フランス「テロ擁護罪」とは


テロ擁護罪(apologie du terrorisme)は2014年11月に新しくつくられた法律です。ジハーディスト志望の若者たちが、過激派の弁に感化されないようにというのがもともとの目的です。

内容ですが、「すでに行われたテロ行為について、好意的に(favorablement)紹介したり、コメントすること」がテロ擁護とみなされ刑法で罰せられます。
懲役5年プラス75000ユーロの罰金、
ネット上で行われたなら懲役7年プラス100,000ユーロの罰金。

この法律ができる前は、テロ擁護の言辞や表現は、報道の違反(délit de presse)に過ぎず、パブリックな場所やメディアに向けて表現されたものだけが対象でした。
しかしただの報道違反だと、既に前科でもない限り、即時出頭を強制できません。「テロ擁護罪」刑法にすることで効率的に逮捕して取り調べできるようになりました。また、この時に、「公に向けたものに限らず、公私問わず、該当するような発言や表現を対象にできるようになったのです。

1月19日のリベラシオン紙によるとシャルリー・エブド襲撃テロ事件後、二週間の間に70件の「テロ擁護罪」や「テロ行為をするという脅迫」が訴えられ、30人ほどが有罪に。

いくつか例(随時増やしてきます)

イブリンヌにおいて、29歳のうつ病(←ル・パリジャン紙によると鬱病)レジ係が、国鉄の係員ともめた際、「アラー・アクバル!. 爆弾持ってたら全部ぶっ飛ばしてやるわよ!」「死んだ(シャルリーエブドの)17人みたいに、あんたらもくたばればいいのよ!」と切れた件で、テロ擁護罪により、六ヶ月の実刑判決。(元記事1月20日metronews)

パロディで、こちらの表紙の号のシャルリー・エブドを、全く同じ格好で手にもった男性がやはり銃弾を防ぎきれず「シャルリー・エブドはウンコ!(=役に立たない)」とキャプションがある絵、テロの後ネットのあちこちを出回っていましたが、これをFacebookでシェアしたナントの16歳の高校生(おそらく作成者とあたりをつけられたのでしょうか??)は「テロ擁護」の容疑で取り調べのため逮捕されました(今は観察付き釈放)。(元記事:Gizmodo

マルセイユでは、携帯の窃盗について職務質問を受けた22歳の男性が、警官達に「マホメットの命にかけて言うが、お前は地獄に行く」といって、2年の実刑判決。(元記事 1月15日 http://france3-regions.francetvinfo.fr/provence-alpes/2015/01/15/marseille-deux-ans-de-prison-ferme-pour-apologie-du-terrorisme-633824.html)

シャルリーエブド襲撃テロ事件について、「だってやつらは預言者をカリカチュアに描いたんだもん。僕はテロリストたちの味方だよ。」と言った8歳の小学生がテロ擁護罪で警察に召喚される。通報者は学校。http://www.liberation.fr/societe/2015/01/28/un-enfant-de-8-ans-au-commissariat-pour-apologie-du-terrorisme_1190778

「テロ擁護罪」で哲学教師が停職に。何をしたのか他のソースも読みましたがはっきりせず。シャルリーエブド事件後の一分黙祷を「妨害」したとされてますが本人は「一分黙祷の時いなかった」と主張。 http://bit.ly/1HDtNa1


フランスの「表現の自由」については、テロ擁護罪ができる前から、いくつか除外事項があり、たとえば差別を助長するような発言は禁止されているのですが、「だったらシャルリーエブドのイスラム教徒の描きかたはどうなるのか?」という疑問は日本や英米からは早くもあがっていました。こうした疑問に対し、フランス的な反駁の仕方は「対象が人でなく、宗教なんだからいいんんです」となります。

(「ライシテ」についてはまた別に書きますが)、フランスの共和国的価値観においては宗教の自由は認められているものの、実際はほとんど「宗教イコール蒙昧主義の悪いもの」として見られているといっても過言ではありません。イスラムのみならずカトリックもです。

しかし、絵や言葉だけを罪状とした逮捕者と実刑判決者が相次ぐなか、アムネスティ・インターナショナルからも人権違反のアラートが出され、ここにきてフランスのメディアからも、行き過ぎで集団ヒステリーではないかといった心配の声(1月20日リベラシオン紙)があがったり、シャルリーエブドの過激なイスラム戯画は「表現の自由」なのにこれではダブルスタンダードなのではないかという疑問の検証(1月21日l'OBS)が出て来ています。
また、司法官組合(Syndicat de la magistrature)はクリスティアーヌ・トビラ法相に、「厳し過ぎるのでは!」と批判的な意見を表明しましたが、トビラ法相は、断固としあ姿勢を崩さないでほしいと要請しています。(Figaro 1月21日



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