忘れちまった流行語

7年8ヶ月もの間、内閣に人事を握られた官僚機構は石橋を叩いて渡るように言葉を壊してきた。新政権はさっそく言葉が通じない。
それでも流行語大賞が決まる。

政治家が決めた「不要不急」という物差しと照らし合わせて、いざという時に自分はこうも簡単に切り捨てられてしまう存在なのかと打ちのめされたアーティスト達は言葉を失った。
それでも流行語大賞が決まる。

みんなマスクをしていて、予防原則的に必要最低限のコミュニケーションしかできない。音楽の授業では生徒は教師から「心の中で歌いなさい」と言われる現実があった。
それでも流行語大賞が決まる。

ネットは構造上、ほぼ見たいものしか見る事ができない装置。確証バイアス。自己洗脳。言葉の伝播。言葉の感染。やがて言葉は日常的に人を傷付ける凶器になった。
それでも流行語大賞が決まる。

しかし私達がここまで来る間、確実に言葉は人と人とを結びつけたし、言葉は癒しを与えたはずなのだ。
今、私達に必要なのは、壊れた言葉を結びつけ、血の通った言葉として治す事。

世界が壁で覆われる前の。
大地が揺れて爆発した後の。
構造上の流行語。
忘れちまった流行語。
これから始まる流行語。

#詩


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