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生涯探求のミチ。(オーディオのお話)

かつて、ナカミチ株式会社というオーディオ機器メーカーがありました。1948年に創業し、残念ながら2000年代に終焉を迎えます。銘機をたくさんリリースした名門です。


*ナカミチって。

ナカミチというメーカーの名前、聞いたことありますか?触れてみたことありますか?ナカミチ製品に。

幸運なことにワタシはこの名門が閉じてしまう前から業界に生息していたので、製品の佇まいを知っています。そして名門に属していた何人かの方とも面識があります。

どの製品も『軽薄ではないカッコよさ』を纏っていた記憶が鮮明ですが、実際に所有したことはなく、よってこのメーカーの本当の凄さを味わうことはできませんでした。黒くてゴツくて頑固そうで、おいそれとは手を出せなかった。

そんなナカミチ製品を蒐集し、大切に稼働させている変人(最大の褒め言葉)がいます。かねてよりこの方とは面識があったのですが、なかなか深くお話をさせて頂く機会に恵まれず『なんかチョー変人さんがいるけど、いったいこのヒトは何者なのだろか・・』と、遠くから様子を伺っていました。


*蒐集家さんからお声が掛かって。

変人さんはこのヒトです。

ワタシが販売元を務めるBJ ELECTRIC製品にご興味を持って頂いたようで、ケーブルをお求めくださいました。で『せっかくですから、ケーブルを持って遊びにいらっしゃいませんか?』とお声をかけて頂きましたので、もうホイホイとありがたくお誘いに乗っかりました次第(持参納品ですな)。

私設ナカミチ館、正面の図
右側面の図
アナログプレイヤー、DRAGON-CT。
正常に動く個体を初めて見ました。
ものすごい機械です。マヂでタマゲました。

ひ、ひえー変態すぎる。。私設ナカミチ館、凄すぎる!本当に圧巻です。しかも『ココにあるモノ以外にも、まだ・・』と。どんだけだ!

そしてなにより凄いのは『コレクション全部が稼働品』であるということ。ちゃんと動いて機器本来の仕事をしているのです。ホンキでビックリしました。そしてようやくワタシは『ナカミチの凄さ』を体感できたのです。これはものすごく貴重な体験ですし、大変勉強になりました。



*古いモノを大切に愛でるということ。

ココにある『一番新しい製品』であっても発売から軽く20年を経過しているワケですからね。蒐集家Tさんはエンジニアなので、個体を仕入れてきては自身でコツコツとメンテナンスしている様子。

ワタシも古いモノが好きです。なんというか、今の工業製品とは違うエネルギーを発しているように思えるのです。ドスが効いているというか。

ナカミチ製品のクオリティ、発するサウンドはまさにそんな感じでした。こんなに素晴らしい国内メーカーが存在していたんだなって改めて感動。

プロダクトについては『この時代にこんな事まで考えて製品を作っていたのか!』と驚愕。サウンドについては細かい解説や解釈なんて必要としない重厚な説得力。嗚呼もう門を閉じてしまったんですよねナカミチ。今更ながら本当に残念です。


*羨ましいです。

今号のタイトルに繋がりますが『一生探求するのだ!』というほど好きになれる対象に出会えたTさんを心底羨ましく思います。結局は『好きこそものの上手なれ』なのです。そしてプロとして本気で探求しているワケですから、絶対に『ヘタの横好き』にはならないのです。

深く考えさせられました。

そしてコレらコレクションは世界遺産です。稼働する実物モデルがココにあるのですから、どうにかして世の中に情報を伝え残していかなければならないと思うのです。ワタシにお手伝いできることは何かないかなぁ。とりあえず、もうウルサイわ!といわれるくらい、伝承のアイデアをTさんにぶつけていこうと思います。


*そしてチャッカリ入手。

ナカミチ館の作業ブースに足を踏み入れた時、目にしてしまったのです。

無造作にブラ下がっているけど!

ここここ、コレは!
90年代、ワタシが知るナカミチの営業さんが持っていたバッグ!カッチョいいなぁって思っていたのですよ当時。

『あのー、予備なんて持ってないですよね?』と、図々しくも質問。
『ありますよ!』ですって。うひゃー!

デッドストックを入手!

譲って頂きました!チョー嬉しい!大切にします。


*今週のまとめ。

アッチもコッチもナニもカモ値上げな世の中です。そしてワタシが取り扱っている物品は、生きていくために全然必要のないモノばかり。

でもね、必要はないけど価値を理解できたら絶対に生活が豊かになります。

Tさんが所有するような、いわゆる『極上コンディション』な古いモノを入手するってナカナカ大変です。入手できたとしても完調を保つために手間もかかります。でも愛でることで持ち主も古いモノも幸せになっていくのです。そういう『愛のカタチ』って、とっても素敵です。

いまワタシの手元にあるモノ、いつまで一緒にいてくれるかなぁ。とか。

Tさん、楽しいご縁を、ありがとうございます。

ではまた来週に。
2023.9.6





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