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◎ボビー・コールドウェル追悼~ボビーと日本で使われる「AOR」という言葉

◎ボビー・コールドウェル追悼~ボビーと日本で使われる「AOR」という言葉
 
【Bobby Caldwell Tribute】
 
(本作・本文は約3000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ6分から3分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと10分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)
 
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◎ボビー・コールドウェル追悼~ボビーと日本で使われる「AOR」という言葉
 
【Bobby Caldwell Tribute】
 
訃報。
 
シンガー、ソングライターのボビー・コールドウェルが2023年3月14日、アメリカ・ニュージャージー州の自宅で死去した。71歳。この6年2カ月ほど、闘病していた。
 
3月15日夜11時25分に奥さんが正式にツイートしたので、それを引用して僕もツイートした。
 
公式 訃報1 ボビー・コールドウェル Bobby Caldwell 2023年3月14日までに死去。71歳。長く体調を崩し約6年2カ月闘病していた。公式ツイッターで妻が報告した。日本で言う「AOR」アーティストの中でもっとも人気のあったブルー・アイド・ソウル・シンガー。来日多数。親日家。詳細後送。
 
Bobby Caldwell
@bobbycaldwell
3月15日午後11時25分
 
Bobby passed away here at home. I held him tight in my arms as he left us. I am forever heartbroken. Thanks to all of you for your many prayers over the years. He had been "FLOXED," it took his health over the last 6 years and 2 months. Rest with God, my Love. -Mary Caldwell
 
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葬儀は3月20日、ニュージャージーで行われる。
 
Visitation will be Monday, March 20 from 2-4 pm and 7-9 pm at Cochran Funeral Home, 905 High Street, Hackettstown, N.J.
 
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デビュー時のこと。
 
ボビー・コールドウェルはマイアミのTK傘下クラウズから出たシングル「ワット・ユー・ワント・ドゥ―・フォー・ラヴ」を当時TKを日本で配給していたCBSソニーの担当ディレクター、黒田日出良さんから聞かされたのが初めての出会いだった。たぶん、1978年の10月頃だと思う。
 
市ヶ谷の黒ビルのオフィースで、黒田さんから、「吉岡さん、これ、聴いて聴いて」と言われて、来たばかりの7インチのシングル盤をレコード・プレイヤーで聴かされた。たぶん、僕に声をかけてきたのは、僕がゴリゴリのソウル好きだったからだということ、TKからの新譜だということ、先にソウル・チャートでヒットし始めていたからだと思うのだが、それを聴いての最初の僕の反応が、「いい曲ですねえ。でも、これ、白人でしょう?」というものだった。正確な言葉は覚えてないので、ひょっとしたら、「これ白人でしょう? でもいい曲ね」だったかもしれないが。「でも、ソウルフルで、ブルーアイド・ソウルのシンガー?」「スティーヴィー(・ワンダー)風ね」みたいな会話になったような気がする。あるいは、ひょっとしたら、すでにアルバムがアドヴァンス盤(あるいは輸入盤)で来ていて、それを聴かされたのかもしれない。ちなみに、僕は1978年11月に輸入盤を手に入れていたので、すでに輸入盤アルバムはきていて、その頃だったかもしれない。
 
ちなみに、ビルボードのチャートではソウル・チャートに1978年10月14日付ではいり、その後6位を記録。ポップ・チャートではそれから2カ月後の12月23日付けでチャートイン、最高位9位を記録する。先にブラック・ラジオで火がついたのは、当初の狙い通りだった。そして、ポップよりもソウル・チャートでのほうが受けたというのがおもしろい。


日本盤がでるときの宣材。このレコード盤自体は輸入盤。


 
黒田さんは、「これ、いいでしょう、いいでしょう。絶対ヒットしますから」とえらく鼻息が荒かったのをものすごくよく覚えている。
 
そのとき、彼がすでに「風のシルエット」という秀逸な邦題を考えて、つけていた。これはアルバムのジャケットからイメージを取ったといったので、アルバムか、あるいはそのアートワークが来ていたのかもしれない。ただしアルバムの邦題は、『イヴニング・スキャンダル』なので、やはりシングル盤を聴かされたのか。僕はその邦題に、黒田さんのセンスを強力に感じていて、「うまいタイトルをつけるもんだなあ」と思っていた。
 
シングルがたしか年末か年明けすぐにでて、アルバムの日本盤は1979年3月21日に発売された。
 
ライナーを見ると、2月11日に、なんとボズなどに強い、そしてのちに「AORマスター」的な存在になる吉成伸幸さんが書いている。
 
興味深いのが、ここで吉成さんは「AOR」という言葉を「Adult Oriented Rock」の略としてすでに書いている。
 
ライナーノーツから一部引用してみよう。
 
(引用ここから)
「AOR(Adult Oriented Rock)」と呼ばれるこの新しい傾向は、音楽を定義づけるものでもなければ、単なる新造語のキャッチフレーズでもない。否定しようのない、明らかな傾向なのである。そしてこれは、何よりも聞き手側が感じ取るべきものだ。
 ボズ・スキャッグス、ビリー・ジョエル、といったアーティストがAORと関連づけて紹介されている事も、彼らの音楽性が徐々に認められてきた’70年代後半の一般的な状況と合わせて考えれば、うなづけるに違いない。要するに、現在だからこそ共感を覚える事ができる、という時代的背景の問題である。」(文・吉成伸幸)
(引用ここまで)
 
 かねてから、日本で言う「AOR」という言葉のニュアンスの使い方はいつからあったのか、気になっていた。
 これはもともとアメリカのラジオ局のフォーマットを指す言葉から派生し、それらをかける音楽ジャンルを指す言葉になっていった。
 
僕は当初AORという言葉をAlbum Oriented Rock と業界誌に書いてあったのでそういう意味で知ったが、それがいつのまにかAdult Oriented Rockになっていたなあと思っていた。ラジオ局のフォーマットではAdult Contemporary(略してA/CあるいはAC) という言葉がアメリカのラジオ業界で広まっていたので、それらとどこかで混同してしまったのではないか、と見ているが、正確なところはよくわからず、そのあたりの事実関係を以前からはっきりさせたいとは思っている。ただし、このボビーのデビュー・アルバムのライナーで吉成さんがAOR=Album Oriented Rockと書いているのだから、ボビーが初期AORアーティストということになったといってもいいのだろう。ただし、ここでいうアルバム・オリエンテッド・ロックは、現在のような西海岸の聴きやすいサウンドということには必ずしもなっていない。
 
僕は、それこそ、日本で言うAORがちょっとした話題になり始めたのは、1980年のクリストファー・クロスあたりからではないかとみているのだが、まあ、これが1979年3月発売なので、このあたりでもいいのだろう。
 
あと、ボビーのことは「キング・オブ・AOR」と言われるが、これはいつから、誰が言いだしたのだろう。これも、ちょっと時間があれば、調べてみたいところだ。
 
僕は彼のことをずっとブルー・アイド・ソウル・シンガーとして認識していた。1979年の初来日は中野サンプラザで見た。バックドロップが『風のシルエット』と同じようなデザインの大きな夕日になっていたことを覚えている。
 
(この項、続く)
 
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