちょっとだけ心の表面がピリピリする。なんだろう自分がこのまちでは何者でもないというよそ者だからだろうか。

何人か、ゆっくりではないんだけどちょこちょこ立ち寄ってくださる方がいて、落ち着いたときにあの内気そうなメガネのあんちゃんが、もうひとり連れて帰ってきた。

「彼が僕のコーヒーの師匠で、彼を連れてきたくて連絡したんです。」

いいじゃん。そんな思いがあったんだ。僕に何かを感じてくれたこと、仲間を誘って帰ってきてくれたこと。そんな思いを持ってくれたメガネくんと、誠実そうな瞳をしたカリアゲくんが好きになって、僕は彼らと函館のコーヒーをともにしよう。

どちらも、思いがあって定時制高校に通っている。
話してみても不器用な子たちだ。けれどそのおっかなびっくりな振る舞いのなかにある心はキレイな子たち。

懸命にコーヒーを落として、それを来てくれた人に手渡し、それに口をつけたあと笑顔で顔をあげるその人たちを見つめる彼らの表情が好きだ。僕にできることなんてたいしてないけれど、こうして彼らが社会と、ひとと触れ合っていき、自分の居場所と役割とをここにいるあいだ、僕といるあいだ、そのときだけでも感じてくれたらいいなと願いを込めて。


(おまけの写真)
函館までの道のりと、函館DAYS、青森に渡るフェリー


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