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なぜ上川徹さんにアディショナルタイム15分を要求したのか?湘南50周年マッチに見る日本サッカーとサポーターの成熟。

湘南ベルマーレが藤和不動産サッカー部時代から50年の歴史を歩んだ。それを記念して2018年12月22日にレジェンドマッチを開催。雨天にも関わらず5,000人近くのファン・サポーターが集まり、試合は大いに盛り上がった。

通常、この手の試合は、主催者に花を持たせる展開となる。ところが、ゲストの日産自動車・横浜F・マリノスOBが終盤に容赦ない攻撃を展開しリード。2-3のまま90分を迎えようとしていた。上川徹さんが前半は主審を務め、後半は第4審判を務めた。

JFAトップレフェリーグループシニアマネジャー上川徹さんはベルマーレOB。

上川徹さんはフジタ工業時代の1986年から1992年までプレーし、Jリーグ立ち上げに伴うクラブプロ化の直前に引退している。その後、日本初のJリーグ立ち上げのために設置された選手経験者向け審判養成講座の一期生として審判員のキャリアをスタートし、FIFAワールドカップ2006ドイツ大会の3位決定戦で主審を務めた日本のレジェンド審判の一人だ。

上川徹さんはJリーグがファン・サポーターのルール理解促進のために2018年からスタートしたyoutube番組で、誤審疑惑に審判の立場から答える役割で出演している。

さて、話を元に戻すと、90分を迎えようとしていたその時、1点差で負けている藤和不動産・フジタ・ベルマーレOB側が何度もマイクアピールを行った。
「ロスタイム(アディショナルタイム)は15分あります!」
「上川さん、ロスタイム(アディショナルタイム)は15分ですよね!」
「ロスタイム(アディショナルタイム)は15分あるはずです!」

スタンドのファン・サポーターは腹を抱えて爆笑した。

なぜ第4審判の上川徹さんにアディショナルタイム15分を要求したのか?

上にあるように、1ヶ月前の2018年11月24日にJリーグは前代未聞の大誤審事件を起こしていたからだ。その試合では90分が終わってからアディショナルタイムが18分50秒。この試合の主審のアディショナルタイム計測判断が誤りであったことを番組やJFAレフェリーブリーフィングで説明したのが、JFAトップレフェリーグループシニアマネジャーである上川徹さんだった。それをスタンドのファン・サポーターの多くも記憶していた。だからから、上川徹さんへのアディショナルタイム15分要求が成立した。

ベルマーレには、長いアディショナルタイムでJ2に降格したという苦い歴史もあった。

日本サッカーでは、長い間、誤審の話はタブーとされていた。

歴史は転換した。多くのファン・サポーターはJリーグ25年の間にルール理解を進めた。2018年からスタートしたyoutube番組「Jリーグ・ジャッジ・リプレイ」により、誤審問題を一方的な糾弾とするのではなく「なぜ誤審が起きたのか?」「ジャッジには白と黒とグレー(どちらとは言い切れないが主審の判断に任せるべき領域)があること」をディスカッションする風土づくりも進んだ。

今まではタブーだった誤審を、こうやってオープンに、みんなでネタとしていじれるようになったのは日本サッカーとファン・サポーターの成熟の現れだ。

誤審は起きない方が良い、でも起きること・・・それが当たり前のこととしてコンセンサスを得ているムードが、この日のスタジアムでの爆笑を呼び起こした。これは日本サッカーとファン・サポーターの成熟の現れだ。・・・ただ、上川徹さんが第4審判として提示したアディショナルタイムは3分間だった。

試合を終えてピッチから退場する審判団にはスタンドから大きな拍手が贈られた。それが当たり前のこととして行われていた。


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