みょうが愛
現在33歳。
遅ればせながら、薬味の美味しさにハッとさせられている。
なかでも、茗荷はダントツで1位。
子供のころは見向きもしない食材だった。いや、食べ物とも思っていなかったようにおもう。球根を長細くしたような形に、赤とも紫とも違う奇妙な色味の、あのへんてこなものが食卓を彩る名脇役だったと知り、大人になったことを実感する。
仕事帰りの旦那と歩いていたときのこと。
「晩ごはんは素麺が食べたい」
と私がつぶやくと、旦那がひとこと、
「茗荷が食べたいにしか聞こえないよ」
とボソリ。
自分では意識していなかったことなので少し驚いたが、「ミョ・ウ・ガ」と聞いて口の中いっぱいに、あのなんともいえない風味と清涼感が広がりだした。
私は、茗荷が食べたかったんだ、と気づく。
茗荷を食べ過ぎると馬鹿になる、とどこかで聞いたことがある。たしかに、昔は薬として扱われていたようだし、食べ過ぎるはよくないだろうが、どんな食べ物だって同じことが言えるだろう。
これは今、知った知識だあるが、体を冷やす夏野菜が多いなか、この茗荷ときたら、体を温める効果があるというじゃないの。
食べ過ぎると馬鹿になるなんてバチが当たりそうだ。
今年も夏がやってきた。
近所のスーパーには、プラスチック容器のなかに、茗荷が3つばかり並んではいっている姿が見られるようになった。すぐさま買い物かごに1パック入れる。1パック分の重さはたったの50グラム。
私のこころには、それ以上の幸福な重さが感じられるのである。
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