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雪姫ふたたび…

【隠し砦の三悪人〜櫻坂46 小林由依の視線の先は…】

舞台『隠し砦の三悪人』が大阪・新歌舞伎座にて大千穐楽を迎え無事終了した。

私は、8月26〜27日ともに昼の部を観劇した。
5日の明治座・昼の部とあわせて、計三度観劇したことになる。
明治座での観劇感想はこちら〜

今回は、大阪での公演の感想をまとめるとともに、私が今、感じている小林由依の櫻坂46での立ち位置〜視線について思うところを記したい。

明治座では座席は上手だったが、26日 (土) は花道横三列目で絶好の位置。
芝居の流れはおおよそ把握しているので、雪姫を中心に観ていくこととした。

回を重ねてゆいぽんの所作、発声の強弱・柔剛の具合も、より進化(深化)していた。あの「いやじゃいやじゃ」のシーンもまさに「小林由依」であった。
原作にある、勝気で頑固な雪姫像をそのままに、従者の小冬をして「本当は気配り心配りの出来る優しい雪様」と言わしめた雪姫の本質も見事に表現出来ていた。手塚治虫の「リボンの騎士」にも代表される典型的な設定でもある。
終盤、小船に乗り花道を使い逃げ去るシーンでは、間近でみて「あぁゆいぽんなんて華奢なんだ…」と。
この稽古期間〜公演期間内で海外へも二度渡っている、まさにハードスケジュールをこなすタフネスぶりからも、その身体に潜んだエネルギー・パワーにあらためて驚いた。
(パリでもマレーシアでも相変わらずのキレッキレのパフォなもんだから「どうなってるの?」と感嘆するばかりだ…)

そして何度も記すが、特筆すべきはその歌声だ。
アカペラで美しく滑らかに歌い上げる雪姫(小林由依)の姿に多くの演劇ファンは魅了されたに違いない〜と断言してもいい位に素晴らしかった。
それは他の共演者とて同じことだろうと勝手に思っている。それほどまでに衝撃を受けた。

その共演者についてもふれておこう。

上川隆也 (真壁六郎太)
存在感が圧倒的であった。腹から響く声の力強さ、通りのよさ。そして殺陣のかっこよさ。
印象的だったのは、宇梶剛士(田所兵衛) との一騎打ちの後、花道から「また逢おう」と手を広げ呼びかけ去るシーン。
そして、最後に同じく手を広げて、太平・又七の二人に「達者でな」と声をかけるシーン。
彼のその掌が、遠目からもかなり大きく見えた。それがそのまま芝居の大きさ、スケールの大きさと重なった。
それに訊くところによると、この「また逢おう」の台詞は上川のキャラメルボックス時代での名台詞らしく、そんな遊び心とファンサを兼ねた粋な演出に、これを知る人は堪らないだろうな…と思わせた。

宇梶剛士 (田所兵衛)
その体躯を活かした立ち回りと迫力のある居住まいと声。上川との対比に見入ってしまった。
有名な「裏切り御免」の台詞も、その舞台ならではの設定とあわせて見事だった。
カテコでのキャスト紹介での決め顔のひょうきんさに人間味溢れたキャラクターをみた。

風間俊介 (又七)
生田斗真もそうだが、ジャニーズで俳優を専門に演っている彼は、とても上手いなぁと唸らされた。
恒例の花道での”客いじり“のアドリブシーンは、瞬発力がなければとても出来はしまい。
大千穐楽では「誰を観にきた?」との問いかけに答えた観客は「風間ちゃん♪」と〜
最後の最後に自分にきた場面に、いささかテレながらも、場を笑いに包み和ませるエンターテイメントに感服した。

六角精児 (太平)
彼もやはり“舞台の人”である。
いわゆる“ボケ”役をアドリブを絡ませながらの、風間(又七) との丁々発止のやりとりには、これまた唸らされた。
今「貧乏キャラ」を演らせたら、恐らく彼の右に出るものはいまい。もちろんこれは褒め言葉である。

佐藤アツヒロ (山名竹善)
原作には登場しない役柄だ。そのあたりの是非を観てみたが、舞台の設定としては、物語を、善悪を、わかりやすくする意味合いがあったのだろう。
私にとって彼は、光GENJIでのおとなしめイケメンキャラのイメージを残したままであったが、彼も舞台を中心に活動を続いてきたという。今月末で50歳になるとは何とも驚きだ。
大千穐楽のスタオベの際、彼に向かって最前列の女性ファンが声にならない声を漏らしながら、熱心に手を振ってアピールしていたが、それが会場内でも否が応でも目についた。その是非はともかく、あぁ長く推し活をしていて恐らく今、彼女は最高の瞬間を迎えているんだなぁと思い、見つめていた。
そしてやはり、ジャニーズパワー恐るべし…だと体感した次第だ。

上町台地にたなびくゆいぽんの幟

そのスタオベのキャスト紹介の際、小林由依は他の出演者は深く敬礼をするのに対して、やはり、お姫様の衣装と設定であろう軽くお辞儀をしながら柔らかく膝を曲げて拍手に応えるのだった。その様が、まさにおしとやかで、しなやかな「姫様」で、芝居での雪姫の凛々しい姿との落差に驚くことになる。
客席の四方に、悠然と目を配りながらも、その瞳は限りなく輝いていた。彼女自身も得も言われぬ手応えや達成感があったのだろうと推測する。

約一ヶ月に及ぶ全27公演を駆け抜けた小林由依と共演者、関係者にあらためて拍手を贈りたい。

ただ、運営(劇場)側に一つだけ苦言を。
大千穐楽FC先行で二階席左側だったのだが、花道が全く見えず、これでS席扱いとはこれ如何に?と思った。明治座ならA席扱いだ。
一般購入の方が一階の良席だったのは誠に不可思議…
廻り舞台やせり上がりの様子がよくわかったのは良かったのだが、やはりこの業界内での慣習や優先順位があるのだろうが、何やら釈然としなかった。


昨年12月に開かれたBuddies感謝祭が6thシングル『Start over!』の特典映像として公開された。
そのセトリの一曲に『僕のジレンマ』がある。
渡邉理佐卒業後、披露する機会はもうないだろうな…と思い込んでいたのだが、現地でイントロが流れ、それを観た時、いささか驚いたのを覚えている。
そして、それはどう見ても小林由依センターのポジション且つ歌割りであった。
しかし、後日あれは確かSHOWROOMの場だったか、小林本人は「私はセンターではない」とあっさり否定した。
その発言の意図が掴みかねていたが、渡邉理佐への想いからか、全員曲にセンターはないと言う認識なのか、或いはポジションにこだわるのは全くのナンセンスだと言いたいのか〜その辺りは不明で、この辺は全くの想像でしかない。
昨今、「小林由依センター待望論」が少なからずある中で、そのセンターというポジションにある意味翻弄されてきた彼女自身には思うところがあるのだろう。

この夏は例年になく、特に暑い夏だ。
そして小林にとっては、別の意味での熱い夏となったに違いない。
欅時代を含め、多くを語らない彼女は、その姿勢で評価されてきたメンバーだ。
一般社会の「欅坂からの櫻坂」との現状の認識の希薄さは、これからも彼女たちにつきまとう課題だろう。
そんな課題への克服に向けた一つの大きな形を、今回、小林由依は高らかに示した。
彼女の、後輩や将来に続く未だ見ぬ人材に向けての意識はとても気高いものがある。
これまでも、今も、そしてこれからもその影響力は揺るがないものなのだろう。

北村由海さんX(旧Twitter)ポストより

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