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熟慮買い

今、私のとなりにある椅子の上に、一足の靴が鎮座している。

紺の革に赤のラインがはいったサボサンダルだ。

赤のラインの延長にはハートのモチーフが施されている。

あまり見ないデザインにグッと惹かれた。

ビンテージだからだろうか、甘すぎない印象があり、

洋服のコーディネートがしやすいだろう。

実際に履いてみる。

うん。今年、すでに靴下を冷えとりのために4枚重ねてはいている私だ。

いつもの足の大きさプラス1センチとは言わないが、

だいぶ大きく膨らんだ私の足にも馴染んでいる。

ということで、購入に至った。


衝動買いではない。

ここにたどり着くまで、私は4回、同じ店を訪れている。

このサボサンダル目当てでだ。

毎回、店を訪れては他の商品には目もくれず、

サボを手にとって鏡で合わせ、根ばちっこくサボサンダルを見つめてきた。

そうするだけで、買うこともせず帰っていく私を、

店員さんはどう見ていただろう。

気に入ってはいたのだ。

ほとんど買う方向にも気持ちは動いていた。

だが、以前、フリマアプリで靴を購入し、

サイズや印象が違い、失敗した経験があったので、

靴に関しては必ず現物を見て、試していこうと決めた。

また、もうひとつ決めたことがある。

時間をかけて手に入れるということだ。

本当に欲しいものなのか?

本当に必要なものなのか?

自分の気持ちに変化はないか?

じっくりと観察する時間が私には必要なのだ。


このサボを手に入れるために費やした時間、

そして労力はいかほどだっただろうと考える。

何かのついでに寄れるほど、家と店が近いわけではない。

サボを試し履きできるようにと、冷えとり靴下を持ち歩いたりしていた。

誰かに買われる可能性は十分にあった。

しかしこのサボにはいつもうっすらとホコリがついていて、

誰かの指の型がついていたことはなかったことから、

このサボを狙っているのは私だけなのかもしれないと踏んでいた。

だから思う存分、現物を見て、わたしは、

本当に欲しいものなのか、

本当に必要なものなのか、

自分の気持ちに変化はないか、

を、しっかり吟味することが出来た。


結果、いま私のとなりに、このサボが鎮座している。

時間をかけて手に入れたモノは、やはり格別の思いが乗っかっている。

誇らしいではないか、な、サボよ。

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