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星切り迷い星

昔々、太陽と月と星とが同じ空にいた頃の話です。

ある時、父の太陽と子供の星々が仲違いをしてしまいました。
母の月は、仲直りの為に太陽と星々とを説得しました。
しかしそれでも星々は北極星に連れられて出ていきました。
そしてこの世は昼と夜と二つに分かれたのです。

月は皆を愛しています。
そう、月は今でも皆を仲直りさせるため、
昼と夜とを行き交っているのです。

そして明けの明星と宵の明星だけは、
番人として昼と夜とに目を光らせているのです。


「――というように、昔の人々は明けの明星と宵の明星を別物と考えていたのだな。また別の説話では、月は太陽の光を分けてもらいそれを星々に与えるというものもある。これは月の満ち欠けを説明しているが――」

教会の学び舎から声が聞こえる。
そばの通りを一人の青年が決然と歩いていた。旅装束に鮮やかな赤毛と整った顔立ち、そしてその瞳の奥には、人には抱えきれぬほどの煌めきが湛えられていた。

【続く】

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