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サイクルトレイン

「世界の車窓から」という番組で、海外の鉄道には、自転車が持ち込めるサイクルトレインがあると知ったのは、いつごろだろうか。
それはとてもすてきだなあ。いいなあ。とずっと思っていたら、なんと私の住む町を走る鉄道がサイクルトレインになった。

西武多摩川線という、都内に住んでいる人でも知らない人がほとんどの小さな鉄道である。
6駅を14分で走り、単線。12分おき。4両編成。
周囲の景色は公園や畑など緑にあふれる、ローカルな電車である。

2021年にしばらく試行運転をしてから、サイクルトレインは運行されることになった。
運賃は普通運賃。
時間は平日朝9時から17時まで。
土、休日は一日中。
利用できるのは一号車のみ。

ラッシュ時以外がそれほど混んでいないから、いつでも座れる電車である。
かっこいいロードバイクもあるが、子どもを乗せたママチャリや、子ども自転車。電動自転車。なんでも乗ってくる。

昔ながらの鉄道だから、ホーム階に行くのにエレベーターが必要なのは二駅だけ。
あとは、地面からスロープで直結のホームの駅ばかり。
だから、自転車も楽にホームに上がれる。

終点の是政からは、多摩川かぜのみちに行くことができる。

多摩川かぜのみち

たいてい何かしらのドラマや映画のロケをしている。
とても気持ちのいいサイクリングロードで、いい気分で走っていると、多摩川の下流の川崎あたりまで行ってしまって、泣きながら帰ってくる人もいる。

要介護の認定調査員をしているときは、移動が電動自転車だったので、多摩川かぜのみちをよく利用していた。
なんたって、信号はない。車は走っていない。
だから、市内を東西に移動するためには欠かせない近道だった。

ある日、いつものように是政あたりから、調布方面に向けて、自転車をすいすい走らせようとルンルン自転車をこぎだした。
ところが私の前に水色の壁が現れた。
路上生活のおじさんが、昔ながらのお豆腐屋さんが乗るような自転車の荷台に、巨大なビニールシートを積んでよろよろ走っているのだ。
それは歩くよりも遅いスピードで、ふらつきながら、ゆるゆるゆっくりなのだ。

ビニールシートの中身はたくさんの空き缶である。
おじさんのお仕事であろう空き缶回収の帰り道なのだろう。
そのビニールシートの幅といったら、道幅と同じくらい。
荷台からはるかにはみ出ており、おじさんの自転車の横をすり抜けることは不可能だ。
ずっと前、シルクロードを行く旅行番組を見たとき、このようにたくさんの荷物を積んだ自転車の映像を見たことがある。
なんだか、懐かしいくらい。

しかたないなあ。と思いながら、土手から下の道路に降りられるところを探して、土手沿いの道路を走ることにした。
私がおじさんを追い抜き、とうとう、おじさんは見えなくなった。

そんな多摩川かぜのみちを利用する人もいるだろうけど、子供連れで買い物に行くおかあさんや、日曜日に子ども自転車のお子さんと一緒に出掛けるおとうさんなどいろいろな人が利用している。

私も、子どもが小さいころ、病院通いの時に、サイクルトレインがあったらどんなに助かっただろうかと思うことがある。

そんな思いを乗せて走るサイクルトレイン。
もっと広まればいいな。
電車に自転車が普通に乗ってるってことは、ベビーカーも、車いすも楽々乗ってるってことなんだから。
「ベビーカーは邪魔だ。」なんて言う人がいないのが、サイクルトレイン。
車輪は移動のための大発明だからね。

自転車はオレンジのベルトで固定する

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