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再生医療の認知を広げ、共感者を集めたい。由風BIOメディカルが株式投資型クラウドファンディングを選択した理由【起業家のホンネ #07】

沖縄県を拠点に再生医療事業に取り組むバイオベンチャーの由風BIOメディカル。同社は2022年10~11月に株式投資型クラウドファンディング(以下、株式型CF)「イークラウド」での資金調達を実施し、210名の投資家から3,800万円を超える資金調達に成功しました。

今回の由風BIOメディカル代表取締役社長・CTOの中濵数理(かずみち)氏へのインタビューでは、地域発×技術系スタートアップとして株式型CFに挑戦した背景や、株式型CFを経て得られた嬉しい成果を伺うことができました。

▼由風BIOメディカルとは?
九州・沖縄地方最大級※の細胞培養加工施設を活かし、再生医療関連の製造受託・開発製造支援事業を展開する。また独自技術で迅速・低コストな高感度診断薬を開発し、患者の負担軽減や医療コストの低減を目指している。日立グループや大手医療メーカーと連携しているほか、バイオ・医療領域に注力する沖縄県など行政とも連携し、地域産業の活性化に挑んでいる。
※由風BIOメディカル調べ

再生医療の重要性を多くの人に知ってもらい、共感してくれる人を集めたい

――株式型CFを実施される以前の事業状況について教えてください。

由風BIOメディカルは現在、グローバル企業とともに体外医薬品の研究開発事業と、再生医療の受託事業という2つの事業を行っています。

資金調達については、創業間もない2021年1月、シードラウンドの位置付けで、第三者割当で調達に成功しています。これは主に体外医薬品の研究開発を目的としたものでした。

2022年8月からの1年間は、主に再生医療関連の事業を拡大する目的で、プレシリーズAラウンドとして1億円を超える調達に成功しています。イークラウドの株式型CFは、プレAのスタート期間に利用しました。

――資金調達に向けての課題感はありましたか?

由風BIOメディカルとして初となった2021年1月の調達は、主な目的が体外医薬品の研究開発でした。体外医薬品は数字的な価値も示しやすく、大手との取り組みもあったので比較的、資金調達がしやすい状況でした。

一方、2022年8月からは再生医療事業が主な目的でした。ただ、再生医療というと「エビデンスが十分じゃないのではないか」とか、「実用化されていないのではないか」とか……。漠然と「海の物とも山の物ともつかぬ」といったイメージを持つ金融機関や投資家が多い印象でした。

再生医療は、実際には実用化されていますし、患者さんに喜ばれる結果を出して大きく成功している企業もあります。しかし、これをどう説明するかは、私達のみならず再生医療産業に関わる企業にとって非常に重要で、難しい部分なのです。

株式型CFの成功=この事業に可能性を感じる人が多くいるという裏付けになる

――株式型CFに挑戦しようと考えた理由を教えてください。

このように再生医療事業に関する調達に課題を感じる中で、そもそもの「再生医療」の認知度や、技術に対する信頼度を底上げしたいという思いを持ちました。その手段として、株式型CFの実施を決意しました。

また株式型CFの成功は、多くの人がこの再生医療事業に可能性を感じてくれている、共感・応援してくれているという裏付けにもなると思ったのです。その事実を弾みにして、その後のプレAを成功させられれば、という思いもありました。

さらに、株式型CFを選んだ理由としては、他の調達手段に比べてその後の事業の展開のしやすさがあると思ったからです。特に、私たちは1つの技術に特化した「シーズプッシュ型」の事業よりは、その過程で需要が見込めるような「プル型」の事業展開をしていこうと創業当初から考えていました。

私たちのようなバイオベンチャーはシーズプッシュ型のほうが一般的ですが、世の中のニーズに合わせて事業を展開する動き方の方が、現在の再生医療産業の中で事業展開していく上で重要だと考えています。

株式型CFであれば、会社の世界観やビジョンに共感してくれる人たちが集まるといった性質があるため、実際の細かな事業の展開についてはある程度柔軟に進めさせていただけるのではないかと思いました。

――株式型CFで調達した資金でどんなことを実現しましたか?

株式型CFの資金で実現できたことは、それもまた「信頼」をつくる部分でした。具体的には、日立グローバルライフソリューションズと日立製作所との再生医療の協創事業です。

この取り組みについては、沖縄県内のメディアをはじめ、NHKなど大手メディアでも取り上げていただきました。日立グループの中でも好評をいただき、「今後も由風BIOメディカルと連携を続けていく」といったことを表明してくださっています。

株式型CFの成功と、共創事業をやり切れたことによって、プレA全体の成功にもいい形でつなげることができました。

株式型CFの資金を大手企業との取り組みに活用することで、私たちの事業の評価を高め、信頼づくりを実現できたことがポイントだったと考えています。CFで出資してくれた投資家さんたちのおかげだなと思っています。

――プレAの成功を、地方発スタートアップとしてはどう捉えていますか?

