豚汁野郎Aチーム


どんな場所どんな相手だろうと、万難を排して豚汁を食べさせるAチームの活躍を描く、痛快アクションドラマ。
元は軍隊の食糧班だった豚汁野郎たち。つまみ食いの濡れ衣を着せられてお仕置き部屋にぶちこまれたが脱出し、潜伏しつつ真犯人を捜している。
その一方、得意料理の豚汁を誰かに食べさせたくて、注文に応じて各地で豚汁を振る舞う活動も続けている。真犯人が見つからなかった場合はこの活動が社会奉仕として認められて何とか許してもらえるんじゃないかとの下心もある。


第99話「掟破りの監獄コック」


刑の執行を間近に控えた死刑囚ジョン。地獄のような監獄だが、最後の食事では好きな献立を食べられるのが習わしで、ジョンはそれに豚汁を申請した。ところが、意地悪な看守たちの奸計により最後の献立が卵ボーロ2個に決定されてしまう。
悲嘆に暮れるジョンだが、風の噂で聞いていた豚汁野郎Aチームを思いだし、監獄内の情報屋を通じてAチームに豚汁を注文した。だが、この厳しく警備された監獄にAチームは来られるのだろうか……。



死刑当日、届けられた食事は卵ボーロが2個。
やはりAチームは来なかったのだ。落胆しながらボーロをボリボリ食べたジョンは、体育座りしてぼんやりと執行の時間を待った。
時間になり、看守が処刑室にジョンを連行する。執行人に囲まれ、大人しく電気椅子に座ったジョン。
ジョンが電気椅子に拘束されるその時、執行人の1人が自身とジョンに突然ガスマスクを被せるとガスを噴霧。2人以外は眠り込んでしまう。ガスマスクの執行人が処刑室のドアを開けると、なだれ込んでくる3人の男たち。
何事かと驚くジョンにガスマスクを脱ぎながら執行人が言う。
「やあ、ジョン。俺たち豚汁野郎Aチーム。君の注文を受けて参上仕った」

なんとAチームは囚人や看守、執行人として監獄に潜り込み、豚汁を食べさせる機会を窺っていたのだ。処刑室に運び込まれた鍋、食器、材料……。
絶望の底から一転、天にも昇るような気持ちでそれを見ていたジョンだが、致命的な失敗に気付く。
「コンロがない!」
Aチームは熱源となる機器や薪を持っていなかった。これでは豚汁が作れない。

「心配するな。そこをどいて見ていろ」
メカニック担当の大男コンニャクがジョンを押しのけて電気椅子を工具で弄り、なんとIHヒーターに改造してしまった。
Aチームは電気椅子に鍋を置き、手際よく豚汁を仕上げてジョンに差しだす。温かな豚汁を腹いっぱいに詰め込むと、ジョンは安堵してうとうとしてしまった。

「おい、起きらんか」
執行人の声にはっとして目が覚めた。既にAチームの姿はなく、ジョンは電気椅子に拘束されている。夢だったのか? いや、心地よく腹が重い。ボーロ2個ではこうはならない。
執行人たちが戸惑いながら何か話している。どうやら眠らされる前後の記憶がないらしく、何があったか把握できていない。とはいえ、しばし眠っていたこと以外に何も不審な点はなく、少し刑の執行が遅れるだけ。彼らは処罰を恐れ、今日の事は内密にするだろう。

腹に豚汁とAチームの活躍を秘めたまま、ジョンは死刑を執行された。
一度IHヒーターに改造したせいか、電気椅子が不調で非番のベテラン執行人を呼び出したりメーカーの技術者呼んだりして、なかなか大変だったらしい。




【緊急】村で青鬼が大暴れしている