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美しき彼らは自分達をクソ野郎と呼び、クソみたいな世界を"美しき"と名付けた。

映画「クソ野郎と美しき世界」を観た。

その日は水曜、レディースDay。
そして国民的男性アイドル3人の主演映画。
だが時折聞こえる笑い声には確かに男達の存在があった。

馬鹿馬鹿しさに何度とも笑い 、人間くさい、ズルいくらいの愛おしさに何度も涙した。

予想を遥かに上回り、
馬鹿みたいによかった。

私が物心ついた時からSMAPは国民的スターだったし、いつからだかわからない位自然と彼らが好きで、2020年東京オリンピック開会式はSMAPがでてくるんじゃないか、なんて本気で思っていた。
生放送全シングルLIVEも見惚れたし、5人旅も微笑ましくて、中居くんの酔っ払った言葉には本当に泣けたし、ベストフレンドもスマホに入れた。

SMAPは彼らが生きてる限り永遠だと信じて疑わなかった。

カメラの前で頭を下げる5人を取り巻く状況には本気で怒ったし、CD買ったりSNSでSMAPの番組のタグ使ったり、ほんの微々たることだけど、私なりにSMAP解散を全力で止めたかった。

今でも嘘みたいな話だと思う。

スマスマですら、自分達の曲をほぼ歌えなくなった彼ら。
何が起きてるかもわからない。
私は別にSMAPのファンクラブでも無ければコンサートに行ったことも無い。
だけど、当たり前にお茶の間で圧倒的スターSMAPを見続けてきた。
運動会は慎吾ママを踊ったし、学校では世界に一つだけの花を歌った。
だから ただのテレビっ子で平凡な私ですら、あの騒動と止められない歯車が歯痒かったし悔しかった。
せっかくSMAPと同じ日本に生まれたのに、この先永遠にSMAPのコンサートに行けないかもと思うと本当に悲しくなる。

そして新しい地図が生まれた。
AbemaTVはちょこっとだけ観た。
番組のオリジナルソングを歌う3人が感慨深かった。

映画をやると知った。
たった2週間限定公開で、当たり前だけど3人が主役ということで、
私は完全なる3人やSMAPファン向け映画だと思った。
タイトルの「クソ野郎と美しき世界」についても、随分攻めたな。凄い何か負けたく無いんだろうな、"何か"と戦っているのかな、としか思わなかった。

ある時、
Twitterで新しい地図の「クソ野郎と美しき世界」予告映像をみた。
慎吾ちゃんが、誰かので無い、彼の新しい歌を歌っていた。
明るい歌だった。

2分もなかったんじゃないかというその映像ひとつで、私は映画館へ向かうことにした。

ただ、彼らが新しい自分達の歌を歌うのを聴きたかった。
それだけ。

観終わった。感想は
もう一度同じ言葉を使うが、

「馬鹿みたいによかった。」

今までで観た中で1番好きかもと思ったけど、あんなの映画の枠に収まるものか!!

4本のオムニバス形式の本作、
4話目を観ながら「この映画でもう5、6回以上泣いたな」、なんてら思ってたら、その後また5、6回以上泣かされた。

上映中のある所では、思わず立ち上がり拍手する衝動を抑えるのが大変だった。それも2回もだ!
映画の枠に囚われない自由な演出、OPの新しい地図映像から始まり、今までの3つの話が最後に合流し、答え合わせが始まる。
それだけでなくエンドロールにまで仕掛けられた観客まで登場人物にしてしまう前代未聞の作品。
もうどこがOPでEDだかもわからない。
上映中全て観客はこの映画の手の手のひらの上なのだ。

なんだこれ、狡いだろ!
こんな型破りな作品なんて聞いてない!!