都市部の企業と地方の企業では、資金調達の難易度や投資家の見方が異なると考えています。

東京など都市部にはミートアップやピッチコンテストなど多様な機会があり、さまざまな経験を積むことができます。都市部の企業と比べると、地方の企業は洗練されていないと見られがちです。その点で、地方企業は難しい立場にあると感じます。

さらに沖縄は地域的な特性などから、銀行や投資家からもリスクが比較的高いと思われがちです。私たちも、事業の概要を説明する際に「沖縄で本当にそれができるの?」とよく聞かれます。

だからこそ、資金調達に当たっては、さまざまな選択肢を考慮しながら最適な道を選ぶ柔軟性と適応力が重要と考えています。株式型CFを選択し、調達成功、大手との協業、メディア・全国の知人から関心を得られたことは、沖縄に拠点を置く由風BIOメディカルにとって大きなことだと考えています。

株式型CF実施後、従業員は1人→9人に成長!求人への問い合わせが増える嬉しい想定外も

――株式型CFのにあたり、イークラウドを選んでいただいた理由を教えてください。

別のプラットフォームにも話を聞いていましたが、イークラウドから丁寧に説明いただいたり過去の案件を見たりして、1社1社に時間をかけて向き合ってくれる印象を受けたからです。社内で協議して、イークラウドに決めました。

CFの準備期間は、私が研究や経営に忙しく、大変さもありました。そして事業が技術系ということもあり、イークラウドからもらう質問への説明が大変だったとも感じました。

ですが、顔も知らない大勢の人にこの事業の魅力を理解してもらわないといけないと考えた時に、イークラウドのサポートも借りながら改めて自分たちの事業に向き合えたことは良い経験になりました。

募集中は、長らく連絡を取っていなかった地元の友人や恩師が、募集に関する私のFacebookの投稿を見て、応援の連絡をくれたり別のネットワークに広めてくれたりしたことが印象に残っています。知らないところで見てもらえているものだなと興味深かったですし、心強いとも感じました。

既に関わってくださっているエンジェル投資家や関係者の方も、申込金額が増えていく様子をリアルタイムで見ていてくれたようで、募集中はLINEが賑わって楽しい気持ちになりました。

――株式型CF終了後の感想を教えてください。

お話したとおり、株式型CFを利用した一番の目的は、私たちの取り組みや再生医療業界をより多くの人に知ってもらうことでした。その目的が十分果たされてよかったと、ほっとしました。

また、想定外の嬉しい影響もありました。株式型CFの募集以降、求人への応募が来るようになりました。株式型CF募集当初は従業員が1人の状態でしたが、現在は9人の従業員を抱えるまで組織が急成長しています。

沖縄で理系人材を獲得するのは大変なことです。しかし募集ページを見て応募してきてくれた方もいましたし、採用イベントで募集の際に制作いただいた事業説明動画を流すことで理解を深めてもらいやすくなっています。

加えて、イークラウドを通して私たちの事業や調達の意志が伝わったことで、新たな出資に関する問い合わせも増え、実際に新たな出資を得たり、出資につながるようなご紹介をたくさんいただいたりしました。

こうした露出は重要なことなんだな、と改めて感じました。

引き続き再生医療への関心を高めたく、次回のシリーズAのタイミングでも、株式型CFの活用を視野に入れています。シリーズAでは、リードとなるVC(ベンチャーキャピタル)を見つけ、さらに大きなチャレンジをしていきたいと思っています。

――募集終了後、株式型CFの投資家向けにオンラインで事業進捗の説明会を開かれました。参加した方の満足度も高かったようですが、どんな経緯で開催したのですか?

実は、私自身も昔、頼まれて知人の事業に投資したことがありました。でも投資後は連絡があまり来なくなってしまい、最後は音信不通になりました。そういう経営って、私は嫌だなという思いがありました。

投資家ときちんと情報共有をしたく、双方的なコミュニケーションができるオンラインで開催してみました。率直に経営者の視点で説明して、投資家の視点で質問していただく、その気持に答えていくのは、お金を使わせていただくうえでミッションなんじゃないかなと思っています。

今後もまた実施したいなと考えています。

株式型CFは事業への共感をきっかけに多くの人の期待と信頼を預かる資金調達手段

――株式型CFを検討したい起業家に伝えたいことはありますか?

株式型CFは、社会性や話題性のある事業がマッチしやすいのかなと感じました。また、会社のミッションや事業に共感が得られれば、しっかり株主は集まってくると思います。

私から株式型CFについて起業家の方へお伝えしたいことは2つあります。

1つは、株式型CFは株主が増えて大変になるからやめたほうが良いというような話をたまに耳にすることがありますが、僕自身はそう感じていません。スタートアップの経営者として、資金調達の選択肢が豊富にあることはとても良いことですので、一部の見解を真に受けずにまずは話を聞いてみて自分に合うかどうか真剣に検討するのが良いのかなと思います。

もう1つは、私が言うのはおこがましいかもしれませんが、先にお話したように株式型CFは共感が得られれば資金が集まりやすいという性質があります。一方で多くの人の期待や信頼を預かっていることに変わりはありません。

たとえ株式型CFを成功させたとしても、引き続き事業を大きく成長させていくための努力、そしてその先の株主への還元という部分も、その他の資金調達手段と変わらずに大事にしていってほしいなと思いました。

――ありがとうございました!

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