見出し画像

〇音楽の旅人、小曽根真さん、自分のスタイルを作るために

〇音楽の旅人、小曽根真さん、自分のスタイルを作るために

【Searchin For Own’s Style : Makoto Ozone Talks On Radio 】

(本文は値段がついていますが、最後まで無料で読めます。読後サポートしてもよいと思われた場合、購読などでサポートしていただければ幸いです。この本文は約6000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字換算すると、12分から6分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと20分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴くと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

~~~~~

〇音楽の旅人、小曽根真さん、自分のスタイルを求めての苦悩を語る

【Searchin’ For Own’s Style : Makoto Ozone Talks On Radio 】

スタイル。

東京のFM局Jウェイヴで2021年5月4日(火・祝)午後に放送された『J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL / Mercedes-EQ presents BROADEN OUR HORIZONS (PART3)』で、ピアニスト小曽根真さんが、角野隼斗(すみの・はやと)さんと作曲について語るシーンがあった。これを小曽根さんの熱いファンである中西光雄さんが文字起こしをした。これが実に素晴らしい内容になっていたので、お二人の許可をいただきこちらに掲載することにした。

On composition (Makoto Ozone × Hayato Sumino)
作曲について(小曽根真×角野隼斗)
(書き起こし・中西光雄)

■自分のスタイルを作るには「作曲(コンポーズ)」

小曽根真:僕はこれから角野クンのオリジナルを聴かせてもらいたいなと思ってます。一ファンとして…。

角野隼斗:あっ、頑張ります!

小曽根:これは僕が、今年残念なことに亡くなってしまったチック・コリアから言われたことで、僕がちょうど23歳の頃に、いろんな回りの人から「真、自分のスタイルを作れ!」とよく言われたんですね。それで、僕がいちばん悩んでいるころに、たまたまチック・コリアさんとコンサートやることがあって、彼とは初対面だったんだけど、チックに「どうやったら自分のスタイルできるの?」と言ったら、「コンポーズ」だって…。つまり「作曲しろ」と言われた。僕はそのころオスカー・ピーターソンというピアニストが大好きで、自分がこういうふうにデビューするって思っていなかったのね。

角野:あ、そうなんですか?

小曽根:うん、だから、バークリーにはビッグバンドのアレンジとか、楽典を勉強しにいったというか…。僕はそれまで音楽理論を勉強したことがなかったので、それをするためにバークリーに行ったんですよ。学生時代は、オスカー・ピーターソンのように弾けるようになったらそれで死んでもいいというくらいピーターソンが好きだったのでね。そうすると超絶技巧で、ものすごく派手に演奏するわけですよ。しかも、ジャズのスタンダードの曲を、20〜21歳のこんな若い日本人の男の子が、昔のジャズの懐メロを超絶技巧で弾くと、ものすごくみなさんよろこんでくれて…。お客さんの年齢層としては高いんだよね、その曲を知っている人たちだから…。ジャズ好きのおじちゃん、おばちゃんたちだからね。その頃にゲイリー・バートンと出逢って…。僕、そのころボストンのどのクラブでやっても満員で人が入れないくらい調子よくいっているときがあったんですよ。そのスタンダードを演奏しているときにね。

角野:はい。

■スタンダードを弾かなくなったら、客がどんどん減った

小曽根:バートンから「自分の音楽で感動させなければだめだ」と言われて、「でないと、みんながすでに知ってるファミリアな曲を、超絶技巧でエンターテイナーとしてエンターテインする(これは決して悪いことじゃないんだよ)、でもそれは今君が若くてそういう演奏をするから、お客さんは見にくるけれども、君が30歳になったころ、また19〜20歳くらいの超絶技巧で懐メロを弾くすごい子が出てきたら、みんなそっちに行くよ」といわれたんですよ。「ああ、すごいこと言うな」と思って、「確かに」と思って、それでその時に、よし一か八かと思って、角野クンじゃないけど、「よしやってやろう」と思って、ある時からジャズのスタンダードを弾かなくなったんですよ、僕は。それで自分のオリジナル曲ばかり持って行って、今までのジャズクラブで演奏するようになったら、お客さんがどんどん減っていったんですよ。見事にお客さんが減って、とうとう最後は3人か4人になっちゃったのね。それである人が「なぜ君はスタンダードを弾かないのか?」言うから、「実は僕は今自分の音楽を探してて…、デビューが決まったから、デビューをするまでに、自分の音楽を創りたいんだ」と僕が言ったら、その人から「ああ君も自分のことをアーティストと呼ぶ類いの人間になりたいんだね」とちょっと厳しい言い方をされたのね。

角野:ああ、皮肉っぽい感じで…。

■ドライヴ・インのライヴにきた老夫婦たち

小曽根:そうそうそうそう。でも「ごめんなさい。でもここオレがんばんなきゃ」と言って、ゲイリーに電話して、「オレやっぱり違うんじゃないかな?」と言ったのね。あんまりお客さんがハッピーじゃないから…。僕はやっぱり自分がピアノを弾いて誰かがハッピーになってくれることが大好きだったので…。だけど、ゲイリーが「もうちょっと我慢してみよう」と言ってね。それで曲を作ってて、僕がデビューした一曲目の「クリスタル・ラブ」っていう曲があるんですけれど、それを書いて、あるときに、ボストンの超田舎にあるドライブインみたいなところでそれを弾いたんです、毎週行ってたから…。そしたらね、僕がジャズの古い曲を弾いていたときからずっと来てくれている70〜80歳くらいのおじいちゃん・おばあちゃん夫婦が、2カップルいたのね。僕がはじめて「クリスタル・ラブ」という曲を弾いたときに、そのおじいちゃん・おばあちゃんが4人ともポロポロ泣いたんだよね。それでオレが「そんなにひどかった?」と言ったらね(😊)、「ううん、この曲を聴いたら、わたしたちが高校生で、ハイスクールで出逢ったときのこと思い出した」と言ってくれたんです。

MAKOTO OZONE (小曽根 真)/ Crystal Love


https://www.youtube.com/watch?v=Fhsw-1KCHJo

角野:へえ…。

小曽根:そのときに僕ももらい泣きしちゃって、「あっ、こういうことなのかな、音楽は」と思ったんですよ。はじめて聴いた曲なのに、そこで涙を流すというその感性というものが、どれだけすばらしいかというね。そこから僕はオリジナルをやるって決めて、ずーっと自分の音楽を書いてきました。だから、いろんな音楽をやってきた中で、僕のファンの、僕を支えてきてくださったみなさんは、いつもびっくりしていることが多いと思うんだけど…。だけど、そのみなさんのおかげで、今の小曽根真があります。

角野:僕も勇気をもらいました。

