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ケーブル交換について。(オーディオのお話)

販売元を務めるBJ ELECTRIC社のケーブルを、多くの方に納めさせていただいております。本当にありがとうございます。そのケーブル販売なのですが、実はここ1年くらいで起こっている不思議な現象があるのです。あ、怖いヤツじゃないです。

数ヶ月サイクルで出荷されるアイテムが推移するのですよ。『なんかデジタルケーブルがよく売れるなー』と思っていると『あれ?なんでこんなにスピーカーケーブルのご注文が多いのだろうか』とか、いやホントなんですって。

RCAケーブルは、ずーっとコンスタントに出荷されているのですが『その時々で旬なケーブル』があるのかな。今はUSBケーブルが美味しいよー、みたいな。複数のユーザーさんに事情を伺ってみても、特に新調したオーディオ機器があるワケではなさそうなのです。なんかよくわからないけど、そういう現象が起こっています。とても不思議です。

反面『どこから食べたらよいのか?』に迷われる方もいらっしゃいます。

良い機会なので、今号ではワタシが考える『オーディオのケーブルって、どの部位から交換を検討すればよいのか』について書いてみようと思います。参考にしていただければ幸いです。


*自説を語るなら出自を明らかにしなきゃね。

まずは『自分の生い立ち』をお知らせしなきゃいけないと思います。ワタシはこういうお育ちでして、その経験に基づいて書いていますよと。そうじゃなきゃ持論の根拠がわかりません。なので簡潔に明かします。今更ですけども。

1968年3月生まれの56歳です。

ギタープレイヤーとして生きていきたかったのですが、20代中盤で夢破れました。あーこりゃ無理だと。でも一応大手のチケット販売会社からライブのチケットを売ってもらえるところまでは頑張りました。今でも楽器は触っております。

夢破れて1996年にハーマンインターナショナルっていう会社に就職します。JBLとかMark Levinsonとか扱っているオーディオ商社です。20年勤務しました。そのあと独立して、数社のオーディオメーカーや輸入元の用心棒をやってます。いまでもやってます。

ちょっと特殊技術なリマスターエンジニアもやってます。

ザーッと、そんなところです。
そんな経験から自分なりに得た感触を書きます。でもこういう趣味の世界っていうのは様々な考え方があって、きっとそのどれもが語り手の経験に基づいているので、ワタシの考えが絶対に正しいとは思っていません。なので違和感を覚えるようでしたら今号はスルーしてください。



*電源が大事。

オーディオも楽器も同列に考えています。『電気の供給を必要とする機器』が本来のパフォーマンスを発揮できるよう、まずはキチンと電気を供給してあげたいと思うのです。具体的にはアンプとかDACとかCDプレイヤーとか。要するにパッシブなスピーカー以外の機器にキチンと電気を供給する。

俗にいうクリーン電源など、アクティブな回路によって電気を精製する機器を用いると、確実にその精製機器固有のキャラクターが音色に反映されると思っております。なので個人的にはクリーン電源を使わない方針です。

上質なパッシブ電源フィルターや信頼できる電源ケーブルを用いて、電源供給を安定させる。これがケーブル交換の第一着手点と考えています。

余談ですが『ブラウンサウンド』と名付けられ、ロックギタリストの規範と讃えられたエドワード・ヴァン・ヘイレンさんのギタートーンは、電圧管理がキモだったと言われております。そのセッティング内容には諸説ありますが、本当のところはご本人だけが知り得るレシピなので、きっと誰も完全再現はできないでしょう。

オーディオ機器においても、電源環境を整えると驚くほど音色が変わります。そりゃそうですよね、機器にとってみれば電気は『ごはん』ですから。美味しいごはんを食べさせてあげましょう。



*上流から。

機器たちが嬉々として動いてくれるようになって、それでも音色に不満が残るようならば、ワタシはシグナルの上流からケーブルの交換を検討します。アナログレコードを聴くのであれば、トランスやフォノイコライザーを結線するケーブル。シェルリードについてはカートリッジとの相性もあるので都度適宜かな。デジタルであればDAC周辺。要するにS/PDIFとかUSBなどのデジタルケーブルから。

その次はソースからアンプへの経路。その次にスピーカーケーブル。逆説的に申せば、スピーカーケーブルの交換はいちばん最後に検討します。

システム全部位において、一旦は同一メーカーのケーブルを使うと音色の基準値が出来上がるでしょう。良心的なメーカーの製品は、どのカテゴリーのアイテムであっても『嗚呼、同じメーカーの製品だな』と思える特性をもっていると思っています。

その上で『もうちょっとこうしたいんだよなぁ』な欲求が発生するようなら、これまた上流から違うメーカーの物に差し替えてみる。

今はケーブルも大変に高価ですからね。一旦は同じメーカーでって簡単に言ってますけども、まずはそのメーカーの選定が命がけ事案です。

ってことは、それを勧めてくるメーカーなり販売店スタッフの出自がやっぱり大事だと思うのです。『この人が言っていることと自分の感性は合致するのか?』が一番大事な確認検討事案ですね。



*ご注意ください。

ケーブルなどのアクセサリーを交換したとき、みなさんよく口になさるのが『音の情報量が増えた』というフレーズ。コレ、間違ってはいませんが注意が必要です。

アナログだろうがデジタルだろうが、音源に収まっている音楽データは不変です。そもそも音源の情報量は増えないのです。(擬似的アップサンプリング処理をした場合を除く)

ケーブルを変えて情報量が増えたと感じたなら、それは以前に使っていたケーブルより新調した物の方が『情報欠損が少ない』だけです。オーディオシステムにおいては、あらゆる部位において『情報の欠損』が起こっています。この欠損を極力減らして、シグナル伝達の純度を上げていくのがHi-Fiオーディオの醍醐味です。High-Fidelityってヤツです。(ぜひ和訳してみて)

そして『増えたように聴こえるけど・・あれ?』という物もあります。ケーブルの素材はただの電線なのですが、その組み上げ方によって『ナチュラル派』にも『あざとい派』にもキャラクターを設定することができます。増えたように聴こえるけど、実際には『フォーカスされるポイントが際立っただけ』なんていう場合もあります。冷静な判断を下せる心持ちも大切です。



*ご相談くださいまし。

冒頭に申し上げましたが、今号で書いたことは経験に基づく個人的な持論です。違うお考えの方も当然いらっしゃるでしょう。

でももしワタシが書いた内容にご興味を持っていただけるようでしたら、そして何かお困りでしたらお声をかけてください。今のところケーブルについてはBJ社の物をご案内するヒトですが、機器類については選択肢をご用意できます。

そしてコレも大事な事案ですが『趣味が頭痛のタネ』になっては本末転倒です。音楽鑑賞ってのは文字通り『音を楽しむ』娯楽ですから、どうか機器選定の『沼』にハマって苦しまないでくださいね。ハマるのが楽しい、とも言えますが。

お客様に無駄遣いをさせないよう、ワタシも頑張って勉強しときます。

ではまた。
2024.4.17



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