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駅のホームで電車を待つ。人々で混み合う車内は、静かだ。

乗り換えの駅で降りる。集団になってホームの階段を下っていく。みんな駆け足になる。

電車が地下に潜る。車内が混み合ってくる。私は本の世界へ逃避する。

電車が目的地に到着する。ゾロゾロと列をなして階段を登る。おしなべて同じような速度で、回廊を歩く。

地下街に出る。喫茶店や薬局を横目に、地上に出る。

古いマンションの横にそびえる、高級マンションが人々を見下ろしている。

近場の仕事先へと急ぎ足で散開していく人々を目で追いながら、ゆっくりと歩く。

弁当屋の厨房が見える。昼の支度をしているようだ。

ゴミ収集車が通り過ぎる。

職場のビルが見えてきた。その向こうに高層ビルがそびえている。そしてその向こうには快晴の空と陽射しがある。

かつては微笑ましく思えた、こんな平凡で平和な朝が、いまでは書割に見える。

まさにそれは、私たちに対して、平凡で平和なように見えているだけだ。

その書割の向こう側に、現実がある。

だから私は空を睨みつける。眩しいから、だけではなく、抵抗してやるぞ、という強い意思を持って。






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