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種とは何か?・・・

基礎研究が知識の枠組みを拡張することはみんなが知っている。だからこそ基礎研究は重要なのだが、この知識の枠組みが拡張したとて私たちの生活にはほとんど影響を与えない。

今の日本には大きな課題がある。
それは、未記載の種が多く存在していることだ。馴染みのある言葉で言えば多くの新種が学術的な報告がなされずにいるということである。
そしてこの背景には多くの課題が存在している。

そもそも「種」とはなんなのだろうか?
歴史上さまざまな定義がなされてきた「種」、マイヤーはこの「種」を自然条件下において同所的に分布した生物集団が交配しそれにより生じた子孫が生殖能力を有していたものを種とすると定義している。
この定義に従えば、種の記載は新種かも知れないものを一定期間自然環境下で飼育し子孫を作らせ、その個体の生殖能力を判断すれば良いということになり一見容易に見える。しかしこれは私たちの想像とは逆に非常に難しいことである。つまり、自然界に存在する多くの動植物には飼育が困難であるものが多く存在するということだ。
となれば次に想像されるのは分子系統学的解析を用いた新種の記載であろう。簡単に言えばDNAを用いて新種と思われる個体とそれに近縁であると思われる既知種との関係性を客観視し、記載しようということである。
塩基配列決定が容易になった今日においてこれらの手法は最も可能性が大きいものとしてうつるだろう。しかしこの方法にも実は欠点がある。
それは何%のDNAの差があれば種と呼んで良いのかといった課題である。これについては今でも多くの分類群でさまざまな議論がなされている課題である。

上記に淡々と記した新種記載の障害…
これらのことから一つの結論が導き出せるのではないだろうか。それは、種は連続した進化の中に生じる区別であり、それらを詳細に分類することは困難であるということである。
その上で私たちがするべきことは多くの議論の上での妥協点を探究することであろう。

完璧な定義を求めることなど種という連続的なものの定義には不可能である。そのため私たちは常に種について正確に捉える姿勢・疑問を持つ姿勢を維持し分類学における種のアップデートに努める必要性があるのではないだろうか。


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