~~~~~

この投稿に小曽根さん本人がコメントをつけた。

Makoto Ozone

中西さん、
そして皆さん、
本当にありがとうございます。

放送後、角野くんからもお礼のメッセージを頂きました。その彼にも伝えたのですが、僕の話をこんな風に感じてくださる彼の、そして皆さんの感性が一番大切な宝物であることをお伝えさせてください。

僕にとっては、その皆さんの感性を信じることは直接音楽を信じることに繋がるんです。
オーディエンスの皆さんに向かって「これどうですか?」って演奏するとお客さんの脳には届くかもしれませんが、心には響かないと思ってます。ちょっと変な言い方なのですが、僕が何かを届けるのではなく、皆さんに取りにきてもらうのです。

でも「取りに行きたい!」と思ってもらうには、そこで鳴っている音色や紡がれる物語が魅力的でなくてはならない…。目に見えるものや、頭でわかるレベルでない、心が震えるような波動。それは僕の心が震えてなくては創れない波動、つまり演奏家が心から楽しんでいなければお客さんを心から震わせる波動は作れません。

だから僕は自分が自分の奏でる音楽にもっともっと感動できるように練習します。自分の至福のために。なぜなら、皆さんの感性が本当に素晴らしくて、その感性がどのアーティストにとっても何よりも大切なものだと信じているから。

要するに僕らアーティストはメディアなのだと…。

僕らがどこかから送られてくるエネルギーを音楽という言語にする、、、そしてそれを皆さんが取りに来て、、、感じて、、、生きていることの喜びを感じる。

音楽や芝居の場合はそこに「同時に共有」するミラクルが追加されます!!

そしてこんな素晴らしいコメントや文章で皆さんの思いがこちらに伝えてくださる…。

人間のできる最高に豊かなコミュニケーションですね。

本当にありがとうございます🙏🙏🙏‼️
I will keep on Swinging!!

(書き起こしとコメント、ここまで)

