旅
旅はいつだって小さじ一杯の寂しさがつきまとう。
旅は、一般的には明るく前向きなイメージがある。
実際、その通りだと私は思う。
前向きなのだが、ちょっぴり寂しさがあるのだ。
どうしてだろうと考えると、旅は私を大きく成長させてくれて、それと同時に古い自分を置き去りにするからだ。
たとえ劇的な変化でなくても、私は旅に行くことで変化し、以前の私を多少なりとも失う。
新しく見るもの、触れるものを吸収するだけ吸収する。
目に見えないことだし言葉にするのは難しいかもしれないが、それはふとした瞬間に感じることができるものだ。
古いアルバムを見たときに感じる、ちょっとした寂しさ。
このときの自分はもういないという懐古の念。
手を伸ばし、過去の自分と手を繋ぎたくなることもある。
だけど、旅にでて大自然のなかでキレイな水に触れることで、雨上がりの森の匂いを嗅ぐことで、その手はゆっくりと下げられ、
私は新しい自分と手を繋ぐのだ。
うしろをふりむくと、寂しそうにこちらを見つめている過去の自分がいる。
旅とは、昔の自分との別れの儀式なのかもしれない。
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