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■■ソウル・サーチン・アーカイヴ・シリーズ 019 ~ ロバータ・フラック、そのライヴで見せる自由度の高いアーティスト力 ■■

■■ソウル・サーチン・アーカイヴ・シリーズ 019 ~ ロバータ・フラック、そのライヴで見せる自由度の高いアーティスト力
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(本作・本文は約4000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字換算すると、8分から4分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと13分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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まさにレジェンド。多くのアーティストから大尊敬され世界中のファンをも魅了するロバータ・フラック。そのライヴは、アーティスト力をまざまざと見せる超強力なものだ。自由度が高いだけに、バックのミュージシャンはそれについていくのが大変だ。そのあたりの苦労話も披露される。そのライヴあれこれを。

April 18, 2007
Roberta Flack; The Night Marvin Gaye Comes Down


http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200704/2007_04_18.html

【ロバータ・フラック・ライヴ~マーヴィンが降りてきた夜】

自由度。

超ヴェテラン、ロバータ・フラックのライヴ。僕自身は前回(2005年6月)を見ておらず、2000年4月のブルーノート以来なので、7年ぶりとなる。前回は、このブログが始まる前なので、ブログには載っていないが、どこかにその時のことを書いた。初日に見たのだが、そこにはなんとそのとき来日していたシーラEとデズリーが飛び入りして歌ったり、演奏したりして、大変盛り上がった。

さて、今回はバンドメンバーが少し変わっていた。ベースのトレスは、今回が初参加、彼は12月にジョニー・ギル、9月にフランク・マッコムで来日していた。そして、バックヴォーカルの男性のほうは、なんとトニー・テリー。その昔、「ラヴィー・ダヴィー」(1988年)の大ヒットを放ったことがある男性シンガーだ。他のメンバーもこの5年くらいらしい。トニーは2005年、2000年にも来ていたという。

ロバータのライヴは、常に淡々と進む。その進み具合が時として退屈に感じられることもあるが、この日はまったくそんなことはなかった。彼女の自由度が高いミュージシャンシップが存分に発揮され、あれだけ、スローやスローミディアムの曲ばかりだったにもかかわらず、独特の「ロバータ・フラック・ワールド」を作り上げていた。まさに彼女は、この80分間、ブルーノートの時間と空間を手中に収め、すべてを支配していた。

ジャケ写 ロバータフラック ファーストテイク

圧巻だったのは、下記セットリストで5にあたる「マーヴィン・ゲイ・メドレー」。実はその前の前の「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」の中で、マーヴィンの「ユー・シュア・ラヴ・トゥ・ボール」のフレーズをいれて、歌っていたので、そのあたりから、マーヴィンが来ていたのかもしれない。

この3曲はいずれも傑作『ホワッツ・ゴーイング・オン』収録の作品。特に「セイヴ・ザ・チルドレン」では、男性のトニー・テリーと、言葉のやりとりを自由自在にしていて迫力があった。まるで、ちょっとしたポエトリー・リーディングか、演劇を見ているかのようだった。

一緒に見た盟友でありソウルメートのハセヤンは、「女マーヴィンっていうのは、いないと思ったけど、ロバータは女マーヴィンだねっ!」と宣言した。

ベースのトレスによると、なんと、このマーヴィン・ゲイ・メドレーは前日にはやってなくて、この日のファーストからロバータの思いつきで始まったという。それをもう少しソリッドにしたのがこのセカンドで聴けたヴァージョン。トニーとロバータの言葉のやりとりはファーストではなかったそうだ。となると、あのかけあいは、本当のアドリブだったことになる。これは恐るべし。すばらしいミュージシャンシップだ。

ロバータには、あの瞬間、間違いなくマーヴィンが降りてきていた。前回見たときは、ダニー・ハザウェイとスティーヴィーが降りてきていたが、この日はマーヴィンだ。

書影 マーヴィンゲイ

ロバータのライヴは、彼女が中央のピアノに座って、自分が歌いたい歌を自由に始めるという点で、ある種、スティーヴィーと似ているところがある。彼女が何かを弾き出すと、ミュージシャンがそれについていくというスタイルだ。下記セットリストで4曲目(「ヘイ、ゼアイズ・ノー・ウェイ・・・」)や5曲目(マーヴィン・メドレー)などは、事前には予定されていなかった作品。しかし、ブルーノートのホームページに発表されたセットリストによれば、前日歌った「エターナリー」はこの日は歌わなかった。

それにしても、声が若々しい。キラー・ソング「キリング・ミー・ソフトリー」や「ファースト・タイム・アイ・エヴァー・・・」などを聴いていると、実年齢(1937年2月10日生まれの70歳=生年については、38年~40年まであるが、37年が正しいと思われる)が想像つかない。ライヴ・パフォーマンスとしては、急遽ギタリストが来日せずに、ギターパートはキーボードで差し替えていたりして、完璧ではなかったが、あのまったり感、ゆったり感で、聴く側を集中させてしまうロバータ・フラックのミュージシャン力はすばらしい。

(この項・続く)

■ロバータ・フラック・ベストCD

ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ロバータ・フラック
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■ブルーノートウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20070416.html
ライヴは、木曜を除いて日曜22日まで。

■メンバー

Roberta Flack (Vocal, Piano)
Morris Pleasure (Keyboards)
Nova Payton (Background Vocal)
Tony Terry (Background Vocal)
Tres Gilbert (Bass)
Rick Jordan (Drums, Musical Director)

