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ウェルビーイングの向上のために何ができるかを考えてみた

 「次期教育振興基本計画」においてウェルビーイングの向上が掲げられています。ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的な健康状態を指す言葉であり、単なる瞬間的な幸福ではなく、将来にわたる持続的な幸福感をも含んでいます。
 また、この概念は、多様な個人が自身の幸福や生きがいを感じるだけでなく、個人を取り巻く地域や社会が幸せや豊かさを共有する状態も含んでいるようです。

 従来、経済先進諸国では国内総生産(GDP)が経済的な豊かさを示す指標として主流でしたが、その限界が指摘されてきました。
 精神的な充実や健康も幸福感の一部であることが認識され、幸福の要素は多面的であることが明らかになっています。そのため、経済的な豊かさだけでなく、精神的な満足感や幸福感も含めて幸福を追求する必要性が高まっています。

 OECDの「学びの羅針盤2030」においても、【個人】と【社会】のウェルビーイングが望ましい未来の目標と位置付けられています。社会全体のウェルビーイングが共通の目的とされ、個々の幸福や生きがいが大切な要素とされています。

 日本においては、社会や文化の背景を踏まえた上で、ウェルビーイングをどのように実現していくかが問われています。
 日本においては、自己肯定感や自己実現といった【獲得的要素】と人とのつながりや利他性などの【協調的な要素】を調和的・一体的にはぐくむ教育が求められています。
 具体的には、児童生徒の自己肯定感を高めつつ、他者との協力や協調も育む教育アプローチが重要です。全国学力・学習状況調査では、児童生徒に対してウェルビーイングに関する質問が含まれており、自己肯定感や友達関係の満足度、協力意識などが評価されています。このような要素を通じて、将来にわたる持続的な幸福感を築くための土台を構築することが重要とされています。

 ウェルビーイングの向上に向けて、教職員はどのようなことができるでしょうか。いくつか考えてみました。

  1. 学習環境の整備: 子どもたちのウェルビーイングを促進するために、教室や学校全体の環境を整えることが大切です。快適な教室環境やそれぞれの進度に合った学習活動、温かい学級経営など行い、子どもたちがリラックスして学べる場を作ることが求められます。個別最適な学びと協働的な学びを推進していくことも、ウェルビーイングにつながりそうです。

  2. メンタルヘルスのサポート: 教職員は子どもたちのメンタルヘルスをサポートするために、必要な場合は専門家への紹介や相談窓口の提供を行うことが重要です。全国学調の質問紙に「困りごとや不安があるときに先生や学校にいる大人にいつでも相談できますか」という項目があります。相談相手の選択肢に頼れる先生がいるという状態にしたいものです。        また、教職員自身も定期的なメンタルケアを行い、ストレスや負担を軽減する取り組みを行うことがウェルビーイングの向上に繋がります。

  3. ポジティブな学習環境の促進: 教職員は子どもたちに対してポジティブな学習環境を提供するために、励ましや称賛の言葉を積極的に使うことが重要になります。発達支持的生徒指導等の常態的・先行的(プロアクティブ)等を通して、子どもたちが自信を持ち、自己肯定感を高めるようなサポートを行うことがウェルビーイングの向上に寄与します。子どもたちが「先生は自分のよいところを認めてくれている」という実感をもつことが大切になってきます。

  4. 協力と連携の促進: 教職員同士の協力や連携を強化することもウェルビーイングの向上に繋がります。学校組織の長所ととらえられるところは、ゆるやかな階層構造であり、水平方向のコミニケション、参画重視の意思決定がしやすいことが挙げられます。情報共有やアイデアの交換を通じて、教育環境をより良くする取り組みを行い、職場全体の雰囲気を向上させることが大切になりそうです。

  5. 自己成長の機会の提供: 教職員には自己成長の機会を提供することがウェルビーイング向上に繋がります。セミナーや研修の参加を奨励し、新たなスキルや知識の獲得を支援することで、教職員のやりがいや充実感が高まります。必要に応じて研修等を自己決定できるようにできるとよいと考えます。

  6. ストレスマネジメントの教育: 教職員に対してストレスマネジメントの方法や心の健康に関する知識を提供することが重要です。ストレスの適切なコントロールやリラックス法を学び、教職員が健康的な状態で業務に取り組めるよう支援することがウェルビーイング向上の一環となります。

 教職員がこれらの取組を行うことで、子どもたちのウェルビーイングを促進し、ポジティブな学習環境を構築することができそうです。
 教育現場全体でウェルビーイングの意識を高め、持続的な幸福感を育む環境を築いていくことは、子どもたちだけではなく、教職員にとっても重要だと考えます。


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