ジャケ写 小曽根60

OZONE 60 (2SHM-CD)
小曽根真

小曽根真オフィシャル

小曽根真 Makoto Ozone Official Website
小曽根真 オフィシャル ウェブサイト


makotoozone.com


~~~~~

■音楽に涙することについて

この話を読んで、すぐにラジコのタイムフリーで実際に小曽根さんが語っているのを聞いた。そして、これを聞いて瞬時に僕は長く即興演奏をしてきたピアニスト故・深町純さんの同じような話を思い出した。

深町さんは、毎月一回即興演奏のピアノ会を2001年1月から2010年10月まで118回行った。(2010年11月逝去) 何度か同じことを言っていた記憶があるが、そのときの様子を書いた回のブログがあったので、そこをご紹介しようと思う。

Fukamachi Jun Talks: What The Power Of Music Is
2007-04-30


https://32970.diarynote.jp/200704300026510000/


(若干文字化けが残ってます)

深町純 アー写

(深町純)

深町さんの言葉の一部。

「僕は、自分のピアノを聴いて何人かの人が泣いていることを知っています。でも、僕は一度も人を泣かせようと思って、ピアノを弾いたことはありません。いつも、ちょっと意地悪く言うのは、聴いている人が勝手に泣いている、僕とは関係ない、ということです。だから、涙を流して僕に『深町さん、ありがとう』と言ってくれる人にいつもこう言っています。『それは、あなたにそういう能力があるんです』ってね。つまり僕のピアノを聴いて、何かを心に思い浮かべて、何かを感じて、涙を流せる、それはあなたの能力なんです。僕はそういうことを信じている。それはつまり、音楽の力です」

「僕たちミュージシャンは、じゃあ何をしているかというと、そういうすばらしい音楽というものを、汚(けが)れなく、間違いなく、再現するのが僕の仕事で、僕が、もしうまく音楽を再現することさえできれば、それはきっと聴いている人の心の中に何かを残してくれるのだろうと思う。だから、僕が何かをしているわけではないんです」

「例えば、今度来るロシアのグリーシャっていうアーティストなんかね、よく言うんです。『ジュン、音楽は神様が降ってくるんだよ』って本気で言うんですね。僕が上手に即興演奏ができたりすると、『ジュン、それは神様が弾かせてくれてるんだよ』って言うんですね。そういうことを言うミュージシャンは日本には少ない。グリーシャなんか、その演奏する姿勢がすばらしい。彼らは音楽に対してひじょうに誠実です」

深町さんが言ったことを、ただ文字に起こすだけで、これだけのものができるんだから、ほんと、たいしたものです。すごい。感謝。尊敬。

~~~~

旅人。

小曽根さんの言葉も、まさに本質的に同じだ。小曽根さんは、誰もが知るスタンダードをプレイすることに決別し、自身の音楽を探すようになるが、どんどん客が少なくなり悩む。だが、ボストンの超田舎のドライヴ・インでの二組の老夫婦からかけがえのないギフトをもらい、自分自身の音楽へ大いなる自信を持ち、今日まで歩み続けている。

音楽に感動すること、涙すること、それは聴く側にその才能がある、必要とされるということだ。そして演者はその媒介(メディア)だ。

さらに自分自身の音楽を探求することは、ミュージシャンにとっては最大の目的であり、試練であり、ある程度まで行くとひとつの到達点にたどり着くだろう。だが、その到達点さえも、ミュージシャンはまた次の目的地への通過点にすぎないことをまもなく知ることになる。ミュージシャンは永遠にその探求の道を歩み続ける旅人だ。そして我々はその旅人を傍らで見続け、ときに微笑み、ときに涙し、ときに感動する。小曽根さん、これからも良き旅をお続けください。

小曽根さん、いいお話、ありがとうございます。そしてその内容に感銘を受け、書き起こされた中西さん、ありがとうございます。

~~~~

■■ 深町純 新譜作品概要 ■■

現在リリースされている最新作

1)通常一般発売DVD+CD+ブックレット

① [ DVD ]:
タイトル:JUN FUKAMACHI『 RECITAL at SUNTORY HALL 』深町純 リサイタル アット サントリーホール
(2007年10月27日 SUNTORY HALL Blue Roseリサイタル収録 DVD 約70分
② [ CD ]:
深町純 ラストソング『願い』
(深町純:作詞・作曲・唄・Piano(2010年11月収録) 
③ブックレット(20p)
 ※ 本作はDVDとCDの2枚組でバラ売りはありません。

amazon
RECITAL at SUNTORY HALL [DVD]
ビデオメーカー (2017-12-08)


https://goo.gl/wL2vWh

価格 :¥ 4,800・税別 (¥ 5,184・税込)
発売日:2017年12月8日(一般発売)
(11月3日 発売記念イヴェント会場にて先行発売あり)

発売元:JUN FUKAMACHI Project Office

2)スペシャル・メモリアル・セット

スペシャル・メモリアル・セット発売決定

上記の通常版DVDパッケージ(DVD + CD + ブックレット)に、さらに特別アイテムを加えた数量限定品。深町純 公式サイト「FUKAMACHI ism」にて独占で販売いたします。(シンコーミュージック 200セット限定発売)

 < スペシャル・メモリアル・セット> (5アイテム)

① DVDパッケージ(DVD+CD2枚組)
『RECITAL at SUNTORY HALL』 & 【特別CD収録 ラストソング「願い」】
②『RECITAL AT SUNTORY HALL』 CD
(ライヴDVDのオーディオのみ収録CD)
③『NICOLE 1986 Spring& Summer Collection』30センチ・アナログレコード、8曲収録(輸入盤)(プレスはドイツの工場)
④『NICOLE 1986 Spring& Summer Collection』CD(※ボーナストラック追加・全10曲収録)
⑤ラストソング 「願い」 楽譜(限定数プリント)

予約受付開始 :2017年8月25日より、FUKAMACHI ism ページ内 申し込みフォーム よりクレジットカード決済でご予約いただけます。クレジットカード決済を希望されない方は、http://shinko-music-shop.com/内 Contactからご連絡ください。ご予約はこちら↓


http://shinko-music-shop.com/?pid=121644233

お問い合わせはこちら↓


https://secure.shop-pro.jp/?mode=inq&shop_id=PA01374908

http://fukamachijun.jp/index.html


価格:\12,960 (税・送料込み)(発送は国内の料金です。海外への発送は別途お問い合わせください)

すでに直販は発送しています。

JUN FUKAMACHI Project Office

■深町純公式サイト


http://fukamachijun.jp/index.html

■公式フェイスブック


https://www.facebook.com/FukamachiIsmshenDingChunSite

