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〇デイヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』~すべてをそぎ落とした究極なプリミティヴ・ステージ・ライヴ

〇デイヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』~すべてをそぎ落とした究極なプリミティヴ・ステージ・ライヴ

【American Utopia : Ultimate Primitive Stage Live Film】

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(本作・本文は約6000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ12分から6分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと20分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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(映画の内容に触れます。すでに多くの方がごらんになっているとは思いますが、未見で事前に情報などを見たくない方はご注意ください。未見で見るかどうか迷っている方などはどうぞ)

〇デイヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』~すべてをそぎ落とした究極なプリミティヴ・ステージ・ライヴ

【American Utopia : Ultimate Primitive Stage Live Film】

1.ユートピア(理想郷)。

「アメリカの理想郷」というタイトルを掲げたデイヴィッド・バーンのマルチ・メディア・プロジェクト。その映画化されたものを見た。デイヴィッド・バーンが考える「ユートピア(理想郷)」とはどんなものか。現状の世界を切り取って描くことで、その反面教師的にその姿をおぼろげに浮かび上がらせる。これは、そのプロジェクト、つまり、アルバム→コンサートライヴ→その映画の映画部分だ。

2021年5月28日(金)公開!『アメリカン・ユートピア』予告編 70秒


https://www.youtube.com/watch?v=IcRF9HSZRGA


公式サイト


https://americanutopia-jpn.com/

公開劇場


https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=americanutopia
現在公開中。

元々デイヴィッド・バーンは自身のグループ、トーキング・ヘッズ時代から強烈に世界各地の音楽、リズムを取り入れることが圧倒的だった。特に、ブラック・ミュージックの取入れ方はハンパではなかった。彼は土着的なリズムを少し洗練させわかりやすくし、だから、彼のリズムの強烈な曲は、白人には踊りやすく、ディスコでも歓迎された。しかも、ちょっとしたシンプルな振り付けを施し、見た目もエンタテインメントにする。ブラック・ミュージックの取り入れ方は、デイヴィッド・ボウイやミック・ジャガーなどとも同じ匂いを感じる。これほどのリズムの取入れへの執着はすごい。でも意外なことにブラック側から搾取されているという批判がでないところがちょっとおもしろい。その辺の塩梅がうまいのかもしれない。

アメリカンユートピア3 横に手を広げてる

(全員裸足)

このライヴ映画の第一印象は、「おおっ、全員裸足! しかも、同じグレイのスーツ」ということ。この裸足というところが強烈に印象に残った。かつて、たびたび来日しているレイラ・ハサウェイがいつも裸足でステージに上がっていたので、なぜ裸足なのか、と聞いたことがある。「(裸足だと)大地の鼓動を直接感じられるから、より大地(アース)に近いでしょう」と半分ジョークのように答えてくれた。今回のデイヴィッド・バーンたちが大地の鼓動を感じるために裸足かどうかはきいてみないとわからないが、おもしろいと思った。

そして、これは解説を読んで知ったのだが、すべての楽器、マイクがワイアレスになっているということ。それによって、コレオグラフィー(振り付け、ダンス)が圧倒的に自由にできることになった。しかも、肩のところには赤外線センサーが付けられ、それが上部からの照明にうまく連動できるように設定されているという。見た目は何もないようなシンプルなステージで、究極のプリミティヴ(原始的)なものながら、実はなかなかのハイテク・ライヴ(最先端技術)だ。超プリミティヴを超ハイテクで見せるというわけだ。

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2.タイムライン


今回のプロジェクトを時系列で並べると次のようになる。

2018年1月18日 アルバム『アメリカン・ユートピア』にさきがけてリード・シングル「エヴリバディーズ・カミング・トゥ・マイ・ハウス」リリース。今回のセットリストでもカギとなる曲。2度別ヴァージョンで披露される。

2018年3月9日 アルバム『アメリカン・ユートピア』発売。

2018年3月3日(米・ニュージャージー)~2018年11月25日(オーストラリア・アデレイド)まで145本 アルバム『アメリカン・ユートピア』発売をサポートするワールド・ツアーを敢行。アルバムと同じメンバー12人でライヴ実施。

2019年5月 同ツアーをブロードウェイ・ハドソン劇場で行うことを発表。

2019年9月 前ツアーを少し修正したヴァージョン、ブロードウェイ版をボストンで試演。同時に映画撮影の話も持ち上がり、スパイク・リーがボストン公演を視察。

2019年10月4日~2020年2月16日。ブロードウェイ・ハドソン劇場(139~141西44丁目、収容人数約970)でブロードウェイ版公演。この模様をスパイク・リーが撮影。

2020年6月 映画化について発表。秋口にHBO局で放送予定と発表。

2020年9月から ハドソン劇場で再演決定。しかし、コロナ禍のため2021年9月に延期。

2020年9月10日 映画『アメリカン・ユートピア』、トロント国際映画祭で公開。その後、ニューヨーク映画祭(10月3日)、BFIロンドン映画祭(10月14日)で上映。

