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にんにく後奏曲

今日はキーボードを打つ指に力が入る。

できればテンポよく完走したい。

なぜなら、タイトルを後奏曲にしようと決めてしまってから書き始めたからだ。

にんにく後奏曲。

あの独特な成分アリシンによる香りがしてきそうではないか。

先日、旦那の元会社の同僚の方たちと食事に行った。

私は部外者だが、旦那から話を聞いたり

お会いするのも3度目なので緊張感もない。

一人ひとりが個性的で優しい人たちだ。

なによりグルメ通だ。

今回のお店は、細い路地を曲がったた雑居ビルの二階。

ややもすると、見過ごしてしまうような場所にある店だった。

柚木麻子さんの小説「ランチのアッコちゃん」にでてくるお店も、

たしかこんな風な路地裏だった気が!

お店に入る前から私は高揚してしまった。

高知の郷土料理を提供する店だったのだが、

「番外編で薬膳カレーも美味しいから、ぜひ食べてみて」

と教えてもらったので、注文。

う、うまい。

風邪をひいていたら、

一気に吹き飛んでしまいそうなくらいスパイシー。

(風邪ぎみのときすぐにカレー食べたくなるもんで)

くたくたに煮込まれ、ほぼその姿は見受けられないが、

野菜のうま味も溶け出していることがはっきりとわかる。

のみこんでしまったあとも存在感を放っているのは、

カレーには欠かすことのできないニンニクだ。

私は、美味いものを食べると頭のなかで実況してしまうのだった。

実況しながら、テーブルの下で、私の足がくねくね踊る。

すると、向かいに座っていたAさん(女性)が、

「どうしたら料理が上手くなりますか?」

と聞いてきた。突然の質問におどろいた。

☆彡☆彡☆彡

私の仕事は家事代行だ。

家政婦さんと言ったほうがわかりやすいかもしれない。

通っている場所は、70代のご夫婦がお住まいのお宅。

掃除のほかに料理もする。

料理のことをいうと、

そのご自宅にお住まいの方の好みお味付けとなる。

始めのころは、「味付けが薄い」と言われた。

調理中、なんども味見したが薄いと思ったことはなかった。

見ていると、ご夫婦とも塩コショウを「爆使い」する。

とにかく大量にふりかけるのだ。

加えて、私が関西人ということもあり、

だし文化が染みついているときた。

関東人からしたら薄味らしい(旦那談)。

ご夫婦の娘さんは、少なからず親の体を心配している。

私は、自分の家で試行錯誤をした。

そうこうしているうちに、コロッケを作ってほしいと頼まれた。

コロッケに、塩コショウは必ず入れる。

私は、「爆」をどうしても避けたい。

さあ、どうする。

冷蔵庫のなかを見ると、

ニンニクが丸ごと転がっていた。

コロッケには、いつもコクと香りがでるように、

ニンニクを1カケか2カケ擦りおろして入れる。

これを増やしてみよう。

そう思いたち、いつもの倍、4カケ擦りおろした。

結果は、◎

倍入れたことで、まず、香りが主張してくる。

塩コショウを大量に入れなくとも、

スパイス的な役割を十分に果たしているのだ。

じゃがいもとタッグを組み、

ほくほくと口のなかで後奏曲を奏でる。

ニンニクは、その存在感がゆえに、重低音が似合うと思う。

☆彡☆彡☆彡

さて、わたしのAさんに対する回答だが、

「生姜かニンニク入れてれば大抵美味しくなります」

だった。

あの言葉は、咄嗟の回答だったとはいえ間違っていなかったようだ。

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