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1982年生まれの私が読んだ『1973年に生まれて』--速水健朗『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』(東京書籍)
私より約10歳上の人が書いた80年代、90年代、2000年代、2010年代の振り返り。1973年ごろに生まれた有名人の活躍や、時代時代の社会問題・事件、テクノロジーの変化を紹介する。私は、さすがに80年代の記憶、とくに「大人のこと」である社会問題等はうすぼんやりとしか覚えていないが、90年代以降は「あるある」ものとして読めた。 筆者は50歳(去年の本なので)、私も40代にさしかかり、でてくる有名人(の若いころ)はけっこう年下なので、有名人と比べてもしょうがないと思いつつ、今
抽象と具体のモノサシのどこに位置しているかを考えると世界がクリアになる――細谷功『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』(dZero)
(2020年1月28日シミルボン投稿の再録) まずは抽象的な話から。 私たちが言語・数字・図を使って、普段なにげなくおこなっている抽象化は、実は極めて私たちの知性に特徴的なものである。言葉をもたない存在は、目の前にある個別具体的なものを認識しても、それ以上、広げようがない。が、言葉を介して抽象化を行うことで、私たちは個別具体的なものから、一般的な法則を生み出す。この法則は、また別の具体的なものへと当てはめられる。 という抽象的な話だけではピンとこないと思うので、次に具体
テクノロジーが原因の問題をさらなるテクノロジーで解決できるのかーーエリザベス・コルバート『世界から青空がなくなる日』(白揚社)書評
怖いものは好きだ。SFパニック映画も、ホラー映画もけっこう見る。でも、怖さにはいつしか耐性つき、たんなる「まんじゅう怖い」的な、怖いと言っておきながら実は怖くもなんともなく、好んでしまう。その程度の「怖さ」かもしれない。本当の怖さは、しかし、SFにもホラーにもなくて、現実にある。本書のサブタイトルは「自然を操作するテクノロジーと人新世の未来」である。人間の地球上での活動があまりに広範囲・影響大のため、地質学的に新しい区分に入ったのではないかと主張する論者がいて、その新しい名称