殆ど邦画しか観ない私に、園子温監督の第一話は不明瞭さと1つのテーマ、繰り返される同じ台詞に、The 邦画を感じた。

第2話の世にも奇妙な物語のような突飛でファンタジーな設定はドラマ好きの私を設定だけで充分わくわくさせたし、

3話目は考察ベタで馬鹿な私にもわかりやすいドラマで、息子の腕を探す母:尾野真千子の演技に軽率に涙が出るのに、いいのかこれ!?ってくらいのぶっ込んだ笑いが同時に存在していて太田光のバランス感覚に感心させられた。
そしてあんなに穏やかなつよぽんに、アウトローな役があんなに似合うのは一体全体なぜなんだろうか。
最初に草なぎ剛をそういうキャラにキャスティングした人、凄すぎる…。

3人とそれぞれの物語が集まる4話は予告で聴いた慎吾ちゃんの歌声に合わせ、ひたすら楽しい楽しい世界。
明かされてく謎、実は繋がってた人物達が明かされていく快感もあるが、物語性がなくたって、皆で笑い歌声響くあの場面は、涙が出るくらい楽しくてワクワクして仕方なかった。
歌詞もずるいんだ。
あんな笑顔で楽しそうに、真っ暗闇くぐり抜けてきた様な言葉、平気で飛び出すんだもん。

私が1番驚き、感心したのはその後である。
「地球最後の日」
楽しいパーティーが終わり、ED。スタッフロールが流れ終わるかと思いきや、この映画は全ての予想を裏切ってくる。
吾郎ちゃんが、ケータイ片手に歩く中、流れ地球最後の日。

"電話をくれたんだね 出られなくてゴメン 急用じゃないよね
今ちょうど映画館で 観たかった映画を 観終わったところ"

そんな歌詞から始まる曲は、今まさに映画を観終えようとしている、映画館の観客すら物語に巻き込むのだ。

続く歌詞では、
巨大な遊星が近付いてきて、地球が終わる事になり、人々は最後に、本当に好きだった人達へ連絡を取る。
「本当は貴方が1番だった」、「やっぱり君が1番好きだ」
しかし一夜明け、地球を終わらせる筈だった遊星はなぜか軌道が変わり地球を避けた。
そこから本当のパニックが始まる。
地球に住むみんなが、恋の気持ちを打ち明けたから。

"そんな映画を観ていた時に ねぇ 電話をくれたんだね
出られなくてゴメン 急用じゃないよね"

そして曲のラストはこう締め括られる。

まさか君の1番好きな人に気持ちを打ち明ける電話とか
地球の終わる日が 本当にくるのかな

これには本当にやられた。
そうきたか。
この曲と映像を通して1つの物語として完結しながらも、今まさにスクリーンを見つめ座席に座る私達すら物語の主人公にしてしまった。
なんて演出だろうか。
すごいを超えてついズルいと思ってしまった。

役者と登場キャラ、ストーリーにオムニバスのまとめ方、映画本編の始まりに新しい地図の映像を使うとこ、終わったと思ったら最後まで型破りで観たことない演出、全てで観る者に渾身の力で殴りかかってくる。

どんだけカッコイイんだ。
ずるいだろ!

あまりの創りの凄さに、深く考えようとしたが、1回しか観てないし、劇場が明るくなる頃には前半泣かされた台詞すら朧げな記憶力の私は匙を投げることにした。
やけっぱちでない。
清々しい気分で、あの野球ボールのように空高く。

ただ、馬鹿みたいに驚かされたり笑わされたり泣けちゃったり、それだけでいいと思ったのだ。

大人の事情なんかわからないけど、あんなとんでもない作品が、たった2週間の間しか目に触れることが無いなんて勿体無さ過ぎる!!!!

