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『空耳の丘』 遊佐未森

 【私の音楽履歴書】   # 29  遊佐未森

もう何十年〜そう、かなり前のことだ。
ある日曜の早朝だった。私は所用があり目的地へ車で向かっていた。
何気なく聴いていたカーラジオの番組では、発売されたばかりの、ある女性歌手のアルバムを特集していた。その時間帯は教会音楽を中心に流していた番組もあったと記憶するが、今となっては定かではない。
その歌手の名を男性パーソナリティは「ユサ・ミモリ」と呼んでいた。
流れていた彼女の歌声を聴いて、かなりの衝撃を受けた。何とも新鮮で不思議な声の歌い手がいるものだ…と。

後で調べてみると彼女の名前は「遊佐未森」そして紹介されていたのは彼女の二枚目のアルバム『空耳の丘』だった。
早速CDを購入し聴き込んでいった。

(1988年10月21日の発売だから、今からもう35年前のこととなる)



『空耳の丘』



空耳の丘

オープニング曲。プレリュードといったところか…

⚫窓を開けた時

そのラジオ番組で聴いた中で、特にインパクトがあった楽曲。

⚫風の吹く丘

オープニングからのこの三曲の流れが、特に素晴らしかった。

⚫ 地図をください

アーノルド・シュワルツェネッガー出演の日清カップヌードルのCM曲となり、話題にもなった2ndシングル曲。

⚫ひまわり

まさに今、ウクライナ情勢〜そしてソ連映画『誓いの休暇』を連想させる楽曲。ひまわりというタイトルも確信犯的でもある。

⚫夢のひと

この楽曲だけは、少し色合いが違うなぁ…と思ってクレジットをみたら、作詞作曲が太田裕美となっていた。『木綿のハンカチーフ』などでおなじみの歌手である。
こんなソングライティングまでするんだ〜と、当時は少し驚いた記憶があった。
後で知ることになるのだが、デビューアルバムの『瞳水晶』に収められている『花ざんげ』も太田の提供曲だった。
ナベプロ主宰スクールメイツ出身の太田は同期のキャンディーズとは違った売り出し方で人気を集めていたが、遊佐未森とは独特の歌声を始め、共通点があるように思えた。

ruri iro no omoi wa mirai eigou
瑠璃色の想いは未来永劫…


この『空耳の丘』は次の二作品『ハルモニオデオン』『HOPE』とあわせて“空耳三部作”と呼ばれている。
プロデューサー、参加ミュージシャンがほぼ同じで、CDのパッケージもデジパック仕様で共通点があった。
共同プロデューサーとして名を連ねる元FILMの外間隆史が作曲者としても作品を提供してサウンドづくりの主軸となっている。
もう一人のプロデューサー福岡知彦(智彦)は太田裕美の夫でもあり、その関係から太田が楽曲提供をしていたと思われる。

ドラム: 青山純
山下達郎のバックバンドのドラマーとして名を馳せる。そのドラムプレイは伝説となっている。

ベース: 渡辺等
元SHI-SHONEN、Real Fish

⚫ Lovely Singin' Circuit   SHI-SHONEN (85年)


ベース: 沖山優司
元ジューシー・フルーツのベーシスト。

ベース: 中原信雄
FILMからポータブル・ロック、ヤプーズに参加。

等々日本における初期のテクノミュージックを牽引してきたメンバーたちが一連のアルバム作品をサポートしている。


補足というわけでもないが、関連として、小川美潮の『デンキ』(アルバム『4to3』収録/91年)を紹介しておきたい。

⚫ デンキ


小川美潮が唄う青山純のドラムが特徴的なこの楽曲は、特に私のお気に入りの一曲である。
小川がかつて所属していたグループ「チャクラ」のプロデューサーが福岡知彦であった。そこにも何かしらの縁を感じる。
当時、福岡は渡辺音楽出版所属で、チャクラはナベプロ所属であった。その関連だろう、チャクラはデビュー曲『福の種』で、「8時ダョ!全員集合」に歌のゲストとして出演していたと記憶している。

今は故人となっているドラマー青山純の追悼番組でも、この『デンキ』のドラムプレイが詳しくふれられていた。


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