2020年10月17日から。全米HBO、カナダクレイヴで配信公開。

2020年10月27日 ハードカヴァー書籍発売。

2021年1月11日 全米ブルーレイ(Blu-ray) (リージョンコードB/2)、DVD (リージョンコード2)発売。

2021年5月28日(7日から延期)から。日本で劇場公開開始。

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3.脳。

基本的には、この「アメリカン・ユートピア」は、CDアルバムとそのツアー・ライヴ、劇場用ステージの映画化で、テーマのアメリカン・ユートピアをサーチンする物語。

冒頭、デイヴィッド・バーンは人間の脳の模型を持ちだしてこういう。

アメリカンユートピア7 脳を見せる

「ステージ上から一番大切なもの以外をなくしたら、何が残る? 残るのは我々と(オーディエンスの)あなたたちだけだ」

「人間性を作り上げるのは、私たち自身のつながりだ」

人間が考えるそのすべての根源、脳。しかし、我々はそのほんの一部しか使っていない。そしてステージを究極に考えを突き詰めると、人間だけが残る、人間のつながりが残る。このメッセージは強烈だ。

楽器をステージ上に置くことを排除し、できる限り手持ちでやり、ワイアーを無線化してなくし、自由に踊れるようにし、そして裸足で歩き回る。すべてを究極までにそぎ落として見せるパフォーマンス。そして、行く先は nowhere (どこでもない、あてのない、わからない)ところ。

本作を最初の数分見て、「ソー・ニューヨーク!」と思った。まるでソーホーかヴィレッジあたりの小さなカフェか劇場でやられているようなライヴ&パフォーマンスのようにも思えた。ときおり入るデイヴィッド・バーン自身のナレーティヴ(ナレーション)によって、この100分余の物語がじっくり語られる。

BLM。

これの制作時期は2017年~2019年というのは、トランプが大統領になってしまったまさにアメリカの黒歴史の真っただ中にあった時代。後半、ジャネール・モネイの「ヘル・ユー・タルバウト」"Hell You Talmbout"(Hell, you talking aboutの意味)(お前、なんの話してるんだ?)では、多くの不本意に殺されてしまったブラックの人たちの名前をいくつもあげて、その彼や彼女の名前を声をだして言おうと歌う。まさに、最近の「ブラック・ライヴズ・マター」(黒人の命も大事だ)の動きに呼応したものだ。


Hell You Talmbout - David Byrne's American Utopia


https://www.youtube.com/watch?v=wVQdXB9xgpw

そして、エンディングは「ロード・トゥ・ノーホエア」。1985年のトーキング・ヘッズの『リトル・クリエイチャーズ』収録のヒットだ。

「アメリカン・ユートピア」をサーチンしながら行く道が「ロード・トゥ・ノーホエア」というのはあまりにはまりすぎだが、この曲のテーマは、目的地のないどこでもない場所へ向かうということ。あてどなくさまようというニュアンスでもいいかもしれない。そして、パラダイスを求めて旅をする。ここではパラダイスとユートピアはほぼ同じコンセプトだ。だが、この曲の矛盾は、目的地がどこかわからないがそこへ向かうということ。その点で言えば、「アメリカン・ユートピア」もまだ現実問題としてはなかなか形成されておらず、まだまだノーホエアなのかもしれない。

そんな時代を反映した作品だが、これを作っているときには、まさかこのようなコロナ・パンデミックが起こるとは夢にも思わなかっただろう。しかし、考えを突き詰めれば、結局、コロナ禍が我々に提示した人間同士の接見の禁止というものにこそ、人間の営みの本質があったということをこの作品は図らずも見せたのではないだろうか。

もしチャンスがあれば、デイヴィッド・バーンになぜ全員裸足にこだわったのか、そして、なぜスパイク・リーを起用したのか、このパンディミックの中で公開されていることへの意味などを質問してみたい。スパイク・リーの起用はご近所だということ、以前から接点があったからということのようだが、もっと詳しいことをきいてみたい。