そしてこの映画は私に厄介な宿題まで残していった。
"あいつに電話しなくっちゃ"

私のあいつは、世界一大好きな悪友であり、死にたくなるほど苦しい時に、ラブソング以外世界で唯一「愛してる」なんて酔っ払った電話で何度も心配してくれた奴。
彼には彼女がいるから、私はただクソジジィとクソババァになっても軽口叩き合える友で居れれば良かった。
筈なのに、酒癖悪く酔っ払っては好きだ愛してるなんて言う奴に、孤独で馬鹿野郎な私は、
馬鹿なことに彼を友達以上として好きになってしまった。ほんと馬鹿。
好きだ、彼女よりついお前に電話してしまう、愛してるなんてほざく酔っ払いには、結局まともな告白すらさせて貰えず、
「好きだし愛してると思うけど、それが恋愛としてかはわからない」なんて、ザックリとまだ血の止まらない致命傷を私にくれた。

映画好きで、創作をしてるアイツが「何も思い付かない」なんて泣き付いてきたし、なんて誰に言う訳でもない言い訳まで作って、
クソ野郎へ電話した。

出なかった。通じなかった。
仕事中だったのかな、
マナーモードなのかな、

その後も夜勤だったらしいと聞いていつ連絡すればいいかもよく分からなくなり、お互い返信は12時間ごとくらいで、

今日まで結局1度も電話なんかできてない。

「映画みたいにはいかないか」

現実は甘くない。
そう思った時思い出したのは映画のタイトルである。
最初、やけに攻撃的でパンチの効いた、でも随分ふわっとしたタイトルだな、と思ったけれど、

この映画の主役を務めた3人は、あの時のメディアや世間の大騒ぎの渦中にいたのだ。
様々な勝手な憶測が飛び交い、スポーツ紙やネットニュースの見出しさえ、世間は何が本当か、何が起こってるか分からなかった。
解散のきっかけの悪者にされたメンバーも何人もいた。
というか5人しかいない中、何も叩かれなかったメンバーなんていなかったんじゃないかと思う。
解散してからも、長年続いたレギュラーの終わりもいくつもあった。
今や普通にCMやニュースでさえ観れるけど、脱退した3人はもうTVでは観れないんじゃないかとも思った。
私はただのお茶の間で紅白や歌番組のトリで、当たり前のようにスポットライトを浴び続けるSMAPしか知らない。
何の真実も知らない。
だからどんなに考えても3人の本当に過ごしてきた日々も3人の本当の気持ちも解らない。

だけど傍から見て彼ら、(SMAP)への世界は決して優しくなかったと思う。
こんな私が怒りを覚える程、激しい向かい風と強い風で身体へぶつかる砂や砂利、もしくは石の痛さ、風だけでなく容赦なくぶつかる強い雨。
向かい風の反対、背中にも石は飛んできたかも知れない、なんて。
知らない解らない馬鹿なりに想像する。
(わからないからって思考を止めるのは目の前の人を見て見ぬふりするのと変わらない気がするから。)

そんな彼らは、私にとって美しき人で、美しき人が少しでも苦しむのなら、私はこの世界をクソみたいな世界だと呼ぶだろう。

だれど彼らは、
「クソ野郎と美しき世界」と言った。

誰が決めたのか分からないけど、
私の何億倍も気高い強い、優しい彼らが、演じたのは"クソ野郎"。

何だそれ。
カッコよすぎないか??
やっぱりズルい。
新しい地図ズルいな!!!

そして最高にズルいのは、POP UP SHOPにて、乙女達へウンコを食べさせていること。(※可愛いベーグルです)

そして映画の歌の通り、1番好きな人に電話をして、もしその人がこの映画を観たら、その2人の世界は大変なことになるかも知れない。
だって本当の恋の気持ちを打ち明けてしまったも同然なのだから。

なるほど確かにクソ野郎で、最高の映画である。

そして未だ奴とはまともに連絡出来ずにいる。

何一つままならないと思っていても、思いもよらぬ幸運が飛び込んでくることもある。

一寸先が闇か光かすら、この世の誰にもわからない。

嗚呼、なんて残酷で
愛おしい、
美しき世界だろうか。

~終~


あとがきと反省文。
(なにも知らない癖にわかったような耳障りの良い言葉で好き勝手長々と、ごめんなさい。
3人と3人の本当を知り支え合う仲間達にここで謝罪させて頂きます。)


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