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エビデンスのある療育ーFCT準備編

はじめに

エビデンスのある療育を紹介していくシリーズ第三弾はFCT(Functional Communication Training)です。FCTは第二弾のFBAやFunctional analysisなどで、行動分析が済んだ後に用いられることが前提となっているため、まだ読まれていない方はそちらも参照していただけますとより理解しやすいかと思います。

FCTとは?

FCTは、問題行動や不適切行動が持つ機能をそのままに、代替行動としてより適切な方法での意思表示や意思疎通に変換する方法です。大概のケースにおいて、この介入方法で必要になるのは簡単な口頭でのプロンプトやジェスチャーであり、また物が必要な場合であっても選択するための絵カード等で十分なため、非常に低コストで始めることができます。
不適切行動や問題行動をより適切なコミュニケーションに変換することで、問題行動の減少と同時にコミュニケーションスキルの向上も達成することができます。

FCTによって達成できること

FCTによって減少対処となる主な問題行動や、適切な行動としての代替行動としては下記の項目が主に該当します。
問題行動
・傷害行為
・癇癪
・叫ぶ
・パニック
・離脱・逃走
・自傷行為
・物を壊す
・強迫的な常同行動(不適切行動と結びつく場合)
・物を口に入れる

代替行動
・カードを指差して意思表示をする
・ジェスチャーで意思表示をする
・口頭で意思表示をする(単語:おやつ)
・口頭で意思表示をする(フレーズ:おやつ欲しい)
・口頭で意思表示をする(文章:先生おやつください)

年齢別に効果が確認された領域

準備その1ー行動分析と目標設定

冒頭でも記載しましたがFCTは下記の項目が済んでいる事を前提にしています。FBAで分析と目標設定を行う場合にはこちらから参照ください。
チェックリスト
・問題行動の定義は済んでいるか
・問題行動のベースライン調査は完了しているか
・いつ代替行動が表出するか、取り組むスキルは何か、取り組むスキルが習得された事を確認する方法は何か、等の目標設定や目標達成の基準が定められているか

準備その2ー代替行動を選択する

実際に問題行動の代わりになる適切な行動として、どのような代替行動を学習してもらうか選択します。代替行動を考える上で重要なのは、行動の機能、行動の形態、難易度です。

行動の機能の一致

行動分析を行なった結果、問題行動の機能(獲得や逃避、またはいずれも)が特定されていることと思います。この機能をより適切な方法で児童が実現できる事を目標とするため、代替行動は問題行動によって達成されていた機能と同じ機能を果たす必要があります。


問題行動
プリント課題に取り組む最中に、教室を抜け出す(逃避)
代替行動
プリント課題に取り組む最中に、休憩カードを選択し先生に渡す(逃避)

適切なコミュニケーション形態  
代替行動としてなんらかのコミュニケーション方法を選択する際には、基本的に児童が今現在活用している方法に則って選択することができます。例えば、基本的に口頭でのコミュニケーションが可能な児童に関しては口頭で、また絵カードを主に用いている児童に関しては絵カードでといった形で選択できます。
またこれは必ずしも児童が日常的に使うコミュニケーション方法に限定するということではなく、仮に口頭でのコミュニケーションに加えて絵カードも使ったことがあるような場合には、代替行動として絵カード等を用いることもできます。
ただし、児童がこれまで全く使ってこなかったコミュニケーション方法を代替行動として選択することは推奨されていません。

適切な難易度
代替行動の難易度が児童にとってとても高いものだと、その行動をするよりも問題行動によって逃避や獲得といった機能を満たしたほうがいいと判断されかねません。そのため代替行動は児童にとって一番簡単なコミュニケーション方法で始められるように工夫する必要があります。

準備その3ー代替行動の共通認識化

代替行動としてどのような方法を用いるか選択した後に重要なのは、それをチームメンバー間でしっかりと共通認識化することです。というのは、実際に代替行動が起きた時に、その代替行動の機能を満たしてあげないと問題行動の方を利用する状態に戻りかねないからです。
そのため、チームメンバーは代替行動はどのような行動でまたその行動が発生した場合の反応としてどのような対応が必要なのか、しっかりと共通認識を持っておく必要があります。

準備その4ー必要となるものを作成・用意する

代替行動を児童が行う上でカードや、デバイスなどが必要な場合には、あらかじめそれらを準備しておく必要があります。
こちらのザ・プロンプトさんのようなサイトで簡単に絵カード等作れるようです。

まとめ

以上が、FCTを始めるまでに必要な準備になります。代替行動を適切に設定しないと問題行動の方が使われ続けてしまったり、また代替行動が起きた時の反応を統一していないと問題行動の方が優先されてしまうなど、いくつかのポイントをしっかり抑えて活用していく必要がありそうです。

次回 エビデンスのある療育ーFCT実践編

リファレンス
https://afirm.fpg.unc.edu/node/1495

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