■セットリスト アメリカン・ユートピア

Setlist:  Songs on American Utopia (Film)
( ) denotes the album song from

01. "Here" (from American Utopia)
02. "I Know Sometimes a Man Is Wrong" (from Rei Momo)
03. "Don't Worry About the Government" (from Talking Heads: 77)
04. "Lazy" (from Muzikizum by X-Press 2)
05. "This Must Be the Place (Naive Melody)" (from Speaking in Tongues)
06. "I Zimbra" (from Fear of Music)
07. "Slippery People" (from Speaking in Tongues)
08. "I Should Watch TV" (from Love This Giant)
09. "Everybody's Coming to My House" (from American Utopia)
10. "Once in a Lifetime" (from Remain in Light)
11. "Glass, Concrete & Stone" (from Grown Backwards)
12. "Toe Jam" (from I Think We're Gonna Need a Bigger Boat by The Brighton Port Authority)
13. "Born Under Punches (The Heat Goes On)" (from Remain in Light)
14. "I Dance Like This" (from American Utopia)
15. "Bullet" (from American Utopia)
16. "Every Day Is a Miracle" (from American Utopia)
17. "Blind" (from Naked)
18. "Burning Down the House" (from Speaking in Tongues)
19. "Hell You Talmbout" (from The Electric Lady by Janelle Monáe)
20. "One Fine Day" (from Everything That Happens Will Happen Today)
21. "Road to Nowhere" (from Little Creatures)
22. "Everybody's Coming to My House: Detroit" (End Credits)

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登場者
Cast

David Byrne – lead vocals, occasional guitar, percussion
Chris Giarmo – backing vocals, dancing, melodica, percussion
Tendayi Kuumba – backing vocals, dancing, percussion
Karl Mansfield – keyboards, backing vocals, musical director, percussion
Angie Swan – electric guitar, backing vocals, percussion
Bobby Wooten III – bass, backing vocals, percussion
Mauro Refosco – percussion, drums, backing vocals, musical director
Tim Keiper – drums, percussion, backing vocals
Gustavo Di Dalva – percussion, backing vocals
Jacquelene Acevedo – percussion, drums, backing vocals
Daniel Freedman – drums, percussion, backing vocals
Stephane San Juan – drums, percussion, backing vocals

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■関連映像


David Byrne Performs 'Everybody's Coming To My House'
1,080,096 回視聴2018/03/10


https://www.youtube.com/watch?v=07G4xhSefuI

David Byrne - Road To Nowhere - O2 Arena, London - October 2018


https://www.youtube.com/watch?v=qMJFyaKSt8Q

David Byrne - Road To Nowhere - New York - Hudson Theatre - 10/4/2019 - American Utopia


https://www.youtube.com/watch?v=r5E6f7TwLpM

Talking Heads - Road to Nowhere (Official Video)


https://www.youtube.com/watch?v=LQiOA7euaYA

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SUPER DOMMUNE 2021/05/28 「アメリカン・ユートピア」日本公開<祝>記念!! 「DAVID BYRNE’S AMERICAN UTOPIA」SPECIAL PROGRAM
19,212 回視聴2021/05/28 にライブ配信


https://www.youtube.com/watch?v=s8FWMAp3IhM

ほぼこのブログを書き終えてからいろいろ映像を探していたら、これがでてきた。第一部、おもしろかった。冒頭から1時間47分くらいまで、立川直樹さん、湯山玲子さん、森永博志さん、奥浜レイラさんのトーク・ショー。舞台と映画を両方見た司会の奥浜さんが、「ブラック・ライヴズ・マター」の名前と写真を出すところは、映画だけでステージではなかった、また、最後、メンバーが練り歩くところもステージではなかった、というので、ひょっとしてそこらへんは映画用の演出だったのかと思った。

第二部で高木完さんが、「(この映画)どこがスパイク・リーぽかった?」と疑問を呈していたが、僕も最初の数分を見て、なんでこの映画をスパイク・リーが撮ったのか疑問に思ったので、本人に聞いてみたいと感じたのだが、完ちゃんも同じように思ったわけだ。確かに、ジャネール・モネイ曲での演出などは、スパイク・リー色が出たと思った。このあたり、いずれいろいろなインタヴューなどで出てくるかもしれないので、そのときはまた改めてご紹介しようと思う。しかし、ドミューンのこのヴォリュームある特集はすごい。立川さんの、ちょこちょこ脱線で出てくる話がすごすぎるw

■19:00-23:00 「アメリカン・ユートピア」日本公開<祝>記念!!
「DAVID BYRNE’S AMERICAN UTOPIA」SPECIAL PROGRAM
■<第1部>CROSS TALK1「デイヴィッド・バーンの映画とスペクタクル、至福と熱狂!」
森永博志(作家)× 立川直樹(プロデューサー/ディレクター)× 湯山玲子(著述家、プロデューサー)
司会・奥浜レイラ(映画・音楽パーソナリティ)
■<第2部>CROSS TALK2「デイヴィッド・バーンの音楽とユートピア、加齢と進化!」
■小山田圭吾(Cornelius)× 高木完(Major Force Productions) × スケートシング(C.E)
× 立花ハジメ(PLASTICS)× 宇川直宏(DOMMUNE)
■<第3部>DJ SET for AMERICAN UTOPIA「デイヴィッド・バーンづくしのDJ PLAY!」
DJ Plays DAVID BYRNE ONLY!!!!!! DJ;山口美波(VIVA Strange Boutique)|BROADJ#2963

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