~~~~~

~~~~

■サポートのお願い

本記事は有料設定ですが、このnoteで最後まで無料で読めます。読後、お気に召せば「記事を購入する」、あるいは、「サポートをする」(金額は自由に設定可)なども可能です。クレジットカード払いか、携帯電話支払いがお選びいただけます。アカウントを作らなくても支払い可能。アカウントを作ると、次回以降手続きが簡略化できます。

ソウル・サーチン・ブログは2002年6月スタート、2002年10月6日から現在まで毎日一日も休まず更新しています。ソウル関係の情報などを一日最低ひとつ提供しています。

これまで完全無給手弁当で運営してきましたが、昨今のコロナ禍などの状況も踏まえ、広くサポートを募集することにいたしました。

ブログの更新はこれまで通り、すべて無料でごらんいただけます。ただもし記事を読んでサポートしてもよいと思われましたら、次の方法でサポートしていただければ幸いです。ストリート・ライヴの「投げ銭」のようなものです。また、ブログより長文のものをnoteに掲載しています。

オリジナルはソウル・サーチン・ブログ
ソウル・サーチン・ブログ・トップ
https://ameblo.jp/soulsearchin/

noteでの記事購入、サポートのほかに次の方法があります。

方法はふたつあります。送金側には一切手数料はかかりません。金額は100円以上いくらでもかまいません。


1) ペイペイ(PayPay) 使用の方法

ペイペイアカウントをお持ちの方は、こちらのアカウントあてにお送りいただければ幸いです。送金先IDは、 whatsgoingon です。ホワッツ・ゴーイング・オンをワンワードにしたものです。こちらもサポートは匿名でもできますし、ペンネーム、もちろんご本名などでも可能です。ツイッター・ネーム、アカウント名などあればお知らせください。受領の御礼をお送りします。あるいは領収書などが必要でしたら上記メールアドレスへお知らせください。PDFなどでお送りします。


2) ペイパル (Paypal) 使用の方法

ペイパル・アカウントをお持ちの方は、ソウル・サーチンのペイパル・アカウントへサポート・寄付が送れます。送金先を、こちらのアドレス、 ebs@st.rim.or.jp にしていただければこちらに届きます。サポートは匿名でもできますし、ペンネーム、もちろんご本名でも可能です。もし受領の確認、あるいは領収書などが必要でしたら上記メールアドレスへお知らせください。PDFなどでお送りします。

3)noteでのサポート。

次の「ソウル・サーチン」のノートページに行き、
https://note.com/ebs
このどれでもよいので、記事の下のほうにいくと、緑色の枠で 「気に入ったらサポート」をクリック。100円、500円、1000円、人気の金額、とあるので、どれかをクリック。

4) サポートしたいが、ペイペイ、ペイパル、ノートなどでのサポートが難しい場合は、 ebs@st.rim.or.jp までご連絡ください。銀行振込口座をご案内いたします。(ちなみに当方三井住友銀行です。同行同士の場合、手数料がゼロか安くなります)

コロナ禍、みなさんとともに生き残りましょう。ソウル・サーチン・ブログへのサポート、ご理解をいただければ幸いです。

ソウル・サーチン・ブログ運営・吉岡正晴

本記事はnoteでも読めます
Noteトップ
https://note.com/ebs

ANNOUNCEMENT>Support

~~~~

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?