見出し画像

『宇宙戦艦ヤマト2199 原画展』の、研ぎ澄まされた鉛筆の線

『宇宙戦艦ヤマト2199 原画展』が5月7日まで、西武池袋本店別館2階の西武ギャラリーで開催されています。「宇宙戦艦ヤマト2199」は、1974年放送の「宇宙戦艦ヤマト」を、2012年から2013年にかけて、イベント上映やTV放送という形態で、全26話で完全リメイクした作品です。
僕も「レイアウト協力」「デザイン協力」という仕事で、参加させていただいております。 

 会場には、この作品のために描かれたメカニック設定の原画、レイアウト修正原画、メカニックディティールアップ原画、立体模型などが、展示されています。展示のメインは、作品タイトルでもある宇宙戦艦・ヤマトをはじめとした、メカニックの設定画です。

 アニメの設定画は、作画をするひとや色をつけるひと、背景を描くひとやCGをつくるひとなど、いろいろなスタッフに配布される、アニメの絵の設計図です。それらは多くのひとへ、それがどういうかたちをしていて、どんなふうに描けばよいのかを正確に伝えるために、整理された、均質な線で描かれています。作業上、そういう線が必要だからという理由や、多くの人に配るためにコピー機で複製するからというのもあります。均質といっても、「ぬりえ」のようなペッタリした線ではなく、生命力も感じられるような線が望まれています。絵の仕事のなかでも、特殊な技術が必要とされている作業であるのかもしれません。 

 「宇宙戦艦ヤマト2199」のメカニックは、おもに3DCGで、存在感のある表現をされています。その設定画でも、正確な立体描写、密度のある描きこみを求められます。 「デザイン協力」という仕事では、メカニックの設定画も何点かお手伝いをしているのですが、「こちらの絵では、この部品が5mmで描かれているはずなのに、ちがう角度で描かれたこの絵で、こんなおおきさで描かれているのは、おかしい。描きなおし。」とか、OKが出るまで、何度もリテイクをいただいたものでした。いやもう何度となく。

 会場にはそれらの条件をクリアした凄腕の描き手たちによる、おそろしく研ぎ澄まされた設定画が、簡単に言えば「めちゃめちゃ上手い!」絵が、威風堂々と展示されています。

アニメ作品の、キャラクターではなく、メカニックの、設定画の、カラーじゃない、鉛筆やサインペンで紙に描かれた原画が、ここまで大々的に、そして大切に展示される機会は、なかなかないことです。アニメの「中」のことに興味があるかたに、是非、オススメしたい展覧会です。 

 →『「宇宙戦艦ヤマト2199 原画展』公式サイト 

■枝松聖(えだまつきお)■
1977年(昭和52年)生まれ。 
血液型A型。東京都出身。
多摩美術大学造形表現学部卒業。 
05年、「ふしぎ星の★ふたご姫」の
各話美術設定で、初めてアニメ
の制作に参加。「ブレイクブレ
イド」(10年)「宇宙戦艦ヤマト
2199」(12年)ほかアニメ、 
ゲームの設定デザインなどを担当、 
現在フリーランスで活動中。

ここから先は

198字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?