■ Setlist : Roberta Flack @ Bluenote Tokyo, April 17, 2007
セットリスト ロバータ・フラック 
(transcribed by yoshioka.masaharu)

show started 21:46
01. Oasis
02. Will You Still Love Me Tomorrow
03. A Riff Of "Family Affair" to Feel Like Making Love to A Riff Of "You Sure Love To Ball"
04. Hey, That's No Way To Say Goodbye (Leonard Cohen) (From "First Take" Album)
05. Margin Gaye Medley:
a) Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)
b) Save The Children
c) Mercy Mercy Me
06. Disguises (From Album "Roberta Flack Featuring Donny Hathaway)
07. Where Is The Love (Duo With Tony Terry)
08. Baby Calls (Tony Terry, Lead) (New)
09. Feelin' That Glow (From Album "Feel Like Making Love")
10. Say No (New)
11. Killing Me Softly With His Song
12. Soft And Gentle (New?)
13. The First Time I Ever Saw Your Face
14. Back Together Again
show ended 23:05

(2007年4月17日火曜、東京ブルーノート=ロバータ・フラック・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Flack, Roberta
2007-48

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April 19, 2007
Roberta Flack: Very Spontaneous Live Performance
(前日からの続き)


http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200704/2007_04_19.html

【自由度の高いロバータ・フラックのライヴ】

自由度。

ロバータ・フラックのライヴがミュージシャンとして自由度が高いものだと昨日書いた。例えば、セットリストの3曲目で彼女は「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」(マリーナ・ショウでも有名)を歌う。しかし、この冒頭にスライ・ストーンの「ファミリー・アフェアー」をいれた。おそらく、これはロバータの気分でちょっとこれをやってみようと思ったのだろう。ひょっとして前日にもやっていたかもしれないが、とてもアドリブ性が高いアレンジだった。

同曲の最後の部分にマーヴィンの曲をいれた。これも「フィール・ライク・・・」からの流れでぱっと付け足したものだと思う。歌詞の面からもつながりが感じられる。

ライヴ後、客席にでてきたミュージシャンの何人かと話す機会があった。一番よくしゃべってくれたのが、ベースのトレス・ギルバート。現在アトランタ・GA(ジー・エー=ジョージア州のこと)在住。ロバータ・バンドには初参加。しかも、月曜に初めてリハをやったので、この日がまだセカンド・デイだった。

ロバータの曲はほとんど知っているのか、と尋ねると、「いやあ、ロバータは自分の持ち歌だけで150曲くらいあるんじゃないかな。全部はとてもじゃないけど、覚えていない。15-20曲分の楽譜があるが、ロバータは楽譜がない曲もやる。それに楽譜とキーが違ったりするんだ。アレンジもレコードとは大幅に変えていたりするしね」 

アー写 ロバータフラック カラー 割と最近

「事前に決めたセットリスト自体はあるの?」と尋ねると、「あることは、あるけど、ロバータはすぐに変えるよ(笑)」という。案の定。ロバータはほぼステージ中央のピアノにすわり、彼女のピアノから曲が始まっていくので、ステージをほぼ手中に収める。彼女が思いついて始めた曲を、ミュージシャンたちはついていかなければならない。そのあたりの自由度、アドリブ性の高いところが、スティーヴィーやジェームス・ブラウンのライヴに似ている。

アー写 トレス・ギルバート

(トレス・ギルバート Tores Gilbert - Bass)

「では、もしまだ自分が知らない曲が始まったらどうするの?」と聞いた。トレスはこう答えた。「僕の秘密を教えようか。(笑) ちょうど僕の位置からはキーボードのモリスの手が見える。そこで、モリスが弾くコードを見て、取るんだ。そして、そのコードをベースで弾いていくというわけさ。僕は、ひとたびコードがわかれば、何でも弾ける。それに、知っている曲であれば、キーがいくら変わっても弾けるんだ」 

バックコーラスのひとり、トニー・テリー。最初は昔ヒットをだしたトニーとはわからず、ただ聴いていたが、彼が歌った作品を聴いて、声質がダニー・ハザウェイ、時にルーサー・ヴァンドロスを思わせるなあ、と感じていた。そして、彼にもダニー、ルーサー、スティーヴィー、そして、マーヴィンの流れを感じた。それは、果たしてロバータ・フラックとともに歌っているからか。しかし、トニーとロバータのかけあいによる「セイヴ・ザ・チルドレン」はよかったなあ。また聴きたい。

アー写 ジャケ写 トニー・テリー

(トニー・テリー)

トニーによれば、「ロバータのバンドにはここ数年、出たり入ったりだが、参加している。2005年、2000年にも来日したよ。ところで、最近、アルバムを作ったんだ。ゴスペル・アルバムだ、ぜひ聴いてくれ」とのこと。

ところで、この日は会場に『ソウル・サーチン』でも歌ってくれたディーヴァ・グレイ、マクサン、そして、マルまで来ていた。そういえば、ディーヴァはロバータのライヴでは歌っていないが、レコード(CD)で何曲かバックをつけていた。久々に会ったディーヴァに、1月のライヴの記録用映像はまだかと催促された。すっかり渡したと思っていた。(笑) 

■セットリストなどは、昨日付けの日記に

(2007年4月17日火曜、東京ブルーノート=ロバータ・フラック・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Flack, Roberta